株主優待のお得な銘柄も会社を良く分析してから購入しよう!!(イオン編)

株式運用を行う魅力の1つに「株主優待」の制度があります。
株主になっていれば、その企業から年に数回その会社の製品やお食事時券、または商品券(Quoカードなど)といったものがもらえるお得な制度です。
株主優待を目的にして、株式を保有しているという方も多いと思います。
 
しかし、株主優待の魅力的な企業は個人投資家の人気・購入意欲が強く、企業本来の実力から予測される株価から大きく乖離しているということもあります。
 

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こういった場合に優待内容が変更されるといったことがあると、株価が大きく減少する可能性も考えられます。
せっかく株主優待で得をしても、肝心な株価が下がってしまって、売却すると大きな損を出たなんてことになると困りますよね。
今回は、特に個人投資家から人気の高い「イオン」の株主優待のご紹介と、企業分析をしていきます。
 

そもそもイオンってどんな会社?

言わずと知れた、小売業界の大手企業です。
「イオン」や「マックスバリュ」などのブランド名で展開されるスーパーは誰もが知るところでしょう。
同社のホームページで公表されている情報によると、2016/2月末時点で13ヵ国に渡って事業を展開しており、店舗数ではGMSと呼ばれる総合スーパー625店舗、モール型のSC数で274モール、グループの従業員数は52万人にのぼります。
そして営業収益(売上高)は8兆2千億円を計上しています。
まさしく日本を代表する企業の一角と言えるでしょう。
 
そして、既に単なる小売事業だけでは止まらず、不動産開発などのディベロッパー事業や薬局などのドラッグ事業、イオンフィナンシャルを代表とする総合金融事業まで幅広く手掛けています。
 
さらに、こちらも有名なスーパーである「ダイエー」を運営する㈱ダイエーを2015年1月に完全子会社化しました。
現在、ダイエーはイオングループの一員となっています。
 

株主はお買い物がお得になる!?

イオンの株主優待制度は非常にお得であるため、株主優待を狙った個人投資家にはとても人気です。
まだ、イオンの優待制度をご存知無い方のために、どれだけお得な優待制度なのかをご紹介しましょう。
 
イオンの株主優待制度は、100株以上を保有すると発行してもらえる「オーナーズカード」です。
このカードを保有していると、イオンでのお買い物時に非常にお得な優遇が受けられるのです。
 
例えば、お買い物時に、レジでオーナーズカードを提示すると、お買い物合計額から3%を割引してもらえます。(※割引方法は半年毎にキャッシュバック)。
なお、割引額は100株以上500株未満を保有していると3%ですが、500株以上1,000株未満になると4%、1,000株以上3,000株未満で5%、3,000株以上になると7%の割引が受けられます。
3,000株以上というと、500万円以上の投資(2017年6月26日終値ベース)が必要となりますので、コストパフォーマンスから考えると100株の保有で、3%の優遇が受けられれば十分でしょう。
 
さらに、イオンだけでなく、その他の専門店(例えば、イオンペットや未来屋書店などのモール内の店舗)でも、キャッシュバックなどのサービスが受けられます。
ただし、店舗毎にご利用可能な店舗と、そうでないところがあるので事前のご確認が必要です。
 

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お得なのはそれだけではありません。
このオーナーズカードによる割引は、その他の割引と併用できます。
イオンでは毎月20日と30日に「お客さま感謝デー」として、5%オフとなる日を設けています。
その日にも、この「オーナーズカード」は利用できます。
つまり、合わせて8%もの割引を受けることができるのです。
 
また、イオンではネットスーパーとしてインターネット注文による配達のサービスも扱っていますが、こちらでもオーナーズカードの利用が可能です。
そのため、必ずしもご近所になくてもイオンの配達可能エリアに入っていれば、オーナーズカードは有効活用できるのです。
 
その他、オーナーズカードによる割引を受けても、WAONポイントはもちろん付加されますので、オーナーズカードを使用することで失われるメリットというのは特にないようです。
 

株主優待を活用して運用利回りがUP

この3%割引は、投資利回りから考えてもお得です。
2017年6月26日のイオン株式の終値は1,707.5円でしたので、100株保有するためには、170,750円の株式を購入する必要があります(手数料等考慮しません)。
 
一方で、イオンでの買い物を日常的に行う必要がある方であれば、買い物する金額は結構大きくなります。
食品や日常品などで毎月5万円の買い物をしたとして、年間で60万円になりますので、3%となると1.8万円がキャッシュバックされます。
つまり、約17万円の投資に対して1.8万円のリターンですから、配当や株価の増減を除いて、年間10%以上の利回りが実現できることになります。
 
ご近所にイオンがあって普段使いする方にとってみれば、年間10%の利回りが実現できるのですから魅力的ですよね。
 

店舗にお買い物にいくとラウンジが利用可能

さらに、このオーナーズカードの特典として、店舗でのラウンジサービスを利用することが可能です(ラウンジ設置店舗のみ)。
 
イオンの店舗では、一定の条件を満たした方が利用できるラウンジを設定している店舗が数多くあります。
オーナーズカードもその1つです。
ラウンジでは、フリードリンクや試供品のお菓子を無料で提供してもらえます。
いずれもトップバリュの商品となりますが、飲み物はファミリーレストランのドリンクバー同様のラインナップで利用することが可能です。
オーナーズカード1枚の保有で4名までの利用が可能ですから、ご家族と一緒でも利用できるのが大変便利です。
 
店舗にもよりますが、ラウンジは店舗の奥深くに設置されていることが多いです。
ラウンジの存在を知らない方からすると、なぜ一部の客のみがこういった場所に出入りしているのか不思議に思ってしまうようなスペースです。
ゆったりとした奇麗なラウンジですので、喫茶店などを使わなくても十分に満足できるレベルです。
オーナーズカードを保有していることの特別感を味わうことができます。
ただし店舗によっては、1日の利用回数やご利用時間に制限があることもありますので注意が必要です。
 

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配当金も受け取れる

もちろん通常の企業と同様に配当金も受領できます。
2017年2月期の決算短信によれば、同期の株主配当は1株あたり30円となっています。
100株の保有であれば、3,000円(税金考慮前)となります。
税率を20%として計算しても、2,400円が受領できますので、配当利回りはおおよそ1.4%(2,400円÷170,750円)ということになります。
先ほどのオーナーズカードによるキャッシュバックと比較するとたいしたことはありませんが、せっかくなら配当もしっかりと受け取りたいですよね。
配当として利回り1.4%というのは、やや低めの水準だと言えるでしょう。
 

業績と計画をしっかりと確認

以上の説明で、イオンの株主優待がいかにお得かということをおわかりいただけたでしょう。
これだけお得な特典があれば、ぜひ持ちたいと思われる方も少なくないですよね。
 
しかしながら、株主優待を目当てとして株式を保有する場合、保有期間は長期化する可能性も高くなります。
また、株主優待制度が魅力的な企業のなかには、会社の業績が悪化して機関投資家からの評価が悪化した際に、株価の下落を抑制することを目的として優待制度を充実させている企業もあります。
つまり、個人投資家の保有意欲を高めることで、株価の下落を阻止しようとしているのです。
 
会社の実態が悪いのであれば、優待を楽しみに持っている間に、株価が大幅下落してしまい、お得な優待を得ても意味がなくなる可能性も出てきます。
安心して優待生活を送るためにも、しっかりと会社の状況を理解したうえで投資を行いましょう。
 
それでは、2017年2月期の有価証券報告書を主な材料として企業分析していきましょう。
 
まず、同社の2017年2月期の営業収益は8.2兆円で、前期から100.4%の増加となっています。
営業利益も1,847億円で、前年から104.4%の増加となっています。
ここまでは増収増益を示しており、売上高は微増ながらも成長が窺える内容となっています。
売上高営業利益率は2.3%(=1,847億円÷8.2兆円)ですので、やや低目という感じはします。
しかし、低価格での販売を強みとしている小売業でもあるため、仕方のないところでしょう。
 
なお、2018年2月期の予想では、売上高が899億円、営業利益が102億円と、さらなる成長を見込んでいます。
増収増益を実現するための主な施策としては、完全子会社化したダイエー店舗の収益力を高めること(イオン店舗との重複事業の整理や、共同販促、商品構成の変更など)に取り組むようです。
 
その他については、赤字子会社の方向付けや新規事業の確立となっていますので、収益力の劣る子会社の整理や有力な新規事業への投資といった資産配分に取り組むようです。
ありがちな経営計画であり、実際にどれだけの効果があるのかということはわかりませんが、ダイエーの店舗の収益力が劣ってイオンの既存店舗並みになれば、それなりに計画数値の実現になるのだろうということは理解できます。
不採算の企業を子会社化する場合には、同様に買収先の店舗の底上げを行うことが重要であるため、妥当な計画だと考えられるでしょう。
 

ROEから総合的に評価

まず、企業分析で重要視されることの多いROEから見てみましょう。
イオンの連結ベースでのROE(自己資本利益率)は2017年2月期で1.0%です。
前年が0.5%で、2期前が3.6%となっています。
この数値は、高い値ほど良いとされています。
東京証券取引所の一部上場企業の平均は8.6%(日本取引所グループホームページ)で、イオンの同業者である小売業だけを取ってみても7.4%ですので、イオンの実績はかなり低い数値であると言えます。
 
株主から集めた資金(株主資本)を活用して、たった1%の収益しか生み出していないということは、株主の投資に対する期待利回りも1%ということになります。
株式に投資するには、やや利回りが低いと感じられる水準です。
なお、前述いたしましたが、イオンの配当利回りは1.4%ですので、稼いだ収益以上に配当を行っている(資産を取り崩して原資としている)可能性も考えられます。
 
ROEの数値が低いということは、株主から集めた資金を利益を生み出すことに上手に活用できていないと言うことができます。
非常に規模の大きな資産を保有しながら、その資産を営業に上手く活かせていないというのは残念なところです。
 

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1株あたり利益は成長しているか?

次はEPS(1株あたり当期純利益)とBPS(1株あたり純資産額)を見てみましょう。
2017年2月期のEPSは13.44円です。
前年が7.19円で、前々年は50.22円です。
もう少しさかのぼった2013年2月期では、95.49円となっています。
残念ながら、EPSは成長どころから低下しているようです。
特に前年では当期純利益が大きく低下し、EPSも大幅減となっています。
 
EPSが13.44円であるのに対して同社の年間の配当は30円ですので、やはり実際の1年間の収益力を大きく超える配当を実施しているようです。
同社のホームページで確認したところ、2017年2月期の配当性向は223.2%となっています。
配当性向が100%であれば、その期に稼いだ収益の全額を配当として株主に還元する状態です。
223.2%というのは配当原資を稼いでいないにも関わらず、過去の蓄積を取り崩して配当している状況です。
 
配当性向が高すぎる要因として考えられるのは、主に以下の3点です。
  • ①利益が早期に回復する可能性が高いと思っている(一時的な減益)
  • ②配当を減額すると、株価が下がるなど株主の反応を心配して下げられない
  • ③成長分野がなく、投資に回す必要がないので保有資金を株主に返還
 
減益の影響が2年継続していることから、恐らく①の可能性は低いと考えられます。
収益力を高めるための施策を行ってはいますが、短期的に大幅な利益の拡大が実現できるかどうかは不透明な状況です。
 
そうなると、②か③の可能性が高いと思われます。
利益が減少しているにも関わらず、手厚い株主優待を維持していることなどから考えると、株主が離れていかないことを目的とした②が有力だと考えられます。
個人投資家の株式離れが起こると当社株価が大きく下がってしまう可能性があるので、株主を離れていかないようにするために配当を維持しているものと考えられます。
 
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PERからは買われ過ぎの可能性が!!

なお、当社のPER(株価収益率)も確認してみましょう。
 
PERは株価÷EPSで計算できます。
PERとは、当社の株がEPSの何倍の金額で取引されているのかを示す指標です。
通常、市場の平均的な水準と比べて、成長性の高い企業であれば高い水準で購入されることが多くなり、成長が鈍化している企業であれば、市場平均よりも低い水準となることが多くなります。
 
東証1部上場企業全体の平均は20.7倍、そのうち小売業だけでは25.7倍となります。
一方で、イオンのPERを計算してみると、1,707.5円(2017年6月26日終値)÷13.44円(EPS)=127倍となり、市場の平均と比べると、非常に高くなっていることがわかります。
収益力から勘案して、買われすぎとも言えるでしょう。
 
PERがここまで高いのは、イオンの成長性への高い期待ではないでしょう。
株主優待制度のおかげで、細かい経営指標を気にしない個人投資家が株式を購入し、保有しているためだと思われます。
 
当社の株価は実際の収益力に比べて、過大な金額で取引されているようです。
株主優待目当ての個人投資家によって現在の株価は維持されており、株主優待制度が変更されるなどの要因で魅力が薄れてしまうと、大幅な株価下落となる可能性も考えられます。
また、当期純利益が減少しているにも関わらず、減配することが難しくなっていることが不安要素だと言えるでしょう。
 

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PBRは東証一部の平均程度

当社のPBR(株価純資産倍率)についても合わせて見てみましょう。
PBRは、1株あたりの純資産額(BPS)に対して、現在の株価が何倍まで購入されているのかを図る指標です。 

BPSは、貸借対照表のなかで、株主に帰属すると考えられる株主資本を発行済み株式総数で除した数値です。
株主資本は、もし現時点で企業が営業を辞めて清算するとなった場合に、株主が受け取ることが可能であると期待される金額です。
BPSはその金額を発行済み株式総数で除して、1株あたりの金額を算出したものとなります。
なお、有価証券報告書によると、イオンの2017年2月期末時点のBPSは1,305円となっています。
 
東証一部上場企業全体でのPBRの平均は1.2倍、小売業だけであれば1.9倍となります。
イオンのPBRは1.3倍(1,707.5円÷1,305円(2017年2月期末時点のBPS))ですので、業界平均と比べて、特に遜色の無い水準であると考えられます。
つまり、当社の株価は、株主資本金の観点から考えると、妥当な水準で売買されていると言えるでしょう。
 
株式運用を行う投資家の観点から言えば、PBRは低い方が投資しやすいと言えます。
株主にとって投資を行ううえでの不安なことの1つは、企業のデフォルトでしょう。
もし企業がデフォルトすると、投資資金が返ってこなくなる可能性もあります。

PBRが1倍以下の場合、もし企業がデフォルトして清算されるとなった場合でも、最終的に企業の資産を処分した結果、株主に投資資金が返還される状態であることを示しています。
そのため、PBRが低いほうがリスクの低い投資であると言えます。
※ただし、あくまで計算上の数値です。実際に清算されるとなった場合、資産の価値が低下したり、簿外負債が判明したりするなど、実際の受け取り可能額は減少する可能性があります。

以上の点を整理すると、イオンの特徴として、株主資本として蓄積された額は十分にあり、投資の安全性は高い(デフォルト懸念がほとんど無い)企業であると言うことができます。
一方で、その資産規模を有効に活用して、利益を稼ぐという点での指標は低く、収益力に問題があると考えられます。
 

購入する際の注意点

イオン株式のように優待制度がお得な株式は、権利落ち日前後で株価が大きく変動することがよくあります。
有利な優待制度目当てで株式を購入しようという個人投資家が多く存在することが大きな要因となっています。
権利落ち日前に購入希望者が増加し、権利落ち後に売却が集中するということが多々あります。
 
こういった流れに同じように乗っていては、せっかく優待制度を得ることができても、株式の売却損でせっかくの利益を台無しにしてしまう可能性もあります。
お目当ての株式(優待制度)が決まっているのであれば、この流れとは逆の方法で取得されることがおすすめです。
つまり、権利落ち後に株価が大きく下落したタイミングで株式を取得し、そこから長期的に持ち続けることです。
イオンの株主優待制度は半年に1回付与されますので、権利落ち後の取得でもすぐに次の機会はやってきます。
 
また、権利落ち日前後の数日のみ株式を保有するということも可能ではありますが、売却損が発生する懸念もあり、せっかくの配当や株主優待のメリットが薄れてしまいますので、極力さけることをお勧めします。
 

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まとめ

イオンの株主優待は、個人投資家にとって非常に魅力のあるものです。
特に、お住まいの地域でイオン店舗をご利用可能であれば、メリットの利回り換算は10%以上となることもあります(お買い物の金額次第です)。
 
イオンの財務内容や経営指標から見た経営状況は、効率性や収益力(ROE, EPSなど)が低いことが弱みとなっています。
PERが127倍であり、収益力から勘案すると、現在の株価は大幅な買われ過ぎと言えます。
 
一方で、PBRといった観点から言えば業界平均と同水準程度であり、1株あたり株主資本から勘案すると、現在の株価も妥当な水準であると言えるでしょう。
つまり、保有する資金が大きいことから安全性は高いものの、収益性・効率性に弱点があると考えられます。
 
デフォルトの懸念は低いと考えられますが、株主優待の制度内容が変更(仮にサービスの内容が悪化するなど)されるなどといったことが起こると、株価は大きく減少する可能性があります。
優待制度が維持される前提として、イオン店舗を利用される投資家の方には非常にメリットがあるので、ぜひポートフォリオに加えられることをお勧めいたします。

著者:DonDon

元銀行員で、投資銀行や会計コンサルにも勤務。資産運用から、新規融資、そして、不良債権処理まで担当。ファイナンシャルプランナー、証券アナリスト、中小企業診断士、宅建などの資格も保有。

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