「為替ヘッジ」とは?仕組みを理解して投資信託選びに活かそう!

「為替ヘッジ」とは?仕組みを理解して投資信託選びに活かそう!

投資信託の商品説明で、「為替ヘッジあり」または「為替ヘッジなし」という表記を見たことがある方も多いのではないでしょうか。

「為替ヘッジ」の意味や仕組みについての知識は、外国の資産へ投資するにあたって必要なものでありながら、なかなか複雑で投資初心者にとって理解しづらい部分でもあります。

そこで今回は、これから海外資産へ投資をしてみたいという方向けに、為替ヘッジの基本的な部分について出来るだけ分かりやすくまとめていきたいと思います!

為替の基礎的な部分についても触れますので、「円高とか円安とか、為替の話ってややこしくて苦手…」という方にも、ぜひ読んでいただければと思います。

円高・円安になると、投資にどういう影響が出るの?


為替ヘッジのお話をする前に、まず為替の基礎的な部分を理解しておきましょう。海外資産へ投資を行う場合、円高・円安のどちらに動けば為替による利益が出るか、お分かりでしょうか。

答えは円安です。

投資商品における為替の利益・損失の考え方は、外国の通貨を保有している場合と同じです。

1ドル=100円の時に1万円で100ドルを買い、1ドル=110円の時に円転した場合には11,000円となり、1,000円分利益が出ることになります。

つまり、外国の資産(通貨)を買った時よりも、売る時(円転する時)に円安になっていれば、為替による利益を得ることができるということですね。

これとは逆に、1ドル=90円の時に日本円にしてしまうと、最終的な金額は9,000円となり、1,000円分損失が出ることになります。

これが円高による損失です。

もし投資を行っている資産自体の利回りで得られる利益よりも円高による損失が大きければ、投資全体で見た時の結果はマイナスになります。

このように、海外資産へ投資する場合、為替による影響はとても大きなものになります。

時には、投資を行っている資産の値動きよりも、為替の値動きが投資信託の基準価額を大きく動かす要因となることもあります

為替によって利益が出るなら良いですが、円高による基準価額の下落リスクは避けたいですよね。

そこで活躍するのが、「為替ヘッジ」なのです。

為替ヘッジのメリット・デメリット

海外資産へ投資を行う投資信託の商品には、「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」の2コースが用意されていることがあります。

これは、簡単に言うと「為替の影響を受けないコース」と「為替の影響を受けるコース」と言い換えることが出来ます。

それぞれのメリット・デメリットを分かりやすくまとめると、以下のようになります。

「為替ヘッジあり」のメリット(〇)・デメリット(×)

  • 〇円高になっても、為替による損失を低減できる
  • ×円安になった場合の利益を享受することができない
  • ×為替ヘッジをするためのコストがかかる

「為替ヘッジなし」のメリット・デメリット

  • 〇円安になった際の利益を享受することができる
  • ×円高になった場合、為替による損失を被る

為替ヘッジは、円高局面では基準価額の下落リスクを抑えてくれる、心強い効果を持っています。

デメリットはあるものの、「為替」という投資の不安定要素をなくしたいという方にとって、為替ヘッジありの投資信託は有力な選択肢の一つとなるでしょう。

※「為替ヘッジあり」の商品でも、為替ヘッジを完全に行うことが出来ない場合もあるため、為替変動リスクを全て回避できるわけではありません。

為替ヘッジの基本的な仕組みを知ろう!

為替ヘッジの有用性については理解したものの、「どうして為替の影響を受けないように運用できるの?」という所が疑問ですよね。

為替ヘッジは、一般的に「為替予約」をすることによって為替の影響を低減しています

為替予約とは、文字通り未来の為替を予約しておくことを言います。

ちょっと想像しにくいかもしれませんが、「1年後に、1ドル=〇円で交換して下さいね!」と約束するイメージです。

これによって、例え1年後の為替が大きく動いていたとしても、約束したレートで取引を行うことができるわけですね。

ただし、この約束をする際には基本的に「ヘッジコスト」と呼ばれる費用が発生します。

しかもこの費用は、為替が円高に動いて為替ヘッジのメリットが活かされた場合にのみ支払えば良いのではなく、円安に動いた場合でも同じように発生します。

そのため、円安局面では為替による利益を受け取れないことに加えて、ヘッジコストも払わなければならない状態になります。

為替ヘッジにかかるコストはどうやって決まる?

ヘッジコストは常に一定の費用がかかるわけではなく、為替予約を行う通貨間の短期金利差で金額が決まります

なぜ金利差がヘッジコストに関係するかというと、為替予約を行う際に、取引を公平に行うためなのです。分かりやすく、例を挙げて考えてみましょう。

仮定条件

  • 1ドル=100円
  • 日本の短期金利:0%
  • 米国の短期金利:3%

1万円(=100ドル)を1年間預金したとすると、日本円は1円も増えず1万円のままですが、米ドルは3%分の金利が付き、103ドルになっています。

このように金利の高い通貨で運用した方が有利なのは明白なので、為替予約の際にはこの金利差を考慮したレートで約束をします。

つまり、不公平が生じないようにするためには、1年後に1万円=103ドルになるようなレートで為替予約をする必要があります。

1万円÷103ドル=約97.09円ですから、為替予約レートは1ドル=約97円となります。

現在の為替レートは100円=1ドルと仮定しているため、約97円-100円=約マイナス3円。

このマイナスの3円分が、為替ヘッジをするために支払うコストということになります。

ヘッジコストは投資信託の場合、信託財産から差し引かれます。

ただし、為替ヘッジをする際には必ずコストがかかるというわけではありません。

今回の例で、日本と米国の短期金利の数値が逆だった場合(日本の短期金利の方が高かった場合)には、金利差分の金額を受け取ることができます。

これは「為替プレミアム」と呼ばれ、為替ヘッジを行っている投資信託の商品の場合、基準価額を上昇させる要因となります。

為替ヘッジあり・なしの選び方

ここまでの説明の中でもお話しした通り、円高局面では為替ヘッジあり、円安局面では為替ヘッジなしの商品がそれぞれ有利となります。

そのため、これから円高になりそう、もしくは円安になりそうという予測が出来る人は、それに合わせて商品を選ぶのも良いでしょう。

しかしながら、投資信託を購入する方は長期での運用を考えている場合が多く、その時々の為替動向で商品の入れ替えを行うのが難しいという方もいらっしゃるかと思います。

そんな方は、基本的な投資スタンスで為替ヘッジあり・なしを選択するのが良いと思います。

円安時の為替差益を諦める代わりに、あまりリスクをとらずに運用していきたいという方は為替ヘッジありのファンドがオススメです。

為替に左右されず、純粋に投資を行う資産から得られるリターンのみを受け取りたいという方も為替ヘッジありが良いでしょう。

ただし、金利が高い国の資産へ投資を行う場合には、ヘッジコストがかなり大きくなってしまうため、注意が必要です。

逆に、為替リスクを許容できる方で、円安時の為替による大きなリターンを逃したくない場合は、為替ヘッジなしを選択しましょう。

まとめ

同じ投資信託の商品でも、「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」では基準価額の動きが大きく異なることがあります。

為替ヘッジのメリット・デメリットや仕組みを十分に理解し、海外資産への投資を有利に進めましょう!

著者:sugar
元銀行員。主に資産運用窓口で働いていました。お金に関する基本的な知識を、分かりやすくお伝えできるような記事を書いていきたいと思います。

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