イメージ能力の鍛錬と飲みニケーションの見直しで、お金を貯める

イメージ能力の鍛錬と飲みニケーションの見直しで、お金を貯める

「お金が貯まらない」という話をよく聞きます。会社員の多くは、職にあぶれる確率が低いことと引き換えに、年収が突然倍になるようなこともないので、お金を貯めたいのであれば、年収がアップする企業に華麗に転職をキメる、支出を減らすなどが思い浮かぶのではないでしょうか。

今すぐできるのは後者ですが、その支出も、「こまめに電気を消して電気代を節約する」「保温性の高い鍋を使ってガス代を節約する」などでは、月に数百円程度しか貯まりません。

そして、節約のために新しい鍋を買うなどしてしまったら、鍋の費用が回収できるのは数年後になり、恐らくそのころには別の鍋を使っているに違いありません。

支出を効果的に減らすためには、節約だけでなくたとえば旅費や交際費などを減らす必要があるのですが、実はこれらのコストを減らしても暮らしへのダメージは少ないのです。

旅費は主に「つもり貯金」を本気で実行することで可能になり、交際費は、「飲みニケーションの見直し」をすることで可能になります。

「つもり貯金」はイメージ能力の鍛錬である

幼少のころ、親から「欲しいものはキリがないから、買ったつもり、と思って貯金しなさい」と言われたことはないでしょうか。「つもり貯金」は試したことがある人も多い節約術だと思いますが、「買ったつもりで貯金する」というのが本当に効果的なのかはわからないため、いつしか実践しなくなったという人も少なくないと思います。ただ、本気で「つもり貯金」をすると案外貯まるものです。

「つもり」のターゲットを旅行などの体験に関する費用としましょう。この「体験にかかるお金」は「つもり」のイマジネーションをきちんと膨らませることで、支出を抑える威力を発揮するのです。

たとえば国内の旅行先として真っ先に思いつく場所のひとつ、京都。東京駅からだと新幹線で約2時間なので、千葉の端などに行くよりも早く着くのですが、当然ながら交通費は雲泥の差です。

お金を貯めたいと思っているなら、遠いところへ行こうとしているとき、「他の地域に行くことで、行ったつもりになれないか」を検討すべきです。

もちろん、毎回「つもり」を実行しろというわけではありませんし、「京都に行くこと」自体を目的としている場合は京都へ行けばよいと思います。

ただ、旅行の要件が「東寺の五重塔の特別拝観で中の心柱の状況を確認すること」ではなく、「神社とお寺を見ておいしいものを食べること」なのであれば、十分「行ったつもり」を検討するに値します。東京にお住まいの人なら、京都に1回行くコストで鎌倉に10回以上は行けます。

体験のあとの「キリがない」気分をイメージできてこそ、つもり貯金である

また、旅行に行った翌週のことを思い出してみてください。再び旅行に行きたくなっているのではないでしょうか。旅行から帰ってきた当日や翌日は、「しばらく旅行はいいかな」と思いますが、少し期間が空けば、たちまち旅行に行った実感は薄れてしまい、また「旅行がしたい」という気分になっているはずです。

旅費に限らず、何らかの体験に対価を支払うような趣味を持っている方も同じです。「○○してもすぐまた○○したくなる」というのは、まったくキリがありません。

つもり貯金とは、「○○したつもり」になって、その分のお金を貯める行為を指しますが、つもり貯金は、自分の消費生活を猛省し、欲深さをシミュレートするところまでを含み、自分の中で折り合いをつけながら実践することが重要なのです。

飲みニケーションの見直しをすれば無駄な交際費を減らすことができる

では、交際費はどうでしょうか。個人的には、社会人がもっとも削りやすくダメージが少ないのは職場における交際費だと思います。若いうちは、同期や先輩などの職場の人たちと仲よくしておいた方がよいと思って、とくに話が合わない人にでも、誘われたら応じ、ついつい交際費がかさみがちです。

しかし、職場で飲み友達が増えたとして、仕事についての悩みを相談する関係になれればよいですが、仕事で絡んだらかえって気を遣ったり、仲良し同士で上司部下の関係になるのもうっすらとした気まずさが漂います。つまり、職場での飲み友達を増やすことで、飲み物や食べ物だけでなく、気遣いや気まずさをも買っているのです。

そもそも、私的な関係の有無が、仕事の進めやすさを大きく左右してしまうような企業というのもいかがなものでしょうか。支出を減らすためにも、同僚とのコミュニケーションのためだけに交際費を充てているのであれば、他の道を考えた方がよいかもしれません。

「飲み会の割れ窓理論」に気をつけよう

新入社員の方は、最初は1,000円でいいよ、などと言われるかもしれませんが、いつのまにか支払う金額が増えていた……なんてこともあるのではないでしょうか。携帯電話を契約するのと似たもので、最初は割引になるが、使い続けていると最初ほどのお得感がなくなってしまいます。

また、先輩に「誘ったら来る奴」と思われたら面倒です。一度飲み会に出たとしましょう。「あいつは前回来たから今回は誘わないでおこう」と先輩が思ったりするでしょうか。「前回も来たから今回も来るだろう」と思うでしょう。ひとつ窓が割れていたら、他の窓も割っていいように思えてしまうのと同じで、これは「飲み会の割れ窓理論」なのです。

飲みニケーションするなら「ご相談」の会議がよい

飲みニケーションするなら「ご相談」の会議がよい

飲み会ではひとつの話題につき何度もループしています。2時間の飲み会と4時間の飲み会だと、コストは飲食の増加にともなって増えますが、話している内容量はほとんど同じ、かつ、飲みすぎたことによる両者の記憶喪失も含むと、会話の効率としては最悪です。

最近、「飲みに行くくらいならランチがよい」という話を多く聞くようになりましたが、正気だから同じ話を何度もすることがないですし、昼間から下ネタを話すこともなく、仕事の話に集中できるはずです。飲みニケーションのうち、仕事に必要なところだけをランチに凝縮させることは可能なのです。何より、かかるお金は当然飲み会よりも安くなります。

あるいは、ずばり「ご相談」として、会議の依頼をしてしまえば、より凝縮できるはずです。これなら賃金も出ます。

「つもり貯金」と「飲みニケーションの見直し」を実践

以上の話をもとに、旅行でのつもり貯金と飲みニケーションの見直しを3ヶ月実践したときの貯蓄額をシミュレーションしてみましょう。なお、シミュレーションでは東京に住んでいると仮定します。

・旅行は、1泊2日の京都旅行(3ヶ月に1回)を、日帰り鎌倉と日帰り日光(3ヶ月に2回)にする
・職場の飲み会参加は、週1回から月1回にする

旅行を京都へ行った「つもり」にし、鎌倉と日光にしたとして、どのくらい安くなるのでしょうか。

旅行先 金額
京都(1泊2日) (東京-京都までの往復交通費)約25,000円+宿泊費+食事代など
鎌倉(日帰り) (東京-鎌倉までの往復交通費)約2,000円+食事代など
日光(日帰り) (東京-日光までの往復交通費)約10,000円+食事代など

旅行先を京都から鎌倉、日光にすることで旅行回数を増やしながらも最低でも1万円以上は貯蓄にまわせます。さらに、日帰りにすることで宿泊費も抑えられるはずです。また、東京-日光間は新幹線ではなく特急を利用すればもっと安くなります。

職場の飲み会は、1回4,000円として週1回×4=16,000円かかったのが、月1回にすることで4,000円に抑えられ、12,000円は貯蓄にまわせます。これを3ヶ月続けると、36,000円貯められることに。旅費と合わせるとかなりの金額になります。

お金が貯まらないのは体質のようなものです。「何も考えず使いたいだけお金を使ってしまう」「興味のない飲み会にも付き合ってしまう」というのを習慣のようにしていた方は、一度習慣の見直しをしてみるとよいかもしれません。支出を減らすのはなかなか難しいものですが、イマジネーションを膨らませ、飲みニケーションに必要以上にこだわることなく、金銭的にも精神的にも豊かな暮らしをしていきたいものです。

大阪生まれ。東大文学部卒業後、テレビゲーム製作を経て平凡な窓際サラリーマンとなる。傍らで珍妙なブログ「ココロ社」を運営。書籍の執筆もしており、著書に『マイナス思考法講座』(阪急コミュニケーションズ)『モテる小説』(阪急コミュニケーションズ)『忍耐力養成ドリル』(技術評論社)など。好きな犬はヨークシャテリア。

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