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低金利下の救世主?今個人向け国債は買いか否か。

低金利下の救世主?今個人向け国債は買いか否か。

「マイナス金利の導入によって大手銀行の定期預金金利が下がったことで、個人向け国債の人気が高まっている」というニュースが、日経新聞などでも頻繁に取り上げられるようになりました。
一方で、4月以降は流れが変わり、個人向け国債の販売が減少してきています。

そこで今回は、個人向け国債に関わる最新情報に加えて今買うべきか否かを考察していきます。

個人向け国債とは

個人向け国債とは、国の発行する債券(国債)を個人投資家向けに発行されている投資商品を指します。
プロの機関投資家向けに発行される国債と同様に、利子及び元本の支払いを国が責任を保つため、最もリスクの低い投資商品と考えられています。

現在発行されている個人向け国債の種類は下の三種類があります。

変動金利型10年国債

満期10年、変動金利タイプの国債です。
金利は「半年毎に設けられる利子計算期間開始日の前月に行われた10年国債入札における平均落札利回り(基準金利)× 0.66」が適用されます。

固定金利型3年国債

満期3年固定金利タイプの国債です。
金利は「期間3年固定利付国債の想定利回り − 0.03%」が適用されます。

固定金利型5年国債

満期5年固定金利タイプの国債です。
金利は「期間5年固定利付国債の想定利回り- 0.05%」が適用されます。

いずれの国債も、利子の受け取りは年2回で最低一万円から投資することができます。
また、国債は毎月発行され、発行後1年経過すれば中途換金が可能です。

金利については下限が0.05%と設定されているため、基準国債金利がマイナスとなった場合でも、0.05%の利率が保証されています。

低金利で個人向け国債が大人気

個人向け国債は、発行額が事前に決まっておらず需要に応じて翌月の発行額を決めます。
つまり、人気が高ければ高いほど発行額が多くなるということです。

日銀のマイナス金利政策導入により、個人向け国債は安全かつ比較的リターンの出る資産運用手段として個人投資家の人気を集め、2016年度の個人向け国債の発行額はなんと9年ぶりに4兆5千億円を超えました。
この水準は、実にリーマン・ショック前の水準に迫るものといえるでしょう。

前年度の発行額が2兆1千億円程度であることからも、今年度の発行額が大きく増額していることがわかります。
ここまで個人向け国債が人気を集めた理由は何なのでしょうか。
その理由を、以下の三点にまとめてみました。

1. 大手銀行の定期預金金利と比較した際の魅力

マイナス金利政策の導入により、民間銀行は預金金利を引き下げました。
2017年4月9日現在、大手の3メガ銀行である三菱東京UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行およびゆうちょ銀行にある「1年、3年、5年」それぞれのタイプの定期預金の金利ですが、いずれも0.01%となっています。

これに対して、個人向け国債は金利の下限が0.05%と設定されています。
預金に代わるリスクの低い資産運用先として、個人向け国債の人気が高まったというわけです。

2. 中途換金も可能!比較的高い流動性

1で述べたように、定期預金の代替として個人向け国債を購入する人が増えてきています。
こうした投資家層が重視するのが流動性です。

つまり、「現金への換金がしやすいかどうか」という点になります。
ちなみに、定期預金は基本的に中途解約が可能です。
中途解約した際に適用される金利は、事前に定期預金金利より低くなります。

個人向け国債も同様に、発行から1年経過すれば自由に中途換金することができます。
中途換金する場合は、これまで受け取った利子相当額のうち直近2回分の利子相当額に0.79685をかけたものが割引きされます。

しかし割引はこれまでの利子の範囲内となるように設定されているため、元本割れのリスクはありません。
このように、個人向け国債は比較的高い流動性が確保されています。

3. 証券会社のキャンペーン

個人向け国債の販売がここまで伸びたのは上にあげた二つの理由もありますが、証券会社が販売促進のために行なっている現金贈与キャンペーンは個人向け国債の人気増加に大きく寄与していると言えます。

参考として、大和証券が2017年2月に行なったキャンペーンの内容を検証してみましょう。
このキャンペーンの対象は固定金利5年債及び変動金利10年債で、固定金利3年債は対象外となっていることに注意してください。

キャンペーンでは、対象金額ごとに現金及び大和証券で使えるポイントがプレゼントされるような仕組みになっています。

【現金プレゼントの例:2017年2月大和証券】
(※証券会社各社により多少違いはありますが、大手の証券会社はほぼ同じような設定のキャンペーンを行なっています。)
100万円以上 200万円未満 → 3000円プレゼント+100ポイント
500万円以上 600万円未満 → 20000円プレゼント+500ポイント
1000万円          → 50000円プレゼント+1000ポイント上の例では、1000万円の個人向け国債を購入すればもれなく50000万円のキャッシュがついてきます。
もちろん直近二回の利子相当額を支払えば、1年経過後に中途換金することも可能であるため。その際の年率は、なんと0.5%となります。

リスクが非常に低いと考えられている国債で0.5%のリターンを達成できるのは、低金利で安全な資産運用先に悩む個人投資家にとって大変魅力的な条件です。
このように、証券会社のキャンペーンが低金利下で個人向け国債の人気を盛り上げる旗振り役となっていたのですね。

個人向け国債投資にまつわる留意点

これまでは、個人向け国債の魅力について主に3つについてご説明してきました。
ただし、今年度からは雲行きが怪しくなってきそうです。

財務省が2017年の4月6日に発表した個人向け国債発行額の推移によると、2017年3月が計9315億円だったのに比較して、2017年4月は2030億円となっています。
2016年の4月と比較しても49%減となっており、個人向け国債の人気が下がっているの見て取れます。

その内訳を見てみると、固定3年:460億円(3月は467億円)、固定5年:199億円(3月は2076億円)、変動10年:1371億円(3月は6772億円)となっています。
一体これはなぜでしょうか。

個人向け国債が今年の4月から大幅に減額した理由は、財務省が証券会社などの金融機関に支払う事務手数料の削減です。
2017年3月24日の日本経済新聞によると、事務手数料について4月から10年債は2割減、5年債は4割減、3年債は5割減になるとのことでした。

財務省の事務手数料は証券会社が行うキャッシュ贈与キャンペーンの原資となるため、こういった事前の報道を受けてキャンペーンの内容が変更されるとの思惑が生まれました。
このため、3月は個人投資家からの駆け込み需要が高まりましたが、その一方で4月は駆け込み需要の反動もあり、急激に減額したというわけです。

個人向け国債の人気は証券会社のキャンペーン次第

実際に、4月以降個人向け国債に関わるキャッシュ贈与キャンペーンの内容は変更されています。
それでは再び大和証券を例にとって、4月のキャンペーン内容を見て見ましょう。

【現金プレゼントの例:2017年4月】
100万円以上 200万円未満 → 10年債:2000円プレゼント、5年債:1000円プレゼント+100ポイント
500万円以上 600万円未満 → 10年債:15000円プレゼント、5年債:10000円プレゼント+500ポイント
1000万円         → 10年債:40000円プレゼント、5年債:30000円プレゼント+1000ポイント中途換金可能であることはこれまでと変わらないため、1年経過後に中途換金した際の年率は10年債で0.4%、5年債で0.3%となります。
キャンペーン内容が変更されたとはいえ、高い金利水準であることは変わりませんね。

ただし、このキャンペーンがいつまで続くかはかなり不透明な状況になってきました。
前述もしたように財務省は2017年4月発行分から証券会社に支払う事務手数料を変更しました。
この背景にあるのは、2017年度の個人向け国債の発行予定額が大きく減額されたためです。

【2016年度個人向け国債発行実績及び2017年度発行予定額】
・2016年度の個人向け国債発行額 4兆5556億円
・2017年度の個人向け国債発行予定額 2兆9500億円需要に応じて個人向け国債の発行を行なっているため、発行計画通りに調整するために証券会社への事務手数料を今後減らすことも検討するかもしれません。
そうなれば証券会社にとって個人向け国債の販売インセンティブがなくなるためキャンペーン内容の変更もありうるでしょう。
そうなった場合、個人向け国債の人気がかなり落ちることが予想されます。

今個人向け国債を買うべきか否か

結局この問いの結論は、証券会社のキャンペーン内容、ひいては財務省の方針にかかっているといっても過言ではありません。
キャッシュ贈与キャンペーンが続く限りは、リスクは低くリターンも比較的大きい投資商品として、低金利下安全な資産運用方法に悩む個人投資家の皆さんにとって「買い」である商品だと思われます。

キャッシュ贈与キャンペーンが万が一変更または中止になった場合、個人向け国債は中途換金の際のペナルティや今後の金利上昇可能性を考慮すると、際立って魅力的な投資商品とはあまり言えません。
「『個人向け国債が買い』なのは、証券会社のキャンペーンが続く限り」といった考え方を検討してみるのもいいでしょう。

著者:Nektaria

元投資銀行で資金調達を担当、現在は海外在住です。幅広い角度からお金にまつわる情報を発信していきます。

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