レイヤー人生は底なし沼? コスプレイヤー歴約10年・穴子さんが「お金」について振り返る

anago

『遙かなる時空の中で3』の登場人物・平敦盛のコスプレ

はじめまして! 会社員しながらコスプレイヤー(レイヤー)をしている穴子と申します。

大学生の頃から現在まで約10年近く続けているコスプレという趣味に、どれだけお金を使ったのか考えるなんて、恐ろしすぎる所業です。おおお……。ATMへ走り、クレジットカードを切りまくり、そしてミシンを徹夜で踏みながら、「ババアが珍装するという趣味を辞められず、散財し続けているなんて、愚かすぎる!」と自分を殴り(精神的に)、でも抜けられなかったコスプレ人生。

そうなんです。コスプレは楽しいんです。

さて、今回「趣味とお金」というテーマで寄稿のお誘いをいただきましたので、恐ろしくも己のコスプレに使ってきたお金について振り返り、ガッタガタに震えたいと思います。

コスプレ沼のスタートは大学生

私は元々イラストやマンガを描くのが好きで、中学生の頃「geocities」(「Yahoo!ジオシティーズ」という、分かる人には懐かしい、無料HP作成サービス。現在もあります)で自分のHPを作り、イラストを掲載していました。そして、コスプレをはじめたのは、大学生の頃、そのHP上で出会った友達に「コスプレしてみない?」と誘われたからです。

「いやいや私みたいなブスが、大好きなあの美しく神々しい●●様の恰好をするとか地獄に落ちるべき」と思っていたのですが、結局「一度やってみるか!」という話になり、都内にひっそり佇むウィッグ屋をのぞいたところ、

「ぎゃーーー●●様がいるーーーめちゃめちゃ可愛いーーー」(※ただのウィッグです)

とテンションが上がってしまい、早速ウィッグを購入。その勢いで布も購入し、そのまま祖母の家に行き「裁縫を教えて!」とねだり、一緒に衣装を作って、コスプレ会場で友達と着替えるまでとんとん拍子。

それが私のコスプレ人生のスタートでした。

まぁコスプレに関しては何もかも初めてでしたので、その辺にいる女が奇妙な恰好をしているだけ、という仕上がりでした。でも、衣装を着ているだけで、他のコスプレをしている参加者の人と会話がはずんだり、仲良くなれたり……。そんなことが感動的で、コスプレ会場で出会った人たちとmixiでマイミクになったり(ここ、時代を感じるポイント)、次のコスプレの約束をしたりしているうちに、あっという間にコスプレの魅力に取りつかれてしまいました。恐ろしい。

毎週コスプレをするようになってからは、仲のいい友達もできました。最初はコスプレの話や好きなマンガ、アニメの話くらいしかしなかったのに、だんだんと家族の話、大学の話、バイトの話、人となりについても話すようになり、コスプレがなくても遊んだり家に泊まったりするようになりました。こんなに大事にし合える友達ができたのも、コスプレのおかげだと今でも感謝しています(その子とは転居等で距離は離れましたが、今でも仲良し。節目節目で連絡し合う大事な友達です)。

徹夜でミシンを踏み続けた大学4年間

コスプレを通じた交流だけでなく、好きすぎるマンガやアニメができると、「どうすればもっとキャラクターに近い理想的な衣装が作れるのか」「こんな構図の写真を撮ってみたい」「こんなメイクだったらもっとよくなるんじゃないか」など、果てしない追及心が芽生えてきます。

一生懸命衣装を作って撮影して、その時は楽しく満足したとしても、「次はもっとこうしたい!」「このキャラクターを友達にコスプレしてもらって、大勢で一緒に撮りたい!」「自分たちで撮影するのではなく、コスプレカメラマンさんにお願いして、イケてる写真を撮ってもらいたい!」と、どんどん欲が出てくるので、終わりがありません。

何よりコスプレをしている時は、コスプレに熱中してアドレナリンが出まくり、ハッピークソバカ野郎になれるので、嫌なことを思い出したり、悲観的になったりしないのです。精神面においても救われていたし、一生懸命作った衣装を着て(出来不出来はともかく)「服っぽくなって着れている! 完成したーー!」と思える達成感は何事にも代えがたいです。そしてそのためにまた布を買い、徹夜でミシンを踏む

そうです、コスプレは辞められないんです! コスプレはめっちゃ楽しいんです!

大学時代の収入、月10万円は全てコスプレに

大学時代、私がアルバイトで稼いで自分で自由に使えるお金は月に10万円程度でした。おそらく大学生のアルバイトとしてはまあまあの稼ぎだったのではないかなと思います。塾のバイトと家庭教師のバイトをかけもちし、効率よく稼ぐことを考えていました。

そして、全てコスプレに消えていました。年間で約120万円。

毎月クレジットカードの請求書を見て、「いや待て、誰か絶対私のカードを不正に利用している! 明細を見ねば! おい全部私だ!」と自己認識して落胆し、己を責めつつも、次の瞬間にはウィッグの通販サイトを見ている。コスプレが楽しすぎて辞められない、自律性ゼロの大学生でした。何に一体そんなに金を使ったのか、振り返ってみます。

衣装代

大学時代は土日を中心に月4〜8回ほどコスプレをしており、衣装は月に2~4着作っていました。

新しい衣装を作る時、レイヤー仲間同士で「今月新作●着で~やばい~」といった会話が繰り広げられます。何が言いたいかというと、ここでいう「新作衣装」とは、

服(主に布から錬成される)だけではなく、

・ウィッグを買って作ったり(カットしたり形を整えたり)
・靴を用意したり(買う時もあれば、既存のものを改造したり、作ったりすることも)
・小道具を用意したり(コスプレに合う小道具や、撮影の背景等の小道具)
・武器や防具を作ったり

……と、撮影するときに「身につけるもの」もろもろ全てを用意することになります。

つまり、大体服+ウィッグ+靴で1万円~1万5000円(1着)。小道具を追加すると+5,000円、武器も追加すると+1万円……くらいのイメージです。

もちろん、100円均一のものなどをうまく使い節約するレイヤーさんもいますが、私は残念ながら発想力乏しい凡人なので、少しでも好きなキャラクターを再現できるようにと、お金を出していい布を買うことで裁縫が下手なのをカバーしたり、ネットで素敵な武器を見つけると、4万円くらいのものでも迷わず購入したりなどしました。はい、そんな感じで平均すると大体月7万円程は衣装代に消えてしまいます。マジカル。

撮影するにもお金がかかる

残り3万円は何に使っていたかというと、まずはコスプレ撮影をするためのスタジオ代。

ただ、今と比べるとスタジオ自体も少なかったこともあり(年々増えています)、当時はスタジオよりも安く撮影できるイベント会場等を中心に参加していました。イベント1回の参加費は1,000円~3,000円程度。それが参加した回数分かかります。

交通費も馬鹿にできません。都内近郊往復で1,000円~3,000円程度×イベント参加回数分。

そして撮影が終わった後のゴハンや飲みが、1,000円~3,000円×回数分。

ちなみに撮影後のゴハンや飲みをレイヤー界ではアフターと呼びます。夜の業界のアフターとは全く違うのになぜかアフターと言います。ただオタクが集まって好きなキャラクターや作品について叫び合う、そして今日撮影した撮影データを見ながらまた叫ぶ、コミュニケーションが成立しているようでしていない楽しくやかましい会です。

はい、こんな感じであっという間に残り3万エンド。震えますね。お金ってなんでこんなすぐなくなるんですか? 怖すぎです。

大学時代、背伸びして買った一眼レフ

コスプレ会場に行くと、アマチュアのカメラマンの方にお会いすることがあります。人によりますが、カメラマンの方は立派な一眼レフを持っています。

大学生の頃は性能の低めなコンデジでパシャパシャお友達と撮影し合うことも少なくなく、コンデジで撮ったデータはだいたいありのままのブスなんですが、一眼レフで撮ってもらうとクオリティ×5,000倍!!! カメラマンの方に撮影してもらったデータを見ると「え……めっちゃ……自分……イケてる……?」と思えるほど劇的に美しくなっているんです。

それはカメラマンの方それぞれの技術やセンスによるものなのですが、愚かな大学生の私は「同じような一眼レフを持てばいい写真が撮れる気がする~! そうに違いない~! 買う買う~!」と、カメラ屋で当時6万円~7万円の一眼レフ本体+通常レンズを買いました。大学生の私にはベリー・エクスペンシブでした。さようなら金。

社会人になっても、年100万円貯める同期の横で預金残高ゼロ

就職活動の時はなかなか苦労しました。だってコスプレしかしてないから。「コスプレも立派なPRになる!」と、ES(エントリーシート)にコスプレ写真を載せたらのきなみ落ちました。愚かでした。業界によっては受かるところもあるのかもしれませんが、大手中心に受けていたこともあってか、とんでもない勢いで落ちまくりました。でも、いろいろ頑張って、なんとか無事就職できることになりました。やったー。

そして、社会人になってもコスプレ熱は全く冷めませんでした。

大学時代にコスプレを通して仲良くなった友達ともずっと続いていましたし、マンガやアニメは変わらず好きだったので、作りたい衣装も撮りたい作品も、無くならなかったのです。つまり年間120万円の出費は継続していました。

社会人生活が1年経ち、「私100万円貯めた~」と言っている会社の同期を見て、銀行の預金残高ゼロの私は目ん玉が落ちました。そしてすぐ気付きました。「アアアアコスプレや……コスプレがわしの金全部持っていったんや………」と。

それでも、コスプレをしている時は心の底から楽しいので、辞められるわけがないのです。

社会人2年目、3年目あたりでは営業成績が上がり、昇給もあり、インセンティブもあったため、使えるお金が増えてきました。

そのときの私は、

「やったー、もっとお金を使ってコスプレできるー」

という気持ちでした。社会人になっても脳みそのほとんどをコスプレが占めていたので、大学生の頃はめったにできなかった、憧れの「スタジオで撮影!」に踏み切れるチャンスでした。

スタジオとは、そのままですが、写真撮影用のスタジオです。マンションの一室からプロ仕様の本格的なものまで幅広く種類もあるので、お値段もピンキリなのですが、だいたい1人3,000円~1万円くらいの価格で利用できます。

スタジオによって雰囲気も変わるので、レイヤー友達のコスプレ写真を見て、「あ~! ここのスタジオ行きたい~!」とか、スタジオの宣伝用写真を見ながら「この空間にあの作品の●●チャンと●●チャンがいたら最高すぎる……」とひらめいてしまうと、財布の紐はガバガバです。

ちなみに郊外のスタジオは広くて素敵なことが多いのですが、移動距離も必然的に長くなります。時には千葉県や茨城県の奥地に行ったり、静岡県に行ったり……その分交通費もかかってきますね。

時間はないけどコスプレがしたい

anago

『遙かなる時空の中で3』の登場人物・平敦盛のコスプレ

大学生と社会人で圧倒的に違うのは、時間とお金のバランスです。

私は平均して朝8時~毎日遅くまで働いて、たまに土曜日も出勤していたので、とにかく平日は体力ゲージゼロで帰って布団に入るだけ、日によってはシャワー浴びる時間もなくて出勤……という生活をしていました。

もちろん平日に衣装を作ることはできない……でもコスプレはしたい……金曜の夜から徹夜でミシンするしかない……了解……栄養ドリンク……という強行スケジュールでコスプレを続けていました。

時に衣装が間に合わなくて友達に迷惑をかけることもあり、本当に申し訳なかったのですが、それでも許してくれる神のような優しい友達に囲まれながら、何とかコスプレを続けてこられました。友達ほんとにありがとう感謝です。

当時、私は同年代の平均年収よりもかなり多く稼いでいました。将来のために貯金もはじめていましたが、月々のカードの使用額は恐ろしい金額でした。なんでこんな金使ってるんだ……!? と今でも怖すぎるのですが、給料の1/2はコスプレ関係、1/4は徹夜で衣装を作ってコスプレ会場に遅刻する時に使うタクシー代などの交通費、残りは飲み代に使っていました。平日の仕事のストレスやうっぷんを、全て週末のコスプレで解消する。そういうサイクルだったので、金遣いは大学時代と比較してもかなり荒かったです。

ですが、精神的にも肉体的にも健康を維持したままハードワークを続けられたのは、休日のコスプレでストレス発散できたからに他なりません。どれだけ上司に怒鳴られて、お客さんに怒られても、土日のコスプレでハッピーになり、月曜日には完全回復していましたので。コスプレはすごいです。

ネットニュースに写真掲載された時の忘れられない書き込み

友達4人と夏コミ*1でコスプレをしていたところ、Web媒体に取材されて有名なポータルサイトのトップページに掲載されたことがあります。その時一番印象に残ったのが、そのネットニュースに対しての、あるコメントでした。私たちの写真を見て「コスプレやってる人たち、全員働いていない」と書いてあったのです。

待ちたまえ。レイヤーは意外と稼いでいるんだ。稼がないでこんな金がかかる趣味を続けられると思ってるのか……!と、心の中でそう思ったのでした。

金額は人それぞれですが、コスプレをやるには、何かしらの手段で自由に使えるお金を得なければならないわけです。私の周囲のコスプレイヤーたちは、バリバリ働いている人が多いです。職場では「趣味は~……読書とか~映画鑑賞です★ あとカメラとか好きです!」みたいなカモフラージュをしつつ、頑張って稼いだお金をコスプレにつぎ込んでいるんです。

もしかすると、あなたの職場で隣に席っている彼女もコスプレをしているのかもしれません。コスプレイヤーは出身地、学歴、職業問わず、あらゆる分野でひっそり生きています。オープンにしている人もいると思いますが、オフィスでは普通の人を装い、お金を稼ぎながら、コスプレで発散している! そんな生き物がコスプレイヤーなのです(個人の見解です)。

私は稼ぎ続ける

趣味に生きる人は何歳になってもきっと何かにハマり続けなければ生きられない運命なんだと思います。私の場合、それがコスプレでした。好きなものを見つけると没頭して好きなものしか見えなくなるというオタク気質からは、永遠に逃げられない。一瞬、その趣味から抜けたと思っても、体内に眠るオタク細胞が、没頭する何かを再び呼び起こすことを嫌というほど知っています。だからこそ私は、その対象物ができたときに、いつでも金をつぎ込む体制を作っておきたい。そうです、私は常にお金を稼がなければならないのです!

そして、年齢を重ねても稼ぎ続けるためには、自己鍛錬が大事です。現在、転居と共に転職し、今は以前の年収の半分以下となってしまいましたが、いつか以前と同じくらい稼げるように、英語を勉強したり(TOEIC900点とりました!わーい)、資格をとったり、MBAを検討したりしています。

もちろん、人によってかける金額や、ハマる方向性はさまざまだと思います。ですが、私はウワァアアっと燃える何かが出てきたときに、後先考えずお金が使えるよう、スキルアップしておきたいのです。そうすればいつ何にハマっても大丈夫ですから。さあ、明日も稼ぐぞ!!!!!

著者:穴子

時々コスプレしながらサラリーマンしています。ごくありふれたコスプレイヤーです。

*1:同人誌即売会「コミックマーケット」の通称。年2回開催され(2017年現在)、8月に開催されるものを「夏コミ」、12月に開催されるものを「冬コミ」と呼ばれることが多い

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