キムタクが全編ノースタントで挑む！ 痛快娯楽時代劇「無限の住人」

「無限の住人」のあらすじ

ある事件で同心の仲間を斬り殺したことが原因で、賞金首となった元同心の万次は妹の町とともに逃避行を続けますが、賞金稼ぎの罠にかかり町は命を失ってしまいます。

妹を殺されて怒り狂った万次は100人の追っ手を斬り殺して、そのまま意識を失いますが、謎の老婆の力によって不死の体にさせられてしまいます。

この事件がきっかけで100人斬りの異名を持つようになった万次の前にある日、少女の凛が現れます。

凛は父を逸刀流によって殺されて、その復讐を果たすために力を貸してくれる用心棒を探しているのでした。

凛は万次に不死身の肉体を与えた老婆の八百比丘尼から彼の存在を聞いて、不死の肉体を持つ彼なら逸刀流の剣士達を倒せると考えたのでした。

最初は凛の願いをはねつけた万次ですが、妹の町とそっくりな凛の中に亡き妹の面影を見つけて、用心棒を引き受けることになります。


凜の用心棒を引き受けた万次の前には、幕府ですら手を焼く強敵の逸刀流の剣士達が次々と襲いかかってくるのでした。

傷だらけの用心棒・万次を演じる木村拓哉！

SMAPのメンバーとしても、俳優としてもこれまで日本のエンターテイメントのトップを駆け抜けてきた、木村拓哉がこの映画の主人公・万次を演じます。

この万次は戦いに明け暮れていることもあり、顔だけでなく全身傷だらけで、これまでの美しい木村拓哉というよりも、泥臭いとも言える役柄です。

こうした見た目から原作に描かれる万次に限りなく近い傷だらけの姿で現れる木村拓哉が、この作品ではまず印象的です。

また、この映画で冒頭からクライマックスまでチャンバラシーンが連続して続くのですが、それを木村拓哉は全編ノースタントでやりきります。

アクションをスタントマンに頼らずにやりきるという意味だけでなく、劇中の万次が憑依したような木村拓哉の鬼気迫る殺陣は必見です。

そして、最初は冷たく引き離していた凛との関係性もドラマが進むごとに変わっていくのですが、そうした万次の心の揺れ動きも木村拓哉は繊細に演じています。

全編を通して描かれる怒涛のチャンバラシーン！

「無限の住人」の監督の三池崇史監督は「十三人の刺客」のような大型時代劇で実績のある監督です。

そうしたこともあり、映画では、手に汗を握る派手な三池監督らしい骨太なアクションシーンが連続して続き、このチャンバラが映画の見どころです。

特に映画の中でも冒頭の万次が100人斬りをする場面は、あえてカラーではなくてモノクロで撮影されています。

万次の記憶の回想という意味合いもあるのですが、殺伐とした中にモノクロでしか表現できない様式的な映像の美しさがあり印象的なシーンになっています。

また、この映画のキャスト陣はノースタントで撮影にのぞんたこともあり、俳優同士の体を使ったプライドとプライドのぶつかり合いも激しいものになっています。

万次に襲いかかる強敵達①

万次と凜の前には命を狙う強敵達が次々に襲いかかってきます。

中でも、凜の仇である剣客集団・逸刀流統主の美しき剣士・天津影久を演じるのは福士蒼汰です。

彼には珍しい悪役ですが、人の命を奪うことを躊躇しない冷血漢の天津影久の演技は凄みがあります。

また、天津影久は特殊な武器を使うのですが、福士蒼汰は特撮出身ということもあり、アクションシーンでも運動神経抜群の軽やかな動きを見せます。

こうした悪役の天津影久ですが、実は快楽のために殺人を繰り返すのではなくて、多数の流派を垣根をなくして統一するという哲学を持った剣士でもあります。

そのためには手段を選ばないというこのキャラクターの内面のエネルギーを福士蒼汰は激しく表現して、俳優として新境地を開いています。

そして、市川海老蔵は万次と同じく不死身の肉体を持ち万次にある取引を持ちかけてくる、ミステリアスなキャラクターの閑馬永空（しずまえいくう）を演じます。

万次と永空が生死をかけて対峙する場面は、映画の中でも特に緊張感の殺陣が繰り広げられます。

そして、市原隼人は自分の欲望だけを追求する危険な男の尸良（しら）を演じます。

金のために他者を酷いやり方で殺す尸良ですが、市原隼人は彼らしく豪快にこのキャラクターを演じて確かな印象を映画の中に残しています。

万次に襲いかかる強敵達②

万次たちに前に現れる敵は男性だけでなくて、女性の刺客も登場します。

栗山千明は逸刀流をターゲットにする暗殺者集団の無骸流に所属する金髪の戦士・百琳を演じます。

また、天津影久が奥手の呼ぶほどの実力を持つ乙橘槇絵（おとのたちばな まきえ）を戸田恵梨香が演じます。

この乙橘槇絵ですが、普段は遊女の姿をしていることもあり妖艶な美しさがありますが、一度武器を手に取ると凄腕の刺客に変身します。

特に三節槍というヌンチャク型の武器で先端が長刀になっている、使いこなすのが難しそうなこの武器を戸田恵梨香は華麗に動かしているアクションは見応えがあります。

また、乙橘槇絵は天津影久に恋心を抱いていて、戸田恵梨香の演技には、そうしたこのキャラの女性的な儚さも感じさせるところが素晴らしいです。

その他にも北村一輝・満島真之介・金子賢などの出演陣が刺客となって万次たちと激しいアクションを繰り広げていきます。

このように多彩なキャラクター披露する多彩で痛快なチャンバラシーンの数々がこの映画の最大の魅力です。

カンヌ映画祭でも公式上映が決定した「無限の住人」

SMAP解散後初めての主演映画となった映画「無限の住人」で木村拓哉は人斬りに明け暮れる剣士の万次を泥臭く激しく演じました。

特にノースタントで挑んだ彼のアクションは役者としての執念を感じさせる映像になっています。

また、福士蒼汰をはじめとする多彩な刺客達の登場と万次との絡みも映画の見所で、それぞれのキャラを演じる俳優陣が強い個性を発揮しています。

一級のエンターテイメントに仕上がったこの映画は海外からの注目度が高く、第70回カンヌ国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門に出品されることになりました。