メガバンク3行が口座管理手数料を検討?!これってどういう事?

2017年の年の瀬にメガバンク3行が預金者に対して口座管理手数料の徴収を検討しているといったニュースが流れました。
このニュースのネットでの反応は、『預金しているだけでお金が減るなんて馬鹿も休み休み言え』、『金利は付かないのに逆に手数料をとられるなんて』『地銀に預金を移すから問題ない』『それならタンス預金にする』といった否定的な意見ばかりになっています。
銀行口座に手数料がかかると言った消費者の生活の身近な話題となる口座管理手数料の検討、利用者の不満はもっともと思いますが、メガバンクとしては実行しなければいけない理由があります。
何故メガバンクが口座管理手数料を検討しているのか、口座管理手数料はどの様な内容になるのかについて解説していきます。

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1.銀行の仕事とは

原点に返って銀行の仕事とはなんなのかについて考えてみましょう。
銀行の仕事とは、『預金者』からお金を預かり、企業やローンの借り手に対して貸し出しを行う事によって収益を上げる事と学校で習ったのではないかと思います。
一見すると非常にわかりやすかった銀行の仕事ですが、現在日本の中央銀行が行っている金融政策の下ではこのわかりやすかった構図は既に古いものになっています。

日本は景気を良くするために、中央銀行となる日本銀行が各民間銀行に対して大量のお金の供給をしています(これをオペレーションと呼びます)。
民間銀行は大量に資金供給を受ける事により貸出先を探し競争が生まれ、低い金利で民間企業は資金調達が可能になります。
日本銀行が供給した量は普通に暮らしているとわかりませんがが、10年前の2008年1月4日の日銀当座預金残高が約7兆円だったのに対し、2017年11月30日の日銀当座預金残高は364兆円まで膨れ上がっていますから相当な量を供給したことがわかります。
日本銀行が10年前から見て何十倍にもなる供給をしてくれるわけですから、民間銀行は預金をしてくれる人に頭を下げて一生懸命集めなくても、何時でも幾らでも日本銀行からお金を借りる事が出来るわけです。
現在の銀行の仕事は預金を集める必要は全くなく、投資信託や中央銀行から借りたお金を企業へ貸し出しすることが仕事になります。
言い方は悪いですが、預金は銀行にとってありがたいものどころか、寧ろ邪魔な存在と現在の金融政策の下では銀行側は考えているわけです。

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2.現在の金融政策と銀行が肩代わりしている日銀へのマイナス金利

現在の日銀による金融政策は銀行内で滞留してしまったお金に対して一定数を上回ると、日銀によってペナルティ金利が課せられる政策になっています。
このペナルティ金利は▲0.10%といった微々たる金利ですが、確実に発生してしまうコストです。
このペナルティ金利の適用を受けないように、民間銀行は民間銀行同士で余分なお金の擦り付け合いを行っていて、2017年11月30日の無担保コールオーバーナイト金利(金融機関同士の貸し出し金利)は最低が▲0.08%、平均が▲0.055%とマイナス金利での取引が主流になっています。
預金者から預かっている不要な預金は銀行内に滞留していますので、平均レートで▲0.055%から下手をするとペナルティ金利となる▲0.10%のコストが銀行内で発生しています。
銀行に1000万円を預金している人は、▲0.10%ですから毎年1万円のコストを銀行に負担してもらっており、その上銀行ATMなど銀行口座からお金をおろせる様々なサービスの提供を受けようとしているわけです。
コストを払っている銀行が口座管理手数料を利用者に付け替えるのは、仕方のない事と言えるのです。

銀行は企業に貸し出しを行っていて、暴利を貪っているのだからそれ位負担しろと考える人も多くいますが、この考え方も間違っています。
日本銀行は市場全体の金利を下げる為に国債を大量に買い上げ、更にCP(コマーシャルペーパー)や社債も大量に買い上げています。
一般的の人にはあまり知られていませんが、NTTファイナンスやトヨタファイナンス等の格付けが高く残存年数が短い社債はマイナス金利で取引が成立(利鞘を稼ぐどころか投資したら現金が減って返ってくる)しています。
社債以外の銀行の貸出金利も引きずられて下がっており、大手企業への貸し出しは殆ど収益を稼ぐことが出来ず、更に銀行が貸し出しを行える大手企業は軒並み貸すほど資金が余っている状況です。
中小企業に貸せばいいではないかと思われるかもしれませんが、中小企業への貸し出しはバーゼル規制といって国際的な規制を受けている為、増やし過ぎる事は出来ませんし、今の時期に資金不足になる企業は先行きが暗く回収の見通しが立ちそうにない企業ばかりですので貸し出す事は出来ません。
銀行が暴利を貪っているというのは完全な思い違いなのです。


3.金融政策は何時変わる?

日本銀行がマイナス金利政策を始めたのは2016年の初旬でしたが、何故今のタイミングになってメガバンクは預金にかかってくるコストを預金者に転換しようとしているのでしょうか。
実はこの預金者に対するコストの付け替えですが、これはマイナス金利導入直後から検討されていましたが、今までメガバンクが導入するのをためらっていた理由は2つあります。

一つ目はマイナス金利政策を導入する際、マイナス金利政策がもたらす副作用に配慮するため、当初極めて短期間で政策の見直しを行う見通しがあったことです。
この見通しは大きく外れ、物価目標となる安定的な2%のインフレが達成されるまで継続されると日銀総裁は言い出しています。
足元の物価上昇率はデフレではないものの0%近辺と安定的なインフレには程遠い状況で、マイナス金利政策解除の見通しが見えない事から、これからも利鞘の拡大は期待できず、更に預金者の預金も必要ないと思われる事から、メガバンクもコストを預金者に転換せざるを得なくなっているわけです。

2つ目の理由は衆院議員選挙が2017年に終了して、国政選挙が暫く行われる予定が無い事が影響してきます。
預金者からのコスト負担を減らすために一刻も早く口座管理手数料の導入をメガバンクは考えていたのですが、預金に手数料がかかるという事は日本と言う国ではなじみが無く、預金者、特に高齢者への理解が進んでいませんでした。
このような生活に密着した部分での不満は政権の支持率に影響してくるため、これまでは政治家は口座管理手数料の導入を金融業界に圧力をかる事で先延ばしさせてきました。
昨年衆院議員選挙が行われ、国政選挙の予定は3年位無いだろうという見通しが大半ですので現在、政治家からの圧力は弱まっています
現在は検討の段階ですが、タイミングとしてはこれ以上ない絶好のタイミングと思われますので、春ごろから来年を目途にメガバンクによる口座管理手数料の導入が実施される可能性は高いと思われます。

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4.メガバンクの動きに各銀行が追随

『メガバンクが口座管理手数料を導入しても他の銀行に行けばいいや』といった甘い考えを持っている人が多くいますが、この方法は通用しないと思われます。
そもそもメガバンクが口座管理手数料を導入する理由は、マイナス金利下での大量資金供給で預金はお荷物になるばかりか逆にコストがかかってしまう事が根本的な原因です。
このコストはメガバンクだけが抱えている問題ではなく、地方銀行や信金、全ての民間金融機関が同じ問題を抱えており、メガバンクが口座管理手数料を導入する事を契機に他の大半の銀行も必ず追随する動きになるでしょう。
こんな時代に逆張りで預金を集めようとすると預金が集中してしまい、ペナルティ金利で本業の儲けを吐き出し、貸出先なんて転がっていないじり貧になるだけです。
銀行員の給料を下げてまで過剰な顧客サービスを続ける経営者はいないでしょうから、マイナス金利の出口が見えるまで(出口が見えた後も当たり前に口座管理手数料は定着する可能性もあります)は口座管理手数料から逃げられなくなると考えた方がいいでしょう。

5.預金口座開設を断られる時代に?!

一昔前は預金を1千万円もすれば、銀行員がニコニコしながら対応をしてくれていました。
現在では預金口座開設を断る銀行が出てきているといったニュースが一部流れています。
これまで述べました通り、メガバンクをはじめ全ての金融機関は資金余剰の状態が続いていますから預金など必要ありません。
逆にお金を使ってくれる、カードローンや住宅ローン、毎月の手数料が入る投資信託を購入してくれる人だけで収益を稼いでいます。
口座管理手数料が導入されたとしても、これらのお金を使うサービスを使っている人に対しては手数料が免除されるサービスを行ってくれるでしょうが、預金しかしない人にはコスト負担をお願いする事になるでしょう。
担当の銀行員が気に入らないから、預金を全て移すなど短気を起こしてしまうと、他の銀行の預金口座開設を断られたり塩対応をされたりして、タンス預金にせざるを得なくなるかもしれません。

6.結構えげつないメガバンクの口座管理手数料

ここまでで銀行側はコストを負担しているので口座管理手数料をとるのは仕方ない事と思って頂けたかもしれません。
今回メガバンクが導入しようとしている口座管理手数料は整理して考えると、えげつない料金体系を引いてきそうです。

メガバンクは預金が集まる事によって負担するコストが増えるのはわかりますが、負担するコストの取り方を考えてみましょう。
通常ですと、1億円の預金をしている人に対して銀行は▲0.10%のコスト(年間で10万円)を負担しているのですから、1億円の預金をしている人に対して10万円の手数料を徴収するべきです。
逆に決済用に10万円程度しか預金していない人は、▲0.10%のコストは年間で100円程度しかかかっていないわけですから、100円を徴収すればいい事になります。
この制度は預金金利をマイナスに設定する、すなわち普通預金の金利をマイナス金利にするだけで行う事が出来て、一番わかりやすくしかも平等・公平な制度と家うでしょう。

しかしながら、今回銀行が導入しようとしているのは『口座管理手数料』になります。
『口座管理手数料』の概要はまだ発表されていませんが、個人的に考えているのは毎月末に100円程度の口座管理手数料をとるのではないのかなと睨んでいます。
100円程度であれば年間に直すと1200円程度ですし、うん十万円する金庫を買ってタンス預金にするよりは口座管理手数料をとられても銀行口座にそのまま留まるギリギリの範囲と言えるでしょう。
預金が1億円の人も10万円の人も同じ口座管理手数料になる訳ですから、少数の資産家の払うべき手数料を多数の預金が無い人が負担する、とてもえげつない構図になる訳です。

どちらが一般人にとって有利かと言うと一目瞭然で普通預金口座にマイナス金利を適用する方法ですが、そのような案を出そうという銀行は出てこないでしょう。
何故かと言うと銀行は多くの預金を持っている人を顧客とみなし、余り預金していない人を顧客とみなしていないからです。
今回の口座管理手数料の導入でも、預金を沢山持ち投資信託などを購入してくれる資産家は口座管理手数料がかからないように、投資信託を買う余裕が無い人から資産家にかかるコストを徴収すると言った料金体系になるでしょう。
家賃やクレジットカードの引落等は必ず発生するものですので、全ての銀行口座をゼロにする事は出来なく、給料振込みや公共料金の引落をしている口座は口座管理手数料がかからないようにしてくれないと、ちょっと逃げようがありません。

日本銀行の金融緩和はまだまだ続きそうですから、口座管理手数料の導入はかなり高い確率で行われそうです。
このような利鞘がたたない、資金が全く必要のない状況では銀行も口座管理手数料の導入は致し方ないのかもしれません。
ネット銀行など少しでもマシな料金体系の金融機関を探すなどの努力をしたり、余った預金は投資に回したりするなど上手な使い道をして逃げ道を探してください。

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まとめ

・メガバンクが口座管理手数料の導入を検討
・現在はマイナス金利による発生しているコストを銀行が負担している
・メガバンク以外に預金を移そうとしても、各銀行同じ対応をとりそう
・今後は預金がいらない所か、預金口座の開設を断られる時代に
・口座管理手数料は普通預金のマイナス化よりえげつないものになりそう
・少しでもマシな料金体系の銀行を探して乗り切ろう