自民党東京都議選大敗!株式市場で考えておかなければいけないシナリオ

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7月2日に東京で都議選が行われ、事前予想以上に自民党が大敗を喫してしまいました。

都議選の結果は「127議席の都民55、公明23、生活ネット1(自民党はたったの23)」と、小池都知事率いる都民ネットは過半数を獲得した結果となっています。

今回の大敗は、安倍政権の足元を揺るがす事態に繋がるかもしれません。

「今後、政局がどのように動く可能性があるか」、そして「この大敗がどのような形で金融市場に関係してくるか」について解説していきます。

 

1.地域政党の強さ

今回の選挙では、地域政党の強さについて改めて感じさせられました。

元々、都議や市議を選ぶ選挙では古い政党に属している立候補者よりも無所属に近い立候補者の方が強いものです。

 

大阪で橋本徹氏が大阪維新の会を立ち上げた時もあっという間に古い既存政党にとってかわり、近畿地方で確固たる地盤を築きあげました。

その後の国政進出では全国で立候補者を擁立したものの、思いのほか議員数は獲得できず、評価が割れる結果となってしまいました。

しかしながら、地盤のある近畿地方ではその後も圧倒的な強さを維持していたのです。

このような地域政党の強さは知っていましたが、今回それが日本の首都である東京都で起きたのは中々興味深いものです。

 

今回の都知事選では、小池都知事の戦略も光りました。

小池都知事は「古い議会を新しく」と掲げましたが、これは小泉純一郎氏の「古い自民党をぶっ壊して政治経済の構造改革を行う」と同じ構図で、身内である自民党(一応離党しましたが)に敵対勢力を作って票を取り込んでいく戦略が非常によく似ています。

 

都議選なのに「原発をなくす、TPP反対」など訴えても、「それならどうぞ国会議員に立候補しなおしなさい」と言われるだけでしょう。

「子育てしやすい社会に」なんてどこの政党でも当たり前にやっていますから、有権者に違いを伝えることはできず、それなら仮想敵を作って「古い敵を倒すので票をください」と言った方が何となくそれっぽく聞こえて票が集まるものなのです。

 

有権者のほとんどは「この人を信じて投票する」ではなく、「こいつを当選させたくないから、こっちに投票する」という考え方で投票しているので、この戦略は非常に有効です。

小泉純一郎氏時代に環境大臣として初入閣するなど、小泉純一郎氏を近くで見て喧嘩殺法を学んだとされる小池都知事ですが、今回はその片鱗を垣間見ることができました。

この勢いが続くかどうかですが、地域政党ということもあって、「国政に手を広げなければ」と反自民党票と浮動票、ライトな自民党票を受け皿にして、オリンピックが終わるまでは長く続くのではないかと予想されます。

 

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2.揺らぐ安倍政権、今後はどうなるか

都議選の敗北は、安倍政権にとってかなりショックな結果だったでしょう。

今回の都議選、そもそも既存政党はそれだけで弱いので議席数は相当減り、過半数は確保できないことは覚悟していたでしょうが、公明党と同じ23議席というのは衝撃的です。

東京の都政は自民党の別動隊である小池都知事にとられただけですので、別にショックではありません。

しかし、この都知事選を自民党が大敗したことにしてメディア各社に「大敗!大敗!」と叩く材料を与えてしまったからです。

 

今回、都知事選前にメディア各社は閣僚の失言や加計問題などをことさら大きく取り上げてきました。

収賄罪でもなんでもない加計問題に何故ここまでメディアは執着するのか考えてみたのですが、単純に「メディアと無党派層が安倍信三に飽きてきた」というのが表れてきたことが窺えます。総理の友達に便宜を図ったのが問題だというなら、歴代の全ての総理は経済界や学界にパイプがありますので、TPP含めて何の政策も通せないでしょう。

 

2012年12月16日に安倍政権が誕生し、今年で5年になります。

日本人は従来飽きやすい体質で、2年ほど経つとすぐ「次の人に政権を」と言い出すものです。

平成に入ってからは、最長の小泉純一郎元首相でも2001年4月26日-2006年9月26日の1980日となっています。

 

第一次安倍政権と合わせると、小泉純一郎元首相の総理大臣としての日数が超えた安倍信三首相はそろそろ「賞味期限切れ」と言われる段階に入ってきているのでしょう。

特に、安倍信三首相の「改憲」は護憲メディアに受けが悪く、今後も問題であるかそうでないかを問わずにネガティブニュースを流し続け、都議選大敗とあおるので、安倍政権の支持率の急反発は期待できず、自民党内での総裁交代の流れを作りたいのが窺えます。

 

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3.安倍政権が倒れるとどうなる

今回の都議選の結果を受けて、ポスト安倍について名乗りを上げる議員の動きは活発になりそうです。

というのも、前回の衆院議員選挙は2014年12月14日に行われています。

衆院議員の任期は4年間ですから、任期は2018年12月13日、つまりは来年中に衆院議員は任期満了となって解散となってしまいます。

通常、任期を待って解散を行うといったことはあまりせず、任期の途中で内閣総理大臣が解散を宣言し、選挙に突入します。

ギリギリまで任期を待って解散すると、追い込まれて解散した感が残ってしまいますので、1年くらい前(2017年の終わり)、遅くとも任期満了の半年前に解散をしたいと政権運営側は思うものでしょう。

 

ここから考えられるシナリオは2つあります。

安倍信三首相が退陣して、ポスト安倍として誰かが総理大臣となってから解散をするか、それとも安倍信三首相のまま解散をするかです。

 

ポスト安倍として考えられる筆頭は麻生太郎副首相で、その次が石破茂氏と言われています。

最近、この風を読んで石破茂氏は自民党内での支持を集めようと鼻息荒く首相を批判して来ています。

麻生太郎氏は党内の地盤固めを進めているようです。

その他にも名前が挙がっていますが、他の候補はどれも小粒ですので実質的にポスト安倍はこの2人に絞られています。

 

ただし、安倍首相が簡単に降りるかというと、降りない可能性の方が今のところ高いと言えるでしょう。

となると、安倍首相のまま解散を今年か来年に打って出るシナリオも考えておかなければいけません。

都議選に負けた後に解散するのは「ヤケクソになったか」と思われるので、そんな戦略は打ちづらいでしょうが、今回自民党が負けたのは東京の地域政党に負けたのであって、民進党や共産党に負けたわけではありません。

それを証拠に、民進党は都議選議席数を減らしています。

 

都民ネットが国民ネットに代わって国政に参加してくるといった報道をするメディアが一部ありますが、実績もまだなく地盤すら固まっていない都民ネットが国策に参入するわけがありません。

何をしたい政党かわからない政党が、地方で支持されるわけがありません(大阪維新の会が東北や北海道など近畿地方以外で支持されないのと同じです)。

そもそも小池都知事は元々自民党の人です。

自分のやりたいことを邪魔しなければ自民党とは持ちつ持たれつでやっていこうと思っている人(いうならば自民党の別同部隊で喧嘩しているように見せながら、折り合いを見つけていくタイプの人)ですから、国政に戻って総理大臣を狙う野心など抱いていません。

 

そうなると、安倍信三首相が今年中に解散を決めたとしても、今回の都民ネットの様に反自民と浮動票を受け皿にできる政党が現れる可能性は極めて低いです。

そのため、大勝はできないにしてもそこまで議席数は減ることは考えにくいでしょう。

特に民主党政権時代の2012年6月ごろ、民主党の失政により日経平均株価は8,000円手前まで落ちるほど景気が悪く、当時の就職に苦労した人や失職した人の野党への恨みは若い層ほど残っています。

 

さらに、安倍政権には株価が上昇して中小企業への波及はまだまだと言われながらもそれなりの恩恵はあります。

失業率は低く、株価が上昇したことによる年金機構の運用益といった成果があるため、都議選敗北したからといって色あせることはありません。

ポスト安倍候補につけあげられ、自民党内で安倍おろしの動きが顕在化する前に、適度な所で解散に打って出ても負けないといった見通しの方が強いのです。

解散時期は来年の早いうちが一番考えやすそうですが、早ければ今年年内の解散というのも見通しとして捨ててはいけません。

 

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4.金融市場で考えておかなければいけない事

安倍政権が倒れるか、倒れないか。

倒れた場合のポスト安倍が誰になるか。

それ自体について、金融市場はそこまで注目していません。

 

それよりも金融市場が注目しているのは、『次の日銀総裁がどんな考え方をする人になるか』です。

現在の日銀総裁は黒田東彦総裁ですが、黒田総裁は2013年4月9日から日銀総裁に着任しています。

 

多くの方は気にしていませんが、日銀総裁には5年の任期があり、つまりは来年の4月には日銀総裁の任期は切れるのです。

日銀総裁は何年間までしか出来ないということは無く、何回でも再任が可能です。

近年の日銀総裁の履歴を見ていくと、下図のようになります。

【歴代日銀総裁(名前・任期・期間)】

・森永貞一郎 1974年12月17日 - 1979年12月16日(満) 5年
・前川春雄  1979年12月17日 - 1984年12月16日(満) 5年
・澄田智      1984年12月17日 - 1989年12月16日(満) 5年
・三重野康     1989年12月17日 - 1994年12月16日(満) 5年
・松下康雄     1994年12月17日 - 1998年3月20日  (願) 約3年3か月
・速水優         1998年3月20日  - 2003年3月19日  (満) 5年
・福井俊彦   2003年3月20日  - 2008年3月19日  (満) 5年
・白川方明  (2008年3月20日  - 2008年4月9日)[28]  
  2008年4月9日 - 2013年3月19日(願) 約5年
・黒田東彦      2013年3月20日 - 2013年4月8日(満) 現役
  2013年4月9日 – 現在4年4か月

※福井―白川総裁交代の際は政権交代の末期で政争の道具にされてスムーズに交代できなく、白川-黒田総裁への交代の際は政権交代がなされたので少しでも早く総裁交代したほうがいいだろうと白川総裁が依願辞職したため、5年の満期を満了していません。

 

ここで注目したいのは、近年5年を大きく超えて10年間日銀総裁を務めた人は登場していない点です。

それどころか、戦前までさかのぼっても5年以上日銀総裁を務めた人は稀で、黒田総裁が任期満了を迎える来年4月に再任される可能性は極めて低いと考えてしまいます。

安倍信三首相の後ろ盾があって日銀総裁なった黒田総裁ですから、安倍政権が退任となればただでさえ低い再任の目は完全につぶれると言えるでしょう。

そうなると、自民党総裁が変わる事によって来年の任期満了を迎える4月に日銀総裁も変わることを考えておかなければいけません。

 

5.日銀総裁が変われば、政策の大幅変更も

日銀総裁が変わった場合、なぜ注意しなければいけないのかというと、現在の金融市場は日銀のウェイトが大半を占めているからです。

 

現在、日本銀行は「国債、社債、株式(ETF)、REIT」などを大量に購入しています。

現在の日銀政策を簡単に言うと、以下のようになっています。

  • ①低金利が続くように調整しつつ国債を購入
  • ②日銀当座預金の一部にマイナスのペナルティ金利(マイナス金利)
  • ③国債だけでなく社債(2.2兆)、CP(3.2兆)の残高を維持
  • ④ETFの保有残高を年間6兆円増加するペースで購入する、J-REITは年間900億円


次の日銀総裁が仮に安倍政権が倒れて、次の日銀総裁が黒田総裁と違う考え方をした人になるのなら、今の日銀政策を停止していくことも考えられるでしょう。

その場合①と②を直ぐにやめてしまうと国債金利の急騰を招きかねませんので、すぐには手を付けないとして、一番止めやすいのは④のETFとJ-REITの買い入れです。

 

現在は年間6兆円、つまり月間で平均5000億円のETFの買い入れを行っており、それをずっと継続し続ける政策となっています。

もし仮にこの政策が止まってしまった場合、株式市場の大きな買い手がいなくなります。

その場合、外国人投資家の売りを伴って、株式市場は大きく下がる可能性があるため、注意しなければいけないのです。

 

6.もし安倍政権が倒れたら

もし仮に安倍内閣が交代すると、次の筆頭は麻生太郎氏になります。

麻生太郎氏はかなりの経済通ですので、現在の日銀政策は短期的にはいいが長期的には好ましくないと考えている可能性があります。

麻生太郎氏が内閣総理大臣になった場合は、日銀総裁に今の政策を改めていく総裁に変えていく可能性が高まるでしょう。

そうなれば金融市場の混乱は避けられません。

日々のニュースで安倍内閣交代かと言われていますが、安倍内閣の交代がなされた場合にどの様なことが起こり、金融政策はどうなるのかを、一歩先を読みつつ動向には注意を払っておくといいでしょう。

 

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まとめ

  • ・都議選自民党大敗、安倍政権の足元を揺るがす事態に
  • ・今年終わり~来年前半には衆院解散の可能性がある
  • ・来年4月は日銀総裁も任期満了を迎え、安倍内閣以外だと金融政策変更の可能性が高い
  • ・金融政策が変更される可能性を見極め、一歩先行く投資行動を

著者:先ず隗より始めよ

現役金融マン。証券アナリストの資格あり。ちょっとマニアックな金融知識やニュースをわかりやすく書いていきます。

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