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出典:amazon

2017/04/10
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【伊藤潤二のホラーワールド】名作は短編にこそあり!まるで長編映画を見た後のような読後感

ホラー漫画界の巨匠・伊藤潤二。今年で漫画家として30周年を迎えたことにより、各方面で改めて注目を集めている。有名どころでは「富江シリーズ」や「うずまき」といった長編作品があるが、コアなファンはむしろ、彼の短編作品につまった濃厚な世界観に酔いしれるのだ。

目次

作家の実力は「短編」に問われる!?うまい作り手とは

小説や漫画が映画化されたとき、「いやいや、情報量ハンパない原作をこんな短時間にまとめるのは無理があるでしょ」と思ったことはないだろうか。
逆に「これをよく2時間にまとめたな!」と歓喜することは稀である。

少ない時間、少ないページ数の中に、溢れ出るアイデアや情報をいかにシンプルに面白くまとめるか。「短編」にはそのスキルが求められる。

情報をできるだけ詰め込もうとするのは、作り手のエゴだ。 うまい作り手の場合、足りない情報を「想像」させることにより、視聴者や読者を自然と作品の世界にひきずり込んでいる。

伊藤潤二は、まさにその「うまい作り手」の一人だ。

彼の短編に描かれる世界観は、物語の背景やその後の展開を考え始めると止まらなくなるほど、巧妙で奇抜なのである。

たった数十ページから広がる果てしない世界観

短編の読後感を満足させる最大の要素は、なんといってもラストではなかろうか。

伊藤潤二の短編を読んだ後はラストの余韻がずっと尾を引き、まるで濃厚な長編映画を見た時の気怠さに似た感じを受ける。

そしてその気怠さが、なんとも気持ち悪い。これは作品がホラーだからかもしれないが、得体の知れない不安が湧き上がり、しばらくは内在する。

それぐらい、物語のインパクトが大きいという事だ。

ある時は、不幸に見舞われる登場人物の行く末にただ諦めを感じる(だって自分の舌がナメクジになったらもうどうしようもない)。
-『なめくじ少女』

ある時は、壮大なスケールに展開していくであろうその後を哲学する(死の恐怖を感じなくなる薬が開発されたら、貴方は所望するか?)。
-『長い夢』

ある時は、生きるか死ぬかのサバイバルな状況における自身の身の振りを考える(ゾンビより狡猾な敵にどう立ち向かえばいいのか...)。
-『首吊り気球』

ある時は、物質主義に翻弄され続ける人間社会を風刺しているのかと深読みする(レコード一つでどこまでも殺人が繰り返される様子は、まるで...)。
-『中古レコード』

長編の場合、ある程度充実したストーリー展開に満足してしまうことが多い。一方、短編で良いストーリーであれば、「この後の続きが読みたい!!」となるだろう。

だがあえてそれ以上書かず、読み手のやきもきする気持ちを引き出して各々の思考に耽るよう仕向けるのが、伊藤潤二は本当にうまい。

迷ったらまずはこれ!自選傑作集

短編作品をいくつも世に送り出している伊藤潤二。

前述した作品は、全てこちらの『伊藤潤二自選傑作集』に集録されている。

一つ一つの作品が生み出されたきっかけや、その時の作者の思いが書き下ろされているので、初めて伊藤潤二に触れる方も、すでにファンの方も楽しめる内容だろう。

漫画家生活30年とあって、さすがに初期のころの作品は絵柄が古い。ただ正直なところ、ストーリーの奇抜さや展開の面白さは、昔の作品の方が圧倒的に多い。
ご本人も書き下ろしの中で、「はっきりとしたイメージが先にあると、ストーリーを作りやすい。そのイメージに向かって帰納的に考えればよいから。昔はそんな作り方がよくできた。」と言っている。

確かに、奇抜なストーリーを考え続けるのは想像以上に大変だろう。だが、今後の彼の作品にも大いに期待したいところである。

もちろん彼の作品は長編も面白いが、まずは、短編の濃縮された伊藤潤二ワールドを堪能してみてはいかがだろうか。

参考元

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