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2019/03/27
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4DXの元祖!?ギミック王ウィリアム・キャッスルの作品とその生涯

100年以上もの歴史を持つハリウッドは、多くの天才、奇才を生み出してきた。 その中でも一際風変わりな人物といえば、やはりウィリアム・キャッスルだろう。 映画をヒットに導くため、様々な工夫を凝らした彼の試みは、現在の「4DX」上映形式などにも受け継がれている。 この記事では、ギミックと楽しさに満ち溢れたこの監督の生涯と作品を紹介していこう。

目次

ウィリアム・キャッスルとは?

ウィリアムキャッスルは1914年生まれのニューヨーク出身。

彼の両親は資産家であったが、母親は9歳の頃、父親は10歳のころに相次いで死別。

両親のいない孤独に対する寂しさと不安を払拭したいという気持ちが、後の彼の道に影響を与えたのかもしれない。

13歳の頃、ある舞台劇を観たキャッスルは、その面白さの虜となった。

その作品の名は「Dracula」。最高の吸血鬼俳優と称されるベラ・ルゴシの主演作だ。

客を楽しませ、魅了させるショービジネスの世界を目指したのはこの出来事がきっかけだった。

当初は舞台の俳優兼裏方として働いていたが、23歳の頃に当時隆盛を誇っていた「コロンビア映画」に勤務。

「市民ケーン」で知られる巨匠オーソン・ウェルズの助監督等を経て映画監督となった。

はじまりはショック死保険!「Macabre」

キャッスルの処女作は1943年のギャング映画「The Chance of a Lifetime(日本版ソフト未発売)」である。

だが、この作品は彼の意見がほとんど反映されなかったとされ、その内容自体も凡作との評価を受けている。

真に彼の作品といえるのは、1958年制作のスリラー映画「Macabre(日本版DVD未発売)」だろう。

キャッスル自身がプロデューサーとなり、自身の財産をも注ぎ込んだこの一作は、どうしても興行的に成功させなければならなかった。

そこで彼が打った策は「ショック死保険」だ。

「この映画は怖すぎて生命に関わるかもしれません。なので、もし不幸にもお亡くなりになってしまった方には、死亡保険金1OOOドルを差し上げましょう」

と、大げさなハッタリをかましたキャンペーンを告知。

さらにはリアリティを出すため、映画館前に救急車を待機させたり、看護師(の格好をしただけの映画館スタッフ)を立たせたりした。

更に一部の劇場では、キャッスル本人が登場。

観客に映画の感想をインタビューし、その映像をテレビで放送するなど、精力的なプロモーションを行った。

映画の内容自体はそれほど評価されなかったが、このショック死保険が受けて興行的には大成功。

これに味を占めたキャッスルは、なにかしらのギミックを凝らした映画をどんどん発表していくこととなる。

世界初の上映システム「イマーゴ」が織りなす恐怖!?「地獄へつづく部屋」

「Macabre」成功の勢いに続けと翌59年に公開された作品が「地獄へつづく部屋」というホラー映画だ。

舞台は、過去に多くの人々が不審な死に方をしたといういわく付きの屋敷。

「そこで一晩を過ごすことができた者には1万ドルの賞金が与えられる」

そんな大富豪の提案に乗った5人が怪事にみまわれるという内容である。

キャッスルはこの作品を「イマーゴ」なる世界初の画期的なシステムを用いて上映すると発表し「とてつもなく衝撃的で怖いですぞ」とうそぶいた。

このイマーゴ、いったいどのようなシステムなのか、具体的にはあえて語られなかった。

そのため「イマーゴっていったい何!?」と、つられた観客が多数来場し、映画は前作同様大成功を収めた。

肝心のイマーゴの正体についてだが、これは劇中終盤に登場する髑髏に合わせ、ワイヤーで吊られた作り物のガイコツ(夜行塗料で光る)が劇場内をふらふら飛び回るという、色々な意味で衝撃的なものだった。

当然、観客たちは怖がるどころか大爆笑。

子どもたちにポップコーンを投げつけられる、エアガンで狙撃される、足を引っ張られて壊されるなど、大人気だったようだ。


とはいえ、その人気ぶりゆえに骸骨がボロボロになってしまったので、このイマーゴは公開からまもなくして使われなくなったということだ。

DVD情報

・国内版DVDは絶版(2016年11月現在)

・この作品のリメイク「TATARI」は及びその続編「TATARI 呪いの館」はDVD販売中

劇場に怪物が!弱点は人間の悲鳴!?「ティングラー 背すじに潜む恐怖」

他にはないギミック戦略のおかげですっかり人気者となったキャッスル。

批評家たちからは「子どもだまし」とまったく相手にされなかったが、一般観客からは「ハリウッドのおもしろおじさん」として親しまれていた。

そんな彼が次に仕掛けたギミック映画は、59年制作の「ティングラー 背すじに潜む恐怖(日本版DVD未発売)」というモンスター・パニック映画。

あらすじを簡単にいえば、ティングラーという芋虫とムカデを足して2で割ったようなモンスターが人々を襲うシンプルな映画である。

だが、この作品で用いられた仕掛けが非常に凝っており、本作をウィリアム・キャッスルの最高傑作とする意見も多い。

映画がはじまると、他ならぬキャッスル本人が登場。

「このティングラーは人間の叫び声に弱いのです。もし背中がゾクリとしたら、思いっきり叫んでくださいな」とニコニコ顔で語る。

なんのことだと思いつつ映画を観ていると、劇中でティングラーがカゴから脱走。

その後突如スクリーンにティングラーの影がドアップで映ったかと思いきや、主演のヴィンセント・プライスが観客に向かって叫び出す!

「ティングラーが映画館の中に逃げ込みました! 死にたくなければ思いきり叫んでください!」

その瞬間、客席のいくつかに仕掛けられていた弱電流の発生装置が作動。

背中にゾクリとしたものが走った観客は思わず「キャー!」と叫んでしまう。

更に、あらかじめ仕込まれていたサクラも一斉に叫び出す。

その声につられ、他の観客も連られて次々と叫び出し、いつしか劇場内は絶叫の大合唱。

おそらく、現在では滅多に味わえない映画体験だろう。

史上初!幽霊が見えなくなるメガネ「13ゴースト」

ティングラーの大ヒットの翌年、キャッスルは更なるギミックホラー「13ゴースト」を公開。

屋敷に潜む幽霊たちに悩まされる一家のストーリーに用意された仕掛けは、不思議なメガネ「イリュージョン・オー」。

このメガネのグラス部分には赤と青のセロファンのようなものが貼られている。

赤のグラスからスクリーンを覗けば劇中の幽霊が姿を現し、逆に青のグラスを通せば、なんと幽霊が消えてしまうのだ。

キャッスル曰く「映画の幽霊が怖すぎて観たくなくなった人は、青のグラスから観れば大丈夫です」とのこと。

これは、ただ単に画面の幽霊が赤色、それ以外が青色に着色されており、青いグラスで覗けば赤色が潰れて見えなくなってしまうだけの、非常に単純な仕掛けだ。

それでも、この映画は大ヒット。

多くの子どもたちがこのイリュージョン・オー欲しさにこぞって映画館へ詰めかけたという。

DVD情報

日本版DVD販売中
リメイク版「13ゴースト」もDVD販売中

ギミック映画の衰退


独特なギミックを駆使し、数多くのヒット作を世に送り出したウィリアム・キャッスル。

だが、60年代半ばになると人気は徐々に下降。

監督したほとんどの作品が興行的に振るわず、評価もされなかった。

その理由としては、単純に飽きられたからというのもあるが、ベトナムでの敗戦などによって世相が暗くなったことも大きいだろう。

事実、この時代には「アメリカン・ニューシネマ」と呼ばれる、主人公たちが救われない結末を迎えてしまう作品が数多く生まれた。

若き銀行強盗カップルの残酷な運命を描いた「俺たちに明日はない」や、奔放なバイカーが迎える悲劇を描いた「イージーライダー」などがその代表である。

もはや、無邪気な仕掛けで人々が笑う時代ではなくなってしまったのだ。

その後、キャッスルは徐々に監督業から身を引いていくが、他にもいくつかの作品をプロデュースした。

代表的なものとしては、ホラー映画の殿堂入り的な傑作と称される「ローズマリーの赤ちゃん」(1968)、高熱を放つゴキブリが人を襲う「燃える昆虫軍団」(1975)などだ。

「燃える昆虫軍団」の公開から2年後の1977年、カルフォルニア州ロサンゼルスにて、キャッスルは63歳の波乱に満ちた生涯を終えたとされている。

DVD情報

ローズマリーの赤ちゃん:国内版DVD発売中

燃える昆虫軍団:国内版DVD発売中

現代にも受け継がれるウィリアム・キャッスルのギミック

前述した通り、ウィリアム・キャッスルの作品とギミックは批評家たちから厳しい目で見られていた。

そういう意味で、彼の映画は「くだらない」ものかもしれない。

だが、彼の作品に出会ったことにより、映画の面白さを知ったという業界人が多数存在している。

「ティングラー」の電流に驚き、絶叫とともに劇場から逃げ出したと語るスチュアート・ゴードンは、後に「死霊のしたたり」「フロム・ビヨンド」などのホラー映画で成功した。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズの監督で知られるロバート・ゼメキスはキャッスルを「好きな映画監督だ」と賞賛している。

「コマンドー」や「マトリックス」シリーズのプロデューサーであるジョエル・シルバーは、キャッスルの名にちなんだホラー映画レーベル「ダーク・キャッスル・エンターテイメント」を設立。

「13ゴースト」や「地獄へつづく部屋」をリメイクした。

そして忘れてはならないのが、近年シネコンに投入されている上映形式「4DX」だ。

映画の展開に合わせて作動する座席や、水しぶきなどによる演出は、キャッスルが好んだギミックの流れを汲んでいる。

本人が4DXを体験すれば、手を叩いて喜んだかもしれない。

幼い頃の孤独、そして「Dracula」というホラー作品との出会いから生まれた、人々を楽しませようというキャッスルのギミック。

それは現在もなお、我々を魅了しているのだ。

参考元

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