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知らないでは済まされない!金融資産を食いつぶす仕組債

知らないでは済まされない!金融資産を食いつぶす仕組債

仕組債という言葉を聞いたことがありますか。
証券会社と取引のある方なら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

この仕組債ですが、とても厄介な商品性で初心者の方が持つには少々危険な一面を孕んでいます。
本当は買わないに越したことはないのですが、すでに持っている方やその危険性を知らずに運用をしている人が多いのも事実です。

今回は金融機関で販売される仕組債を徹底解剖していきますので、しっかりとした知識をみにつけ資産運用の役に立ててください。

そもそも仕組債とは?

仕組債という言葉自体、あまり一般投資家の周りでは知られていないような気がします。新聞やニュースでもあまり目に触れる機会のない商品なので、まずは仕組債とは何かを知っておきましょう。

「仕組債」とは、文字通り、一般的な債券にはみられないような特別な「仕組み」をもつ債券です。
この場合の「仕組み」とは、スワップ(※1)やオプション(※2)などのデリバティブ(金融派生商品)を利用することにより、投資家や発行者のニーズに合うキャッシュフローを生み出す構造を指します。こうした「仕組み」により、満期やクーポン(利子)、償還金などを、投資家や発行者のニーズに合わせて比較的自由に設定することができます。

上記にあるように、仕組債は少し複雑な商品です。
この「仕組み」自体も商品によってバラバラで、そのタイプは数が多いのでこの記事では金融機関で販売されるタイプのものに絞って説明をしていきます。

証券会社でよく販売されるEB債と日経平均リンク債を知っておこう!

証券会社で販売される仕組み債は主にEB債と日経平均リンク債になります。
EB債とは、参照銘柄の値動きによって受け取ることのできる金利が変化する債券のことを指します。
詳しく説明をする前にいくつか聞きなれない用語が出てくるので、それについて学んでいきましょう。

基準価格設定日
証券会社で販売される仕組債には通常、基準価格設定日があります。
基準価格設定日とは、仕組債の「仕組み」が発動されるための条件になる価格になります。

例えば、トヨタの株価を参照にした仕組み債であれば、その基準日のトヨタの株価の始値や終値、もしくはザラ場の平均価格がその基準価格として設定されます。
その設定された価格を基準に投資家が受け取るクーポン(利息)を決めたり、のち程説明するノックイン条件を決めたりするのでとても重要です。

仕組債の募集開始から債券の受け渡し日まで時間が空くことが多く、投資家はこの基準価格設定日を忘れがちですが、とても重要な価格になりますので注意が必要です。

基準判定日
基準判定日とは、投資家が受け取ることのできるクーポンを決める日のことを指します。

デジタルクーポン債
対象となる指数や株価が、基準価格を上回ったか下回ったかによって受け取ることのできるクーポンが変わる債券のことを指します。
通常2パターンの金利が設定されており、それぞれをハイクーポン、ロークーポンと呼びます。

基準判定価格
基準判定価格とは、デジタルクーポン債基準価格設定日の株価や指数の値を元に設定される価格のことで、通常は基準価格設定日の70%~80%で設定されます。
デジタルクーポン債で目にする機会が多く、基準判定価格以上か以下によって受け取ることのできるクーポンが変わります。

参照銘柄を一つ決め、基準日を決めます。
利払い時の金利判定日にその値動きに対して基準価格以上であればハイクーポン、以下であればロークーポンが支払われます。

ノックイン
ノックインとは対象となる指数や株価があらかじめ設定された基準価格を下回ることを指します。
一度ノックインをしてしまうと、債券の満期償還時に額面割れで帰ってくるリスクが発生し、投資元本を割れこむことがあります。
この場合、いくら戻ってくるかは対象となる指数次第であり投資家は償還日をただただ待つしかありません。

EB債
EB債とは仕組債の一つです。
日経平均株価リンク債やその他の指/数連動債の場合、償還日には必ず現金が投資家の元に返ってきますが、EB債の場合はノックイン条項が発動すると株式での返還となります。
投資家は返還された株式を売却することによって現金を回収することになります。

株式は通常の株式と同様に配当金を受け取る権利があり、株価が上がれば売却して利益を得ることができます。
ただし、注意しなければならないのが投資家に受け渡される株数です。

投資家は投資金額を償還時の株価で割った株数を受け取ると勘違いしがちですが、実際は償還時の株価ではなく基準価格の株価になり、それは大抵償還時の株価よりも割高になります。
つまり、投資家の受け取ることのできる株数はその時の時価で買い付けを行った場合よりも少なくなってしまう可能性が極めて高いということになります。

仕組債のメリット・デメリット

仕組債のメリット・デメリットを紹介していきます。

メリット

投資家や金融機関の要望に応じて、商品の条件をアレンジできる
例えば債券の利率を高めに設定したり(その代わりに、ノックインプライスの引き上げなどなんらかしらの悪条件を受け入れる必要がある。)、償還の期間を短くしたり長くしたりするなどできます。

また、仕組み際の中身も販売会社が自由にアレンジできることができ、私募債※などであれば投資家の嗜好に合わせた債券を蘇生することができます。
(※一部の投資家のみに販売される条件が比較的に良い債券のこと)

手数料がかからない

債券を購入する際、投資家は購入手数料を支払う必要がありません。
仕組み債も債券になるので、投資家は販売手数料を取られることなく投資元本を100%投資に回すことができます。

リスクを抑えて株式を買ったような取引ができる
株式投資を始めてみたいが不安がある人にとって、デジタルクーポン債は株式投資のいい練習になります。

デジタルクーポン債を保有している間、投資家は対象の株価によって受け取ることができるクーポンが上下します。
また、ノックインした場合は投資家の元には投資資金は株式となって返ってくるため株を買い付けたような感覚になります。この場合、買い付け手数料はかかりません。

つまり、投資家はまるで株式を買ったかのように株価を追いかけ、もしかしたら株式になって返ってくる可能性があるということです。
ノックインまでは株価の下落余地は相当あり、それ以下にならない限りは満期まで待てば元本が全額返ってくるので株式購入よりはリスクが低いという見方もできます。

デメリット

仕組みが複雑で理解するまでに時間がかかる
仕組み債は、商品ごとに仕組みが違います。

ある程度カテゴリー分けができるとはいえ、通常の債券と比べてクーポンの受け取り条件が複雑であるため、なかなか理解ができないという方も少なくありません。

基準価格、判定価格、早期償還価格、ノックイン価格をそれぞれ確認することによって理解をスムーズにすることができます。

購入から基準価格の決定まで時間がかかる
仕組債は一定の販売期間を設け、その間投資家が買い付けをします。

しかし、販売期間は2週間~1ヶ月ほどあり、基準価格が決定する前に参照する指数や株価が上昇してしまい、高いところでプライスが決定してしまうことがあります。
高い基準価格で決定すれば、当然基準判定価格やノックイン価格も高い水準になり、元本割れリスクが高くなってしまう可能性があります。

どうして仕組債が危険なのか

一見高金利で為替リスクのない仕組債は、初心者にとって魅力的に見えます。
リスクレベルも一般の株式を購入するよりも低く見えるでしょう。
そのため、「まだ株式を購入したことはないけどこれから始めてみたい」とか、「通常の債券の金利では満足できないが投資信託を購入するのは少し抵抗がある」といった人には願ってもないような商品に映るかもしれません。

さらに、債券であるため投資家が直接負担する手数料がないうえ早期償還条項がついているもの多いため、証券会社としても販売しやすいのです。

では、どうしてその仕組債が危険なのでしょうか。
考えられるさまざまなリスクを確認してみましょう。

流動性リスク
仕組み債は通常の債券と違い、市場では流通していません。
つまり、売買が行われていないということになります。

流動性が低いということは自分が売却したいときにできない可能性が高くなります。
急ぎで売却する場合には、かなり低い価格での売却を受け入れなければなりません。

マーケットでの流動性が確保されていないため、債券を売却する場合は販売元である証券会社と相対取引をすることとなり、相手が提示する価格を受け入れなければなりません。
債券の満期での額面は通常100ですが、流動性が低いため、売却時は当然額面価格割れになってしまうことが多いです。

ノックインリスク
仕組債で一番恐ろしいのがノックイン条項になります。
一度ノックインしてしまうと、元本割れを避けることはかなり難しいと言えます。

ノックインの基準値は通常基準価格の50%から60%あたりで設定されており、これを下回るとノックイン条項が発動します。
例えば日経平均株価リンク債であれば基準価格から落ちたパーセント分元本が割れて投資資金が帰ってきます。

つまり、償還時に日経平均が半値になっていれば元本も半値になって帰ってくるということです。通常金利は7-12%の間で設定されていることが多く、期待できるリターンとリスクが釣り合わないケースが多いです。

EB債の場合は、投資資金は全て対象の株となって投資家に返却されます。
しかもこの株、上記のEB債の欄で説明した基準価格の価格で買い付けしているためノックインした状況では当然多大な評価損が出ています。

通常半値まで下落した株価が値段を元に戻すことは極めて難しく、保有し続けてしまったがために評価損が拡大してしまうことも多々あります。

利益機会喪失リスク
仕組み債は債券なので当然参照する株価や指数の上昇に対しての恩恵を受けることができません。
クーポンは初めから決まっており、通常判定日と利払い日は年4回です。

たとえ10%のハイクーポンであっても年4で割れば1回あたりに受け取ることのできる利息は2.5%です。
参照指数がいくら10%上昇していようが、その恩恵を受けることはないのです。

つまり先ほどのノックインリスクと組み合わせると期待できる利益は極めて限定的、損失は不確定という投資のセオリーとしては最悪の金融商品になるのです。

早期償還リスク
早期償還リスクとは、基準価格が一定の値を上回ることで早期償還条項が発動し償還日前に投資家に投資元本の受け渡しがされてしまうことです。
一見元本が早く返ってくるため一見良い条項に見えるのですが、それ以降のクーポンを受け取ることはできません。

また、購入時に取得した有利な基準判定価格も無効となってしまうので、償還した資金で新しい仕組債を買い付ける時に割高な基準判定価格になってしまう可能性があります。

どうして金融機関は仕組債を販売したがるのか

顧客から販売手数料が取れない仕組債をどうして金融機関は積極的に販売しているのでしょうか。そこには大きな2つの理由があると考えられます。

新規資金を獲得しやすい
債券は株式と違い投資家が新規の資金を金融機関に投資しやすい商品です。
手数料がかからない上、債券という特性上満期になれば元本が返ってくるという考えが投資家の頭の中にあるためです。

スプレッドを確実に抜くことができる
仕組債の場合、指数や株式の値動きを債券の中に組み入れます。
しかし、債券の取引である以上その値段は証券会社の仕切り価格となり、証券会社は確実にスプレッドを抜くことができます。
販売手数料という目に見える形の手数料がなくても証券会社は確実にそこで利益を得ることができるのです。

まとめ

仕組債はリスクが低く見えるもののしっかりとリスクを確認した上で購入しないと予想もしていない損失を被ることがあります。
リーマンショックやギリシャ危機の際には大量の仕組み債がノックインをし、多くの投資家が損失を被りました。

ただ、リスクをしっかりと理解できていれば株式よりも安定的なリターンを生み出すことを期待できる商品です。
流動性が低いことを考慮し、余裕資金で長期間預け入れても自己資金がショートしないように資金管理をすればうまく運用することができるかもしれません。

ただし、リスクで説明したように期待できる利益が極めて限定的である上、損失は不確定であることから参照する指数や銘柄は慎重に選ぶ必要があるでしょう。
金融機関からの提案に安易に乗らず、常にノックインした時のリスクを意識することが大きな損失回避への大きな一歩になります。

著者:You

証券会社でファイナンシャルプランナーとして働いていました。国内株式・外国株式・投資信託・外債・FX・先物等の金融商品に関する知識、資産運用全般に関して記事を書いています。