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副業に関する「税金」について税理士が分かりやすく教えます【申告のやり方付き】

副業に関する「税金」について税理士が分かりやすく教えます【申告のやり方付き】

近頃、職場で副業・兼業が話題になったことがありませんか。マスコミ報道でも副業・兼業なる言葉をよく見かけるようなりました。「ベンチャー企業中心に副業・兼業を解禁するところが出てきた」などなどお耳に入っている方も多いかもしれません。

副業はどーれだ⁉

副業・兼業と一口にいっても、決まった定義があるわけではありません。でも、一般的な副業・兼業のイメージはあるはず。例えば、あなたに次のような収入があったとき、それを副業・兼業というのでしょうか?(※以下、この記事では副業・兼業をまとめて「副業」といいます。)

A.空いている時間で原稿を執筆して、原稿料をもらった

B.休みの日に競馬で馬券を当てた

C.株をやっている

D.アパートを持っている。でも、管理は管理会社に任せっぱなし


E.宝くじがあたった

F.勤務時間外にアルバイトをしている

BとEは“趣味”ですよね。競馬、宝くじで収入があったとしても、それを副業という人はいないはず。C、Dは微妙です。株式投資、不動産投資を副業とみるか。どちらも広い意味では副業でしょう。特に不動産投資は“業”としての要素が強い……。でも、どちらも、収入は人からではなく、資産から生ずるものですので、副業から除きます。



ということで、副業はAとF(あくまで、この記事の中での定義だとご理解ください)AとFの違いは、請負と給与。誰かに雇われているかいないか、の違いです。

今、大きな議論となっている働き方改革。その中でも副業は、自らの能力を活かして会社以外でも活躍すること(副業A)や、いわゆるダブルワーク(副業F)がイメージされているようですね。

【コラム】競馬だって副業⁉

馬券を買う多くの人は、競馬を趣味として楽しんでいる(はず)。でも、中にはこんな人も。──馬券購入ソフトなるものを駆使して、研究に研究を重ね、馬券を購入。1レースごとの勝敗など気にせず、トータルで儲ければいいやとの精神で臨み、実際に多額の利益を上げている。偶然性を排するため、馬券を買うレースは年間のほぼ全レースに及ぶ。友人曰く「彼? 彼の馬券の買い方はもう趣味なんてものを完全に超越してるね」──こんな人にとって、競馬は〝業〟みたいなもの。これは、もう立派な副業? 税金の世界でも、営利を目的として継続的に馬券を購入している場合は“業”として扱われることになっています。

会社員は、原則として“副業OK”?

さて、あなたの会社で副業は解禁されているでしょうか。それとも禁止? んっ? よく分からない? それはいけません。さっそく就業規則を確認しましょう。

本来、会社員は決められた就業時間を勤務すればOK。それ以外で何をしようがあなたの勝手です。会社から干渉されるものではありません。ということは副業はOKなのか? いや、でも会社からしてみれば、副業によって本業である会社の勤務がおろそかにされてはたまりません。

会社が就業規則などで副業を禁止することはあり得ます。もちろんこれは法律違反ではないんですね。でも、例外なく全面的に禁止できるかといえばそうはいきません。繰り返しになりますが、本来は就業時間外の過ごし方は自由ですから。したがって、本業に支障をきたさない程度の副業ならば(就業規則で禁止していても)事実上、会社は認めざるを得ないのです。



お勤め先の就業規則を確認しましたか? さすがに現状では、副業解禁の会社はかなりの少数派なので、おそらくあなたの会社でも副業禁止が謳われているはず。でも、国は今後、副業解禁を後押しする方針です。厚生労働省が策定した新しい「モデル就業規則」では、事前届け出を条件に、原則として副業を認めるものになっています。



副業をめぐる税金の申告。キーワードは20万円。

さて、あなたは副業をめでたく始められて収入を得たとします。もちろん、今の会社の勤務をしっかりとこなしつつの副業です。それでひとまず問題なし。



ただ、ここから気をつけなくてはならないのは税金のこと。確定申告をどうするかです。しかし、実は必ず申告しなければならないかといえば、然にあらず。金額が少ないときは、税務署に確定申告をしなくていい場合があるんですね。判定のキーワードとなる金額は、20万円です。

※以下、あなたの収入は、今の会社からの給与とそれぞれに挙げる副業収入のみという前提です。

1 副業=請負のとき(副業Aパターン)

副業Aのパターンです。あなたは(1箇所で)会社勤めをしながら、原稿執筆などの特技で仕事を請け負い、収入を得ています。この場合は、副業の所得が年間20万円以下なら確定申告をする必要はありません。

【コラム】所得と収入のちがい

確定申告しなくていいパターンで、20万円以下でなければならないのは、所得です。所得は収入とは違います。たとえば100の収入があったけど、そのために経費が20かかった。そのときの差し引き80が所得なんですね。ですから、仮に原稿料収入が100万円あっても、取材費に80万円かかったのなら、申告は不要です。

2 副業=給与のとき(副業Fパターン)

副業Fは、2箇所から給与をもらっているパターンですね。その場合は、副業している会社からもらっている給与収入が、年間20万円以下なら確定申告をする必要はありません。※こちらの基準は、収入です。ご注意を。

【コラム】申告しなくていい、すなわちそれは非課税?

副業で申告しなくていいケースを2つ紹介しました。「うむ。なるほど。申告しなくていい場合があるんだ。つまり非課税ということだな」とつい考えてしまうところですが……。じつは

こんな理由で「申告しなくていい」ことになっているだけなんですね。ですから非課税というわけではありません。例えば、あなたが医療費控除のために確定申告をするときは、本業の所得に加えて「申告しなくていい」副業の所得も一緒に申告しなければならないのです。なぜかって? 副業収入は非課税じゃないから。「ほかに何もなければ申告しなくていいさ。でも、確定申告するんだろ? だったら併せて申告してもらわなきゃ。非課税じゃないんだから」ということですね。申告しなくていい≠非課税にご注意あれ。

このような20万円をめぐる制度は、所得税特有のものです。住民税(=市町村民税)にこのような制度はありません。上記の基準に該当して税務署へ申告しない場合でも、別途市役所へは住民税の申告が必要となりますのでご注意を。



申告はしなくていい。でも、あえて申告した方がいい場合がある

副業収入があっても、確定申告しなくていいケースがあることが分かりました。でも、それに当てはまる時でさえ、あえて確定申告した方がいい場合があるのです。なぜ、あえて申告を?キーワードは源泉徴収です。

収入には、税金が源泉徴収される収入とされない収入があります。もし、あなたの副業での収入が源泉徴収されるものだとしたら……。あなたの手取りからはすでに税金が差し引かれていることになります。この税金が源泉所得税。源泉所得税は、いわば税金の前払いなんですね。



確定申告では、本業の所得と副業の所得、その合計から所得控除を差し引き、税率を掛けて年間の税金(所得税)を計算します。



{(本業の所得+副業の所得)-所得控除)}×税率=年間の税金(所得税)

で、最後にその税金とすでに差し引かれている源泉所得税を比べるんですね。結果、源泉所得税の方が多い場合は、税金の納め過ぎ。申告することによって、差額が税務署から戻ってくる可能性がある。これが、申告しなくてもいいけれど、あえて申告した方がいいケースです。

【コラム】必ず源泉徴収される副業F。場合による副業A

副業F(他の会社への勤務でしたよね)では、副業収入から必ず源泉徴収されます。収入がどんな少額であってもです。一方、副業Aの場合はその収入がどんなものかによって、源泉徴収されたり、されなかったり。こういう収入からは源泉徴収するんだよ、ということが事細かに決まっているんですね。該当すれば源泉徴収されるし、当てはまらなければされない。例に挙げた原稿料は該当するので、源泉徴収されます。

申告しなくちゃいけないケース

副業が上記で紹介した20万円の基準に当てはまらなければ、副業収入は確定申告しなければなりません。あなたの税金の計算期間は暦年。したがって、申告するのは1月~12月分のもの。それを翌年の3月15日までに税務署に確定申告書を提出しなければなりません。

【コラム】副業では青色申告はできない⁉

確定申告といえば、青色申告を思い浮かべる方も多いでしょう。「なにやら税金で有利なことがありそうだ。ひとつ、青色申告をしてみよう」副業をしているあなたがこう考えたとしても……、じつはあなたが青色申告できる可能性は、とっても低いのです。
なぜなら、青色申告をすることができる人は限定されているんですね。基準は、収入の種類。3つの収入を限定して、その中でどれかひとつでも該当した人に限って青色申告が認められているのです。
副業A、副業Fはどちらもこれらの収入に当たらず、青色申告はしたくてもできないというわけ。
この3つの収入とは、個人事業主の収入、不動産賃貸収入、山林伐採の収入です。もしあなたにアパート賃貸収入があれば、税務署に申請することにより、青色申告ができます。

申告のやり方

確定申告では、本業の所得と副業の所得、その合計から所得控除を差し引き、税率を掛けて年間の税金を計算するんでしたね。つまり、それぞれの所得金額を出すのが第一歩。その方法が、副業Aと副業Fの場合では少し違います。詳しく見ていきましょう。

1 副業=請負のとき(副業Aパターン)

副業Aは、給与ではありません。請負でしたね。いわゆる個人事業? いやいや、勤めがあってのことなので、ふつうは個人事業主といえるほどの設備もなければ収入もありません。いわば個人事業の小型版です。こういった所得は、税金の世界では雑所得なるものに分類されます。



雑所得は、収入から必要経費を差し引いて計算します。これ、実は個人事業主と同じ計算方法なんですね。そう聞くと、「なにやら収支内訳書みたいなもんを作らなければならないの? いろいろと面倒くさそうだね」という懸念も出てきますが……。

雑所得の場合は、確定申告書の上記の表を埋めるのみです。こんなあっさりしてていいのか!? いいんです。所得の種類には「雑」と記入します。種目・所得の生ずる場所欄は、特に書き方が決まっているわけではありません。原稿料であれば「原稿料・〇〇出版社」のような書き方でOK。



収入金額と必要経費の欄、ここにはあなたが集計した収入金額と同じように、集計した必要経費をそれぞれ記入します。内訳は? 必要ありません。添付書類は? これまた必要なし。もちろん、内訳や領収書などは保管しておく必要はあります。税務署から見せてね、と言われたら見せなければならない。でも、申告のときは集計した金額を記載するだけでいいんですね。



2 副業=給与のとき(副業Fパターン)

一方、副業Fは給与で、あなたの本業も給与。ということは、確定申告では2か所から貰った給与を合計するだけでOKなんですね。合計したものから給与所得者だけに認められている給与所得控除なるものを差し引けば、それが所得金額になる。確定申告書では、次の箇所に記入します。




ア. の収入金額は、それぞれからもらっている源泉徴収票の金額を合計します。問題はその下の①欄。給与所得の金額欄ですね。ここには、ア. の金額から給与所得控除なるものを差し引いた金額を書けばいいわけです。ですが、申告書のどこをどう見ても、給与所得控除なるものの計算方法が出ていない。どうしていいか分らない。分らなければ、①欄は書けませんよね。



どう書けば良いのかの答えは税務署や国税庁のWebページから確認できる「確定申告の手引書」(所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き)にあります。給与所得控除は手引書を見て計算し、それを給与収入の合計から控除し、出てきた金額を①欄に書くというわけ。

副業Aの場合は、添付書類は不要でした。でも、副業Fではそれぞれの会社からもらった源泉徴収票を税務署に提出することになっています。



申告するとどうなるか

確定申告では、税金が戻ってくるケースと逆に税金を追加で納付しなければならないケースがあります。

まずは、税金が戻ってくるケース。源泉徴収されていた分が還付される場合ですね。還付金は、申告書で指定したあなたの口座に振り込まれます。期間は申告してから1カ月程度が目安です。



一方、申告によって税金の追加納付となるケース。この場合は納付書に自ら金額を記入して、銀行などで納付するか、または、銀行口座を届け出れば自動振替で納付することも可能です。



申告するとどうなるか ~住民税編~

税金、税金と、今までお話ししてきた税金の種類は、所得税。これは税務署に申告する税金です。でも、税金にはまだほかにもありますよね。そう、住民税です(=市県民税)。税務署に確定申告をすると、そのデータが市町村に出回ることになっています。市町村ではそのデータを基に住民税を計算して、会社へ連絡。会社は連絡された住民税をあなたの給与から天引きするというわけです。

ということは、あなたの申告内容は市町村を通じて、会社にも筒抜けです。副業をしていたら、いくら所得があったのかも分かってしまう。副業していることは伝えているけどいくら稼いだかは会社に知られたくない。こんなこともあるでしょう。



そんなときは、さきほどの雑所得の記入をした表の下に注目してください。そこには「〇住民税に関する事項」とあって、よく見ると次の欄があります。

ここで「自分で納付」に丸をすれば、雑所得に対応する住民税は、直接あなたに通知されます。会社を経由しないので、会社へは知られなくて済むというわけ。



申告しないとこんなことに!

申告しなくちゃいけないのに、申告しない場合。バレなきゃいいなんて邪(よこしま)な考えはダメですよ。それに、バレます。あなたに支払いをする会社は、あなたに「これこれこういう支払いをした」旨の報告(支払調書といいます)を税務署にしていることが多いのです。支払調書は確定申告より前、1月末までにはすでに提出されています。

支払調書の提出以外にも、支払いをする会社に税務署の調査が入り、そこからあなたへの支払いが分かることだってあります。いずれにしても、申告をしなければならないときは、しっかり期日までに申告をする。大・大鉄則です。

【コラム】所得税の追徴は、過去5年⁉

所得税の時効は5年。ということは、仮に申告義務があるのにしていない場合、過去5年にさかのぼって追徴されることがあります。もちろん、それに伴うペナルティも。
まず、申告していないので無申告加算税。さらに、本来の納付期限までに税金を納付していないので延滞税(利息のようなもの)。悪質だと判断されれば重加算税なる重い税金を負担しなければならないことも。副業したら確定申告。お忘れなく!





副業のメリットは、まず収入アップ。それ以外でも、副業で得た経験、知識を本業に活かせることもありますよね。そのメリットはあなただけに限りません。会社にとってもメリットですし、大きくとらえれば社会全体にも好影響を及ぼすはずです。



でも、もちろん副業にはメリットだけではなく、長時間働くことによる健康への影響は気になるところ。その兼ね合いの中で、どう副業をとらえていくべきか。働くあなたと会社に対する宿題ですね。

執筆者のプロフィール
高橋浩之
高橋浩之

税理士。ややこしい税金のことを分かりやすく伝えるために奮闘中。事務所は東京都町田市。