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債券の格付けとは何だろう?誰がどのように決めているか徹底解説!

債券に投資する際に、その債券の信用力を示す指標となるものが、債券の格付けです。

 

一般的に格付けが高い債券は信用力が高く、デフォルト(債務不履行)に陥る可能性が低いです。

反対に、格付けの低い債券は信用力が低く、デフォルトの可能性が高いと考えられます。

 

この格付けですが、何を基準にして、誰が決めているのでしょうか。

債券への投資を検討する際には必ず確認しておきたい債券の格付けについて、わかりやすくご説明します。

 

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債券の格付けとは?

そもそも債券とは、国や企業が投資家から資金を調達する際の借用書のようなもので、元金の支払い期日(償還日)と元金のかかる利息が事前に約束されています。

債券の格付けは、こうした債券の元利金の支払い確実性についての第三者による意見・評価を意味します。

 

一般的に債券の格付けと言う際には、発行体格付けと個別債券の格付けの二つを指しています。

発行体格付けとは、債券を発行する主体である発行体の信用力に関わる総合的な意見です。

日本国債だったら日本政府の、事業債だったら事業会社の元利金支払いの確実性について評価したものとなります。

一方で、個別債券の格付けとは個別債券の信用力に関わる意見です。

 

個別債券の格付けは発行体格付けをベースにして付けられるため、基本的に両者は同じものになります。

ただし、比較的高い利率が個人投資家に魅力となっている劣後債などには気を付けておくべきポイントがあります。

万が一、発行体がデフォルトした際に債務の支払いの優先順位が劣後するオプションがつけられている場合には、債券の元利金支払いの確実性が下がるため個別債券の格付けが発行体格付けよりも低くなっています。

よって、債券投資する際には債券の発行体格付けとともに個別債券の格付けについてきちんと把握しておくことをおすすめします。

 

格付け機関について

f:id:Reinoza888:20170330144706j:plain 債券に格付けを付与する格付け機関は一社だけでなく、複数社あります。

債券の格付けは基本的に発行体から格付け機関に依頼する形で付与されるため、一つの債券に対して複数社から格付けが付与されているケースもあれば、一社のみの場合もあるなどまちまちです。

格付け機関がそれぞれの方針に基づいて独自に格付けの付与をしているため、同じ債券でも格付け機関によって格付けが違うということが度々起こります。

 

国内系の格付け機関では、格付投資情報センター(R&I)や日本格付研究所(JCR)が代表的です。

二機関とも国内外の発行体に格付けを付与しており、日本では中小企業も含めて幅広くサービスを展開しています。

JCRは比較的高い格付けを付与することで知られています。

 

一方で、海外の格付け機関は米系のスタンダード&プアーズ(S&P)や、同じく米系のムーディーズが代表的です。

また、米英系のフィッチも米国系の二社に続く代表的な格付け機関です。

米系の二機関は最大手なだけあり、世界各国のあらゆる機関に格付けの付与を行なっています。

フィッチはヨーロッパの機関に強いという特徴を持ちます。

海外の格付け機関は日系の格付けよりも比較的厳しい格付けを行うことで知られています。

 

格付け方法 〜発行体格付け〜

債券の格付けですが、格付けの方法を格付け機関のホームページ等で確認することができます。

 

例えばR&Iでは事業債の格付けを付与するに当たって、発行体となる事業会社が経営破綻などを理由に債務不履行となる可能性がないかを事業リスク・財務リスクの両面から分析しているようです。

事業リスク分析では、今後想定される金融環境のもとでその事業会社のキャッシュフローや資産価値の変化を分析し、健全性を維持できる事業かどうかを判断しています。

また財務リスク分析では、財務指標や各企業の財務運営方針から財務の健全性を分析しています。

 

なお、発行体が事業会社ではない場合も債務不履行のリスクを分析すると言う点では同じです。

しかし分析において重視するポイントが、事業会社のそれとはやや異なることに注意です。

例えばソブリン格付け、つまり日本政府やアメリカ政府に向けた格付けでは徴税システムや公共投資、政策運営能力まで幅広く分析しています。

また、公共性の高い事業を行う政府系機関への格付けの場合は事業や財務の状況に加えて、政策上の位置付けを分析することで、いざと言う時に政府が支援するかどうかを重視しています。

 

格付け方法 〜個別債券の格付け〜

このような分析に基づく発行体格付けをもとに、個別の債券に組み込まれるオプションを考慮して個別の債券に格付けが付与されることになります。

 

例えば、前述もしたように劣後債は債務の支払いが優先される優先社債(シニア債)と比較して格付けは低くなりますし、担保付き債券は無担保の債券よりも格付けが高くなることがあります。

 

例として、損保ジャパン日本興亜の債券を見てみましょう。

同社は2016年8月8日に初めて劣後特約付の無担保社債を個人投資家向けに計2000億円発行しました。

この債券の格付はAA-が付与され、損保ジャパン日本興亜の長期発行体格付けであるAA+より低い格付けとなりました。

この格付けを付与したJCRによると、「劣後性と繰延条項を勘案し、長期発行体格付とのノッチ差を決定した。」とのことです。

 

発行体格付けと個別格付けは混乱することが多いですが、このように一つの発行体が発行する債券について比較しながら丁寧にみていくと、その仕組みがわかりやすくなります。

 

格付けの定義

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それでは、次に債券の格付けに対する意見をR&Iの基準を参考にしてみていきましょう。

下記の表は、同じものがR&Iのサイトでも確認することができます。

長期個別債務格付(引用元:https://www.r-i.co.jp/jpn/cfp/about/definition/index.html

 

AAA 信用力は最も高く、多くの優れた要素がある。
AA 信用力はきわめて高く、優れた要素がある。
A 信用力は高く、部分的に優れた要素がある。
BBB 信用力は十分であるが、将来環境が大きく変化する場合、注意すべき要素がある。
BB 信用力は当面問題ないが、将来環境が変化する場合、十分注意すべき要素がある。
B 信用力に問題があり、絶えず注意すべき要素がある。
CCC 債務不履行に陥っているか、またはその懸念が強い。債務不履行に陥った債権は回収が十分には見込めない可能性がある。
CC 債務不履行に陥っているか、またはその懸念が極めて強い。債務不履行に陥った債権は回収がある程度しか見込めない。
C 債務不履行に陥っており、債権の回収もほとんど見込めない。

 

それぞれの格付けについて、プラス・マイナスが付与されることがあります。

上位の格付けに近いものにプラスが、下位の格付けに近いものにマイナスがつけられます。

 

また、上の表のうちAAAからBBBまでの格付けを「投資適格格付け」、BB以下の格付けを「投機的格付け」といいます。

投機的格付けの債券は、債務不履行のリスクが高いため、基本的に債券投資する際にはAAAからBBBの投資適格格付けが付与された債券への投資が推奨されています。

ただし、BB以下の格付けが付与された債券もジャンク債、ハイイールド債という名で市場に広く流通しており、こうした債券を集めた投資信託などを通して投資をすることが可能です。

こうした低格付けの債券はリスクも高い分、リターンも高くなるためベテランの投資家を中心に大変な人気となっているのも事実です。

 

日本国債の格下げで起こったこと

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ソブリン格付けは、国の発行する債券(国債)に付与される格付けを指します。

基本的に、企業の格付けはその国の格付けを上回ることができません。

これは「ソブリンシーリング」という考え方で、どんなに財務状況が優良な企業であっても、その国の格付けが上限となってしまいます。

 

例として、2016年6月にR&Iが日本ソブリンの格付の方向性をAA+ (安定的)からAA+(ネガティブ)に変更した時のことを見てみましょう。

この変更は増税延期を受けた「財政再建の先行き不透明感が高まった」ことが理由となっています。

これを受けて、翌日6月7日には日本政府に近い22の政府系機関及び、国内の事業割合が高い東京海上ホールディングス傘下の三社の格付けの方向性が安定的からネガティブに変更されました。

 

今回のR&Iによる日本ソブリンの格付けの方向性変更に伴う債券への大きな影響は観測されませんでしたが、格下げとなれば大手の機関投資家のうち保有有価証券のリスク管理が厳格な投資家が調整の売りを出す可能性もあります。

そうなれば債券市場が大きく変動してしまうため、ソブリン格付けの動向は非常に重要なのです。

 

格付けは成績表ではない

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債券投資を行う際に、債券の格付けを確認して元利金がしっかり支払われる可能性があるかを調査することはとても重要です。

だからと言って、格付けは債券の良し悪しを決める指標ではありません。

 

投資を行う際は、リスクとリターンは表裏一体です。

格付けが高い債券は金利が低くなりリターンは少ないのがマーケットのセオリーです。

逆に、格付けが低い債券ほど金利は高くリターンも高くなります。

よって、投資の目的と保有する期間をしっかりと考えた上でリスクとリターンのバランスをみて投資対象を決定することが重要です。

著者:Nektaria

元投資銀行で資金調達を担当、現在は海外在住です。幅広い角度からお金にまつわる情報を発信していきます。

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