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企業選び!配当性向は低い方が良い!?

企業選び!配当性向は低い方が良い!?

株式投資を行っている方であれば、もちろん「配当」という言葉はご存知ですよね。
ある程度の銘柄を保有されている方であれば、半期に一度程度のペースでもらえる配当を楽しみにして投資しているという方も多いはずです。

また、あまり頻繁な売り買いを行わずに、一旦保有した株式を長期的に持ち続けることを前提として投資している方であれば、配当が投資の魅力であるということもあるでしょう。

しかしながら、配当の意味についてしっかりと理解していますか。
定期預金やソブリン債の投資信託の商品と同様に考えていて、配当利回りが高ければ高いほど運用先として良いと思っていませんか。

たしかに配当性向が高い株というのは魅力の一つではあるのですが、ただ高ければ良いというものではありません。
配当性向が低い方が、投資先として魅力があるということもあるのです。

株式運用における配当の意味をしっかりと理解しておかないと、ご自身が望んでいたような企業への投資が行えていないかもしれません。

配当性向という指標はご存知ですか?

企業毎の比較分析を行うための配当に関する意味や、指標についてご説明します。
たしかに配当は株式運用に影響を与える重要な要素です。
そのため、最初に配当に対する考え方や、企業毎の配当の大きさを比較や分析を行うための指標と計算方法についてご説明します。

配当を分析する指標としては、「配当利回り」と「配当性向」というものがあります。配当利回りとは、株主が投資している金額に対して、どれだけの配当を受け取れることができるのかを示す指標です。
具体的には、「配当利回り(%)=配当受取額÷投資総額×100」 で計算できます。
定期預金の金利などと近い意味合いの分析となる指標となっています。

次に配当性向とは、会社が稼いだ利益のうち、株主に対して配当として還元する割合を示す指標となります。
純利益のうち、配当として処分するのか、内部留保(事業に投資)に回しているのかを表す指標となります。

具体的な計算式は、「配当性向(%)=配当支払額÷税引き後当期純利益×100」 となります。
つまり、配当性向が100%ということになれば、企業は稼いだ利益を全て配当として株主に還元しており、企業内に利益を残さないということを意味します。
反対に配当性向が0%であれば、企業は稼いだ利益を全く配当として還元せず、すべて企業内に留保しているということを意味します。

これらの指標では、企業の配当額を増加した方が配当利回り、配当性向ともに高くなり、投資家にとっては望ましく感じてしまいます。

配当はただ高ければ良いわけではない

銀行の定期預金は基本的に元本は増減しませんので、預金者が得ることのできる利益は、金利のみとなります。
一方、株式投資において投資家が受け取ることのできる利益には、インカムゲインとキャピタルゲインの2種類があります。
インカムゲインとは「利息収入」のことで、株式運用においては配当のことを意味します。

一方で、キャピタルゲインとは売買差益のことを表しています。
売買差益とは、その株式の売却した時に売値から取得した時の費用(購入金額や諸費用)を差し引いたものです。

つまり株式運用においては、配当収入と売買時の差益の2つから総合的に収益性を考慮する必要があります。
いくら配当が高くても売買差益が少ない、もしくは赤字の場合は収益性が低くなることがあります。
逆に配当による収入は少なくても、最終的な売買差益が大きければ収益性が高くなるというケースもあるのです。

株式運用においては、配当の大きさだけを見れば良いわけではなく、株価の増減を含めて総合的に判断する必要があります。
そのためには、配当が株価の変動にどのように影響を及ぼすのかをしっかりと理解しておく必要があります。 

配当性向の高い企業ってどんな企業

しかしながら、配当を重視して運用先を探している方から言えば、株価の動きは予測が難しいです。
そのため、「過去の実績や企業の予測が確認できる配当に着目するほうが失敗しにくいのではないか」という意見もあるでしょう。
また、「配当が増加した方が、株価も上昇するのではないか」という考えもあります(たしかに債券などはその他の条件が一定であれば、期中のCFが大きくなった方が価格は上昇します)。

一理ある考え方なのですが、配当に関してはもう少し複雑です。
配当性向からその企業の状況や将来性について見えてくることがあり、そういった要素が株価の変動に影響する可能性があります。
配当を重視するとしても、まずは企業にとって配当が意味するところを理解しましょう。

企業の配当に対する考え方を知る方法として、配当性向だけでなく、IR情報を活用することも有効です。
IR情報とは、投資家向けの情報公開などです。
企業のHPなどを見ると、IRに関する情報を掲示している企業もたくさんあります。

そのなかでも「配当政策」に関する考え方が開示されている場合は、こちらも含めて活用します。
配当性向からも読み取ることができるのですが、配当政策を見るとさらにわかりやすく、企業の配当に関する考え方が理解することができますので、合わせて確認するようにしましょう。

次に、配当性向の高い企業の特徴(なぜ高いのかなど)についてご説明します。配当性向の高い企業としては、主に以下の点が挙げられます。 

  • ①成熟産業(投資するべき成長分野が無い)
  • ②株価を維持したい
  • ③株主への(配当による)利益還元を重視

成熟産業は配当性向が高くなる?

成熟産業とは、提供するサービスが普及して市場自体の成長が鈍化している業界などを指します。

前提として、経営者の考え方や株主が企業に対して求めるものについて理解してもらいましょう。
特に上場している企業の経営者には、いくつか株主から求められる指標があり、その結果によって経営者としての成果を判断されます。
日本の株主はおとなしくて優しいですが、それでも経営者としての成果が悪ければ、代表者の交代を求められる可能性もあります。
そのため、経営者はこういった指標を改善させることを目標として経営を行うことになります。

どんな指標が重要となるかは企業毎の状況によって違いますので一概には言えませんが、いくつからの代表的なものを取り上げてみます。例えば、ROEという指標があります。
ROEとは株主資本利益率のことであり、企業の収益性を測る指標として活用されています。
具体的には「ROE=1株あたりの利益÷1株あたりの株主資本」で計算することができます。 つまり、株主がその企業に対して投資している資金をいかに効率的に活用して、利益を生んでいるのかを表す指標と言えます。
株主としても、自分達の資金をどれだけ上手に活用されているのかは重視する要素です。
そのため、このROEを経営者の力量を図る指標として考えている株主は数多くいますし、企業としてもROEの成長を経営目標に掲げている先は多く存在します。 

そして、このROEを改善していくための具体的な方法には2つあります。
計算式からわかるのですが、計算上の要素である1株あたりの利益を増加させるか、もしくは1株あたりの株主資本を減少させるかのどちらかとなります。
つまり、企業として利益を増加させる自信が無いにも関わらず、生まれた利益(純利益)を内部留保してしまうと、株主資本は増加してROEは低下してしまいます。
そのため、利益が増加しないのであれば、内部留保は増やさずに配当で株主に還元してしまった方が良いことになります。

具体例で考えてみましょう。
前提として、ROEが20%の企業(当期純利益20、株主資本100、発行済み株式総数100株)を例に考えてみましょう。この企業にとって、当期純利益20を、どう扱うかが配当性向の決定となります。
選択としては、株主への還元(配当)と自社内への留保があり、その割合をどうするかを企業として検討することになります。
企業として自社の市場環境や営業状況を勘案した結果、20を投資することで、来期以降の当期純利益が10年間毎年1増加すると考えられる案件があったとします。
企業がこの投資を実行すると、来期のROEがどうなるかを計算してみましょう。
当期純利益は1増加して21となり、株主資本はその分増加して121となります。
その結果ROEは17%(21÷121)となり、前期に比べて3%低下してしまいました。

反対に、この投資を行わずに、当期純利益20を全額株主への配当として使用する場合を考えてみます。
この場合、来期の当期純利益への変化は無く20、来期の株主資本も変わらず100(100‐20+20)となります。
その結果、ROEは20%(20÷100)で維持されることになります。

経営者としてはROEを高くすることが自身の成果を図る指標となっていた場合、当期純利益を留保せず、全額株主へ配当してしまった方が成績が良くなると期待されます。
つまり、その企業が成熟した業界の企業で有効な成長分野を持っていないのであれば、株主への配当性向が高くなる傾向があるのです。 

株価を維持するために配当性向を高くする?

先ほどの例とは別に、まれに配当性向が100%を超えて120%などの水準で配当を行っている企業もあります。
現実的にはこういった配当も可能なのですが、こういった企業に関しては注意が必要です。

企業の経営者としては、先ほどのROEを成長させるということより、もっと直接的に株主から求められることがあります。
それは、株価の維持と成長です。ROEなどは、株価を将来的に成長させていくための手段としての意味が強くなります。
株価は、株主がもとめる最終的な要望であると考えられます。

企業として、これまで毎年、30の配当を行っている企業を例として取り上げます。
この企業の前期の当期純利益が、100であった場合、配当性向は30%ということになります。
しかし、今期は利益が減少してしまい、当期純利益が20にまで減少してしまったとします。
この時、企業として配当の金額を減少させずに、現状維持したとすると配当性向は150%(30÷20×100)ということになります。

企業としては、稼いだ利益を超えて配当を行うと、既に企業内にあった資産を取り崩して配当を行うこととなります。
短期的に利益が回復する見込みがあれば構いませんが、そうでは無い場合、資産の取り崩しを長期的に続けていくことは困難でしょう。
その状況のなかで無理して配当額を下げないのは、株価を維持するためであると考えられます。
企業が配当を減少させると発表すると、収益に対して企業の弱気な見通しだとして配当目当ての投資家がネガティブな反応をするため、株価は下落する傾向があります。
そのため、企業は無理をしてでも株価を維持するために配当を下げることができず、配当性向が適正水準よりも高くなってしまうことがあるのです。

このため、低下した収益の回復見通しがたっていないにも関わらず、配当性向が100%を超える水準を維持している企業は要注意です。無理は続きませんので、将来的に、配当の減額に至り、株価が大幅に下落したり、もしくはその前の段階であっても、配当を維持することが困難であると投資家から評価されることで、株価が下落し始める可能性があります。

なお、配当性向が高い企業のうち、③で記載した「株主への(配当による)利益還元を重視」というのも要注意です。本来、投資に回すことで収益を成長させる余地があるにも関わらず、株主への配当を重視し過ぎていると、企業としての投資機会を失う可能性があります。
業界を独占しているような企業であれば影響はまだマシですが、同業他社や競合企業が存在し、成長投資を行っていれば、業界内でのシェアを奪われてしまうことにもなり得ます。
中長期の観点から成長機会があるのであれば、適切に投資を行う必要があります。
そうしなければ、市場の競争に負けてしまう可能性があります。
株主の反応を重視し過ぎてしまい、過度に配当に拘る企業にも注意が必要です。 

配当性向の低い企業ってどんな企業

前述のように配当性向の高い企業の逆の特徴をもつ場合が考えられますが、以下に配当性向の低い企業の特徴を挙げます。 

  • ①成長企業であり可能な限りの資金を投資に回したい 
  • ②配当する余力(現金)が無いなど、配当余力が無い

①の場合は、先ほどと逆の例となります。
先程使用しました具体例をもとにご説明いたします。
先ほどの例(当期純利益20、株主資本100、ROE20%、発行済み株式総数100)をもとに考えましょう。

当期純利益の処分として有効な投資案件があるために、配当を行わずに全額内部留保する前提といたします。
そして20を投資した結果、来期の利益が10増加することが予測される場合、この企業の予測ROEは23%(30÷(100+30))と、3%上昇することが期待できます。
この場合、経営者としては投資を実行した方が経営者としての成績を高めることができますので、配当をしないことが有利な選択股となります。

株主としても配当は受け取れませんが、1株あたりの利益は0.2(20÷100)から、0.3(30÷100)に、1.5倍に増加することとなりました。
PER(株価収益率 / 株式が1株あたり利益の何倍の株価になっているかの指標)が一定であれば、株価は1.5倍に上昇することが期待できるため、株価の上昇幅が配当を上回る水準であれば、株主にとってもメリットがあることになります。

つまり、その企業に有望な投資機会がある成長企業であると考えているのであれば、配当として資金を受け取るよりも、内部留保により成長分野に投資をしてもらうことで、株価の成長が期待でき、望ましいと考えることができます。

次に、②「配当する余力(現金)がないなど、配当余力がない」というケースは要注意です。
配当を行わない企業のなかには成長投資が原因ではなく、財務内容に問題があるために配当できないという企業も存在しています。

そもそも、現預金が不足しているという資金繰りの問題であることもあります。
また、配当可能利益が不足しているという可能性もあります。

配当可能利益とは、会計上の規則としてさだめられているもので、企業が株主に対して行うことができる配当の余力のことです。
債権者を保護する観点などから、無制限に配当を行うことは禁じられています。

企業は剰余金(過去からの利益の蓄積など)をもとに計算された配当可能利益の範囲内でしか株主への配当を行うことができません。
過去からの利益の蓄積が不十分であったり、高すぎる配当性向を維持してきたことから、この配当可能利益がなくなってしまって配当できないというケースもあります。
配当がない企業であれば、投資を行うためなのか、余力が無いだけなのかを見極める必要があります。

配当から考える投資対象企業の選定方法

配当性向の高い企業を選ぶのが良いのか、低い企業を選ぶのが良いのかは、個々の投資家がご自身の好みで選択することとなります。
どちらの企業にもメリットとデメリットは存在するため、一概にどちらが良いとは言えません。

では、投資家の好みを基にしてケース別にお勧めの投資先を検討してみましょう。
 

①ローリスク・ローリターンの安定運用を重視する方

先程、配当性向が高い企業を「あらたな成長分野のない成熟産業」と表現いたしましたが、こちらは決して悪い意味ではありません。
「極力リスクの低い投資を行いたい」という株主には、こういった企業が適していることもあります。
成熟産業の場合、業界内での市場シェアが大きく変動することは少なくなりますし、企業としても大きな投資を行う必要が無くなってきます。
そのため、資金を掛けずに(ローリスク)営業を継続し、比較的安定した利益を毎期継続していくこととなります。

株主としても、大きな株価の変動はあまりなく、安定して配当を受け取り続けることができます。
定期預金や債権と比べると、高利回りの運用が実現できる可能性が高くなります。注意すべきは、成熟産業だと安心していると、稀にあらたな企業が提供するサービスが別の成熟産業の市場を奪ってしまう可能性あるということです。例えば、携帯電話が拡大してから家庭用電話機の需要が減ってしまうといった、別の市場に置き換えられてしまうケースです。 

②キャピタルゲイン重視の一攫千金型投資

次にハイリスクな投資であっても、成功した場合に大きな収益が期待できる投資を重視する方には、配当性向が低い企業(成長企業)への投資がお勧めです。

こういった企業への投資のデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。 

  • ・配当が行われないので、投資資金は株式の売却まで回収できない
  • ・成長投資は必ずしも成功する訳ではないので、利益が増加していかないケースもある
  • ・利益が成長しても株式市場全体が低調だと、株価は上がらないケースもある(PERが低下/市場が逆風だと、特に成長企業の株価に影響が出る可能性があります)
  • ・成長企業は新興企業や上場後間もない企業であることも多く、株価の変動幅が大きい

成長企業は一般的に株価の変動も激しく、リスクが高い企業が多いと考えられます。
利益は上昇を続けていても投資家の期待が高すぎる場合は、株価が下がってしまうこともあります。

成長企業への投資は、成功すると将来的に大きな利益を得られる可能性がある反面、株価が大幅に減少して低迷してしまう可能性もあります。

こういった成長企業への投資を行うにあたっては、配当性向などの数値面からの分析だけでなく、その企業のサービス内容や経営者の力量といった定性的な情報を分析する必要があります。
その企業が成長していくと思える有望な企業なのかどうかを判断することが重要です。
その意味では、配当性向の低い企業に投資する場合、自分が理解しやすいサービス内容であるなど、利益が生まれる構造を理解できる業界の企業を選択することも重要です。 

まとめ

配当性向が高い企業と、低い企業にはそれぞれの状況に応じた投資の魅力やメリットがあります。
それらの情報を正しく理解せずに、ただ配当性向が高い(配当が大きい)というだけで選んでいると、本来望んでいた投資が行えていないという可能性もあります。

配当性向の低い成長企業へ投資を行う場合は、その企業が提供するサービスの内容などから、将来性が高いと思えるかといった定性的な判断が求められます。ぜひ企業の状況に応じた「配当」の意味を理解して、失敗しない運用を心がけましょう。 

著者:DonDon

元銀行員で、投資銀行や会計コンサルにも勤務。資産運用から、新規融資、そして、不良債権処理まで担当。ファイナンシャルプランナー、証券アナリスト、中小企業診断士、宅建などの資格も保有。

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