株主優待のお得な銘柄も会社を良く分析してから購入しよう!!(マクドナルド編)

株式運用を行う個人投資家のなかには「株主優待」を目的としていたり、楽しみにしているという方は多いでしょう。
株主優待を実施している企業は多くあります。
基準日時点でそういった企業の株主になっていれば、その会社の商品やサービスだけでなく、食事券やQuoカードといったものを受け取ることができます。
 
しかし、株主優待には注意が必要です。
個人投資家のなかには、株主優待の魅力だけで投資先企業を選んでしまっており、「企業本来の業績やサービスの魅力なんて見ていない」といったこともあります。
株主優待の魅力が強い企業では、そういった投資家が多いため、本来予想される株価から、大きく乖離してしまい、株価が高すぎるということもあり得ます。
 

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株主優待が、ずっと継続されるかどうかについてはわかりません。
企業によっては、これまで行っていた株主優待制度を廃止したり、還元される優待内容を変更(還元額を低下させるということを)することもあります。

また、そもそも本業の収益力が低下してしまうような事態が発生していて、気付くと大幅に業績が悪化してしまっており、株価の大幅下落ということもありえます。
株主優待で得をしても、肝心な株価が下がっていては無意味ですよね。
 
今回は、株主優待のお得な企業として名高い「マクドナルド」のご紹介と、企業分析を行っていきます。
 

マクドナルドってどんな会社? 

マクドナルドを知らない人は少ないですよね。
マクドナルドの正式名称は「日本マクドナルドホールディングス株式会社」であり、日本全国でハンバーガーレストラン「マクドナルド」を展開しています。
駅前・駅中や、郊外、ショッピングセンター内など、あらゆる場所で見かける、大手ファーストフード店です。
 
マクドナルドの店舗数は、直営・FC店をあわせて、2,909店舗にのぼります(2016年12月時点/同社ホームページ)。
単純計算では、都道府県毎に62店舗も営業していることになります。
そして、同社で働く従業員数は、パートを含めて51,000人以上にもなる超大手企業です。
そんなマクドナルドの年間売上高は、2,266億円(2016年12月期/連結ベース)を計上し、営業利益で69億円を計上しています。
 

マクドナルドの株主優待制度

マクドナルドの株主優待は、同社の食事券となります。
しかし、簡単に食事券と言ってしまうのが惜しいほど、お得な内容になっています。
株主優待の権利を得る最低持ち株数は100株で、100株以上、300株未満で優待お食事券を1冊、300株以上500株未満で3冊、500株以上になると5冊もらえます。
このお食事券は、バーガー類、サイドメニュー、飲み物の3種類のセット無料引き換え券が、6セットがついて1冊となります。

同社のホームページで、セットメニューの価格を確認したところ、2017年7月現在のレギュラーメニューでは、新商品の「グラン クラブハウス」のセットが790円で最も高い価格となっています。
つまり、この食事券は1冊あたり4,740円の価値があると推測されます(790円×6セット)。

なんと、このお食事券が年2回いただけますので、9,480円(4,740円×2回)分ものお食事券がもらえることになります。
同社商品の販売価格は、一部の地域で異なるようですが、今回はホームページで掲載されている標準的な価格をもとに計算しています。
 
次に、その株主優待の価値を投資額から評価してみましょう。
2017年7月14日の終わり値は、4,485円でしたので、株主優待のみによる還元率は2.1%と考えられます(9,480円÷4,485円×100株×100)。
 
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株主優待を実際に使ってみた!!

この株主優待は、実際に使ってみると、さらにお得であることに気付かされます。

このお食事券1枚で、1セット(バーガー、サイドメニュー、ドリンク)と交換可能なのですが、必ずしもセット単位で交換する必要がなく、1枚をそれぞれ別の機会に使用するということも可能です。
ドリンクのみで利用したい時や、持ち帰りでドリンクはいらないという時は、バーガーのみ、サイドメニューのみで交換することも可能です。

さらに、マクドナルドではセットでメニューを注文する際に、+αの料金でメニューの内容を変更することが可能です。
50円追加することでポテトをLサイズに変更したり、ドリンクメニューも60円追加することでマックフロートやクリームソーダなどの高単価ドリンクに変更することが可能です。
 
このお食事券では、そういった高単価メニューへの引き換えも、+αの料金なしで行うことが可能なのです。
つまり、サイドメニューと、ドリンクで高単価の+αの商品に交換すると、追加料金110円(サイドメニュー+50円、ドリンク+60円)相当になりますので、合計で660円(110円×6セット)が追加価値となり、合計すると1万円以上の価値として利用可能ということになります。
 
半年に1回もらえるこのお食事券で、だいたいの支払いを賄えうことができます。
特に、マクドナルドのメニューも昔に比べて高価格のものが増えてきていますので、そういったメニューを躊躇なく、お試しできるのが魅力です。
 

配当金も受け取れます

マクドナルドでは現在も配当を実施しています。
2016年12月期においても1株あたり30円の配当が実施されています。
後述いたしますが、2015年12期以前の業況悪化時期においても、同額の配当が継続されていましたので、「この金額での配当は下げない」という意思が感じられます。
 
100株を保有していれば、年間3,000円の配当を受け取ることができます(税引き前)。税率を20%として計算すると、2,400円が実質的な受取額となりますので、配当利回りはおおよそ0.5%(2,400円÷448,500円)ということになります。
 
株式投資としての配当利回りとしては、ややもの足りないという印象も受けるのですが、これは同社の株価がこの3ヶ月で大きく上昇していることにもよります。
3ヶ月前の3017年4月3日の終わり値では、3,250円だったのですが、7月14日時点で4,740円にまで上昇しているのです(+45.8%)。
 
むしろ、この期間で保有していた株主にとっては、配当利回り(インカムゲイン)というより、キャピタルゲインによる利益を大きく受け取ることができています。
 

マクドナルドの業績は?

それでは、ここからは実際にマクドナルドの業績(連結ベース)を、同社のIR資料から確認してみましょう。
2016年12月期の同社売上高は2,266億円、当期純利益は54億円を計上しています。
2016年12月期の結果として重要なのは、同社の最終利益が、3年ぶりに黒字化したということです。
 

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マクドナルドでは、2014年7月に、同社の主力商品であるチキンマックナゲットを製造していた中国の食品加工会社が、使用期限切れの鶏肉を使用していた問題が発覚しています。
 
安心・安全な食を求める意識が強い日本で、衝撃的なインパクトが広がりました。
その問題による影響が消える間もなく、2014年末から日本中の各店舗で販売している商品に異物が混入していたというニュースが伝えられました。
ニュースなどで異物混入のあらたな情報が連日のように伝えられ、マクドナルドのブランドイメージが大きく棄損してしまったと言えるでしょう。
 
「使用期限切れの鶏肉使用事件はともかく、異物混入はやや騒がれすぎなのでは」という印象も受けましたが、結果としてマクドナルドの業績は大幅に低下することとなりました。
 
同社の2014年12月期と翌2015年12月期の最終利益は赤字にまで落ち込んでいます。
2012年12期に売上高で2,947億円、当期純利益で129億円を計上していたものが、2015年12月期には売上高で1,894億円、当期純利益で350億円の赤字にまで至っています。
わずか2年の間に、年間売上高は35%も低下し、当期純利益では480億円も下落してしまったということになります。
 
それが、2016年12月期には、売上高で前年比+372億円(+20%)、当期純利益も400億円増加して3期ぶりに黒字化しています。
 

マクドナルドの黒字化を支えたもの

同社の有価証券報告書を見ると、マクドナルドの中長期の成長に向けた取り組みとして、4つの柱を展開しています。
4つの柱とは、「よりお客様にフォーカスしたアクション」、「店舗投資の加速」、「地域に特化したビジネスモデル」、「コストと資源効率の改善」を指しています。
 
特に2016年12月期には、新商品の名前を公募した「北のいいとこ牛(ぎゅっ)とバーガー」や、おいしさを星の数とコメントで、Twitterで投稿してもらう「クラブハウスバーガー」などのキャンペーンを展開しています。
日本の1号店オープンから45周年を迎え、「45周年記念キャンペーン」の展開も成功した模様です。
 

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また、高価格帯の商品だけでなく、平日お昼のランチメニューとして、2016年9月から、定番メニューのセットをお得に利用できる「バリューランチ」も開始しています。
 
さらに、同社では2018年度末までに、既存店舗の90%以上を、モダン化させるという計画を立てて、2016年も既存店舗約560店の改装・リニューアルを実施しています。
 
新メニューの開発、顧客とのコミュニケーションを深めるためのキャンペーンの展開、既存店舗のリニューアルによる競争力の確保が、同社の収益力の回復に大きく貢献しているようです。
 

ROEから見るマクドナルド

同社の有価証券報告書にて、マクドナルド自身が経営指標として、売上高経常利益率、及びROE(自己資本利益率)を重要視していることが記載されています。
マクドナルドの2016年12月期の売上高経常利益率は2.9%です。
東証一部上場企業の全産業の平均値(2017年3月期)は、3.3%ですので、利益率はやや低いと言わざるを得ません。
 
しかしながら、マクドナルドでは近年、高価格帯のメニューを増加させるとは言っても、やはりマクドナルドを利用する顧客の需要はリーズナブルな価格帯のメニューに強いようです。
そのため、利益率の低い販売が主になっています。
そして、2016年12月期においては3期ぶりの黒字化を果たしたことが大切で、利益率は高くありませんが、まずは大きな成果であると言えます。

次に、同社のROEを見てみましょう。
同社のROEは2016期12月期実績で4.9%となっています。
東証一部上場企業の2017年3月期の全産業平均は8.6%となっています。
ROEは、「株主が企業に対して拠出している資金(株主資本)が、どの程度の利益を生みだしているのか」を示す指標であり、「企業経営者が株主資本を、いかに効率的に活用しているのか」を表す指標となります。
そして、ROEは一般的に高いほど良いとされています。
 
マクドナルドの実績は4.9%ですので、一部上場企業の平均と比較しても、かなり低い水準であると言わざるを得ません。
正直、やや物足りないと言ったところでしょうか。
株主として、株主優待を除き、企業の収益力の成長によるリターンを望む投資家の観点からは、決して良い成績とは言えません。
 

1株あたり利益から見るマクドナルド

次に、EPS(1株あたり当期純利益)とBPS(1株あたり純資産額)を見てみましょう。
 
2016年12月期のEPSは40.37円となっています。
前年、前々年は赤字でしたが、さらに前の2013年12月期は、38.64円であったことを考えると、赤字転落する前の水準にまで戻っていることとなります。

さらに同社の2017年12月期は、EPSで109.06円を予想しています(日本経済新聞/会社情報から)。
2016年12月期実績から2.7倍に増加することを予想しており、同社業績の本格的な回復・成長が期待されています。
 
なお、EPSから株価水準をみる指標として、PER(株価収益率)があります。
PERとは、「同社の1株あたりの利益に対して、株式が何倍の価格で売買されているのか」を示す指標(株価÷EPS)です。
成長性の高い企業や、株主優待など、株式を保有することに対する特別なメリットがある場合は高くなる傾向があります。
 
東証1部上場企業全体の平均は20.7倍です。
それに対して、2017年7月14日時点の終わり値で計算してみると、111倍(4,485円÷40.37円)、2017年12月期の予想EPSで評価しても41倍まで買われていることになります。
マクドナルドのROEが決して高いと言えない水準であることを考えると、「PERはやや高すぎる」という印象を受けます。
 
株主優待のお得さや、同社の株主割合のうち約半分が安定株主(マクドナルド・レストランズ・オブ・カナダ・リミティッド、マクドエーピーエムイーエーホールディングスピーティイーリミテッド)と思われる方であることから、同社の株式が売却される量が少なく、株主優待を求める個人投資家の購入で高ぶれする傾向にあることがうかがえます。
 

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PBRも高水準

当社のPBR(株価純資産倍率)についても合わせて見てみましょう。
PBRは、「1株あたりの純資産額(BPS)に対して、現在の株価が何倍まで購入されているのか」を図る指標です。
先程のPERが収益力なら、PBRは資産から見た指標と言えます。

BPSは、貸借対照表のなかで、株主に帰属すると考えられる株主資本を発行済み株式総数で除した数値です。
株主資本は、もし現時点で企業が営業を辞めて清算するとなった場合に、株主が受け取ることが可能であると期待される金額です。
BPSはその金額を発行済み株式総数で除して、1株あたりの金額を算出したものとなります。
マクドナルドの2016年12月期末時点のBPSは827円となっています。
 
東証一部上場企業全体でのPBRの平均は1.2倍なのですが、マクドナルドのPBRは5.4倍(4,485円÷827円)となっています。
東証一部上場企業の平均値と比べて、こちらも相当に高い水準にまで買われていることがわかります。

仮定の話として、もしマクドナルドが現時点で事業を終了して、同社資産を清算して株主に還元するとなった場合には、株主は株価に見合うほどの資産を受け取れないということを示しています。
 
株式投資にあたっては、このPBRが1倍以下であれば、比較的投資しやすいです。
しかし、「この水準にまで高くなっていると、どうも買いにくい(高すぎる)」というのが正直な感想です。
 

逆日歩に注意!! 

そうは言いつつも、私もマクドナルドの株主優待に魅力を感じていることから、2017年6月末の権利取得までに同社の株式を取得しておきました。
一方で、同社株価がやや高すぎると感じていたことから、株価下落リスクを回避する目的で、同株数を信用取引で売り建てしておくという方法を取りました。

一般的には、この方法で株価が下落して保有株で売却損が発生したとしても、売り建てしておいた信用取引で利益が出るため、損益は0になります。
 
しかしながら、2017年6月30日の同社の逆日歩は19,800円と、非常に高額となってしまいました。

逆日歩に馴染みのない方のために、簡単に説明します。
逆日歩とは、信用取引において、売り建てが増えすぎて、株が不足した時に追加でかかる費用となります。
あまりにも売り建てが大きくなり過ぎると、証券会社も該当する株式を調達してくるコストがかかってしまうため、取引を行っている投資家にそのコストが転嫁されるのです。

つまり、先ほどの例では、マクドナルドの株式を2017年6月30日に売り建てしていたことで、その日一日で、追加費用が19,800円発生してしまったのです。
同社の年間配当が3,000円(100株)で、株主優待の価値が10,000円程度であることを考えると、この逆日歩は、かなり大きな負担となってしまいました。
 
おそらく、同様にマクドナルドの株主優待を求める個人投資家が、信用取引を活用しており、売り建てが買い建てに比べて過大になりすぎてしまっていたようです。
 

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購入するタイミングに注意

マクドナルドのように、株主優待制度がお得な株式は、同じく株主優待を狙った個人投資家の影響で、権利落ち日前後で株価が大きく変動することが良くあります。
権利落ち日前に購入希望者が増加し、権利落ち後に売却が集中してしまうのです。
 
こういった流れに同調していては、優待制度のメリットも半減してしまいます。
お目当ての株式(優待制度)が決まっているのであれば、この流れを逆手にとった購入方法がお勧めです。

つまり、権利落ち後の株価下落のタイミングで取得し、そこから長期的に持ち続けるようにするのです。
 
また、権利落ち日前後の数日のみ株式を保有するということも可能ではありますが、売却損が発生する懸念もあり、せっかくの配当や、株主優待のメリットが薄れてしまいますので、極力避けることをおすすめします。
 
逆に、先ほどの例のように、売り建てを活用することも一般的には良く行われますが、あまりおすすめはできません(逆日歩は危険です)。
 
マクドナルドの強みは、同社の日本全国に広がる店舗網と、圧倒的な知名度・ブランド力です。
一時的な問題(異物混入や、中国の消費期限切り鶏肉問題など)で被害を受けることはあっても、やはりこのブランド力は強力です。
 
実際、商業施設に入居しているマクドナルド店舗に行っても、朝から夕方まで行列が出来ていることが多々あります。

逆に弱みとしては、消費者の低価格への期待感が高すぎるために、高価格帯の商品が売れにくく、利益率が低くなりがちということでしょう。
 
しかし、集客力、販売力は十分に持っていることから、有力なメニュー開発をすることで、高価格帯の商品がヒットする可能性も十分にあります。
実際、キャンペーン商品では、高価格帯のものでも販売が伸びているものもあります。
 
今後とも、同社の株価が大きく下がるということは想定しづらいと言えるでしょう。
安定的に推移、成長していくことが期待されます。
お得な優待券を受けつつ、長期的に保有を考えて見られてはいかがでしょうか。
 

まとめ

マクドナルド株式の保有は、株主にとって楽しみのあるものです。
株主優待券で、お得に商品を購入できるだけでなく、お近くの店舗を覗いてみることで、数値だけではわからない消費者からの評価や反応を株主が自分の目で確かめることができます。
 
マクドナルドが保有するブランド力、店舗網、商品開発力は非常に魅力です。
こういった価値を持つ企業は、多少の問題を抱えることはあっても株価は底堅く、一時的な悪化から回復していくことが期待できます。
同社株式の保有について、ご検討されてみてはいかがでしょうか。

著者:DonDon

元銀行員で、投資銀行や会計コンサルにも勤務。資産運用から、新規融資、そして、不良債権処理まで担当。ファイナンシャルプランナー、証券アナリスト、中小企業診断士、宅建などの資格も保有。

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