社会に貢献できるESG投資とは?仕組みと活用方法を基礎から徹底解説!

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皆さんはESG投資についてご存じでしょうか。
ESG投資の市場規模は世界全体では約7300兆円(約62兆ドル)とも言われていますが、日本の個人投資家の関心はまだ盛り上がっていないようです。

ただ世界の潮流としては確実に市場規模が拡大する方向にありますので、この流れに乗って投資メリットを追求していくことは、ひとつの大きな投資方針となり得ます。
そこで、ESG投資の基本的な仕組みや活用方法をご紹介していきます。

ESG投資の基本的な仕組み

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ESGとは、
E...Environment(環境)
S...Social(社会)
G...Governance(企業統治)
の頭文字です。

それぞれの単語から意味を汲み取ってみましょう。
Eは、クリーンエネルギーの使用や二酸化炭素排出量を削減するなどの環境を配慮した対策への期待を意味します。

Sには、女性の社会進出だけでなく、仕事と生活を無理なく両立させるワークライフバランスへの取り組みを望む声が含まれています。

Gには、資本の運用効率を高める取り組みや、企業の体制管理の見直し、情報の積極的開示などを充実させて欲しいという要望が含まれています。

その3要素を指数化して、その指数に基づいて企業を分析します。
つまり、社会にポジティブな影響をもたらす企業に投資をするのが、ESG投資なのです。
このESG投資は、「将来的な企業価値を見通すには、収益率のような数字ではなく『社会への貢献度』に着目することが重要である」という考え方とも言い換えることができます。

この考え方には、年金スポンサーや資産運用会社など、世界中の機関投資家が新しいブームとして注目しています。
ハーバード大学大学院のジェームズ・ギフォード上席研究員は、ESG投資についてこう分析しています。

「投資家の目的である収益と社会の要請は関連が薄いように見えて、実は両立しているのです。」

たとえば、コンビニエンスストア大手であるローソンなどは、社会と共生することを理念に掲げ、東日本大震災後は積極的に被災地を支援したことで、インフラとしての企業価値を高めることに成功し、業績も大きく拡大しました。

また、自動車業界各社の将来を左右するのは、エコカーなどの環境対応車であると言われています。
企業の将来を占うにあたり、ESG投資の考え方は重要な要素であると言っても間違いないでしょう。

社会問題解決と企業の中長期的利益を両立する手法として、ESG投資は欧米で大きな広がりを見せています。
そのきっかけとなったのは、2006年に国連のアナン事務総長(当時)がESG推進のため提唱した「責任投資原則(PRI)」です。

PRIに署名した機関投資家は世界全体で1500にのぼり、運用資産も約7300兆円に達しました(2016年時点)。

SRIとの違いは?

SRI (Socially Responsible Investment: 社会的責任投資) とはそもそも、武器やギャンブルなどの反社会的な産業に関わる企業には投資をしないとする運動が1920年代のアメリカで起こったのが始まりといわれています。

2000年代になると、社会問題に積極的に取り組んだ企業に対して投資を行うようになりました。その後、それがESG投資の考え方のもとになり世界中で広まっていきました。

両者は基本的には同じとされています。
しかし、SRIは企業を評価する視点が社会的倫理観に基づくものであるのに対して、ESGは「環境や社会を考慮することが企業価値を高めることに繋がる」としています。

また、欧州のESG投資家の中には、自らの資産運用によって、企業価値だけではなく、市場や経済の価値を高めようという考えをもつ人が多いようです。

ESG投資の基準となる指数の仕組み

格付けはAAA(トリプルA)からCCC(トリプルC)までの7段階になります。
Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3項目をそれぞれ0~10に数値化して、産業ごとの重要度に応じて傾斜をつけて加重平均する手法です。

この格付けを運用銘柄選定の参考にしている運用会社もあります。
日本でも国内外の企業を対象に、ESGの取り組みを格付けしている格付企業があります。

日本のESGブームが高まりつつあるのを受け、機関投資家向けのESG情報評価機関「Sustainalytics(サスティナリティックス)」も去年東京に進出しました。

世界的に見ると、スイスの運用会社「ロベコサム」の評価が有名です。
ロベコサムは世界3400社以上を対象に、ESGに関するアンケートを毎年実施しています。

2016年の同社年次報告では、花王(4452)や富士通(6702)、ベネッセホールディングス(9783)などが業界のリーダーと判定されました。

こういった企業全体を指数化して評価する手法に加えて、個別の運用ファンド毎に指数を設定する動きも広がっています。

2016年の米国市場で、上場投資信託(ETF)「SPDR SSGAジェンダー・ダイバーシティー・インデックス」が新規上場し、大きな話題となりました。
これは、女性の取締役や役員の比率が高い企業に投資するファンドです。

それ以外でも二酸化炭素の排出量を指数化した商品も人気です。
日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もESG投資に乗り出すべく、PRIに署名しています。

この署名によって、日本国内でのESG推進の動きは加速すると予想されます。
GPIFが投資開始を予定する日本株の新指数は、女性活用や地球温暖化防止などの特定テーマに絞らず、ESGを総合的に考慮した指数になる予定です。

アサヒグループホールディングスや日産などはESG銘柄として評価が高いですし、上位に選定されるかもしれませんね。

ESG分析の手がかりとなる統合報告書とは

アナリストでもない個人投資家がESG分析をするというのは、なかなか難しいはずです。
そんなESGを分析する手がかりとして、「統合報告書」という資料を利用するのがおすすめです。

統合報告書とは、決算数字などの財務情報に加え、社会貢献や環境経営などへの取り組みを記した非財務情報を一冊にまとめたものです。

以前は別々の情報としてそれぞれ異なる報告書で提供されていました。
しかし、ESG情報が注目されてきていることもあり、経営や業績が社会や環境に与える影響についての情報を求める動きが強くなり、統合報告書が作られるようになりました。

日本では、年1回発行される「アニュアルリポート」で非財務情報が開示されることが多くなっています。

もしかすると、統合報告書を見られない企業が気になる場合もあるでしょう。
そのようなケースに対して、コモンズの伊井社長はこうアドバイスしています。

「もし統合報告書を出していない企業であれば、まずはホームページの企業理念やトップの考えを読み込むことが出発点となります。」

まずは自分でその企業のホームページを訪れてみましょう。
日本は2015年に設定された企業統治指針のなかでESG情報の重要性に言及しています。

その流れを受けて、統合報告書を作成している日本企業は3年前には約150社、一昨年には約200社と増加を続けています。

環境省も今年度から「平成28年度環境情報開示基盤整備事業」の通年運用を目指した「実証運用期」を開始し、国内企業の非財務情報の開示に取り組んでいます。

この事業が本格的に展開されれば、企業のESG情報の入手や比較が簡単にできるようになるかもしれません。
個人投資家の立場から見ると、企業の価値創造の仕組みがよく分かるようになり、その企業のビジネスが持続可能かどうかを判断する手がかりとなります。

ESG投資の投資効率

ESGを考慮した投資は、高いリターンを生むことが可能なのでしょうか?
英シュローダーズが2016年、28カ国の個人投資家2万人を比較した調査では、日本の個人投資家のESG投資に対する関心は最低レベルでした。

なぜ投資家の関心が高くならなかったのでしょうか。
これは、2000年前後に個人向けに設定されたSRIファンド(社会的責任投資ファンド)やエコファンドの運用状況が芳しくなく、個人投資家に「ESG投資は儲からない」との印象が残ったことが原因とされています。

2000年当時の投資手法は大型株中心の銘柄構成でしたので、最近の精緻な指数に基づくESG投資は全く異なる投資手法と言えますが、今のところESG投資が明確に高収益を生むとは実証されていません。

ただ、長期的には損失リスクの回避につながるという実証研究や論文は数多く出ています。
GPIFなどの国内外の大手年金基金がESG投資を積極的に行う流れの中で、「ESG投資の投資効率は上昇していく方向にある」と見ている投資家は確実に増えています。

ESG投資に関する知見の蓄積や、具体的な運用事例が増えていくにつれて、今後は自然と投資効率も上昇していくことになりそうです。

ESG関連投資信託への具体的な投資手法

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ESGを取り入れた主な公募投信には、以下のようなものがあります。

損保ジャパン・グリーン・オープン

・純資産額246億円
・主な組入銘柄:NTT、三菱商事、三井住友FG、ツムラ

朝日ライフSRI社会貢献ファンド

・純資産額38億円
・主な組入銘柄:太陽HD、アークランドサービスHD、ヤフー、三菱鉛筆

女性活力日本株ファンド

・純資産額26億円
・主な組入銘柄:三菱UFJFG、NTT、富士重工業、ダイキン工業

シュローダー・アジアパシフィック・エクセレント・カンパニーズ

・純資産額74億円
・主な組入銘柄:台湾セミコンダクター、サムスン電子、テンセント

例えばこの中で、シュローダー・アジアパシフィック・エクセレント・カンパニーズは、日本を含むアジアの企業が投資対象となっています。

銘柄選別にESGの視点を採用しています。
成長性や収益力などの財務分析に加えて、環境問題に対する意識などを示す「経営の質」や、企業統治に関する「株主重視の姿勢」など5項目を重視しています。

これらのファンド以外でも、鎌倉投信の「結い2101」などのように、「社会との調和の上に発展する会社に投資し、個人投資家の資産形成と社会の持続的発展の両立を目指す」という理念のもと、以前から運用されているファンドもあります。

まとめ

本記事ではESG投資の基本的仕組みと活用方法を紹介してきました。

・ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字。
・企業業全体を指数化して評価する手法に加えて、個別の運用ファンド毎に指数を設定する動きも広がっている。
・ESG分析をする場合は、「統合報告書」という資料が参考になる。
・ESG投資の投資効率は上昇していく方向にあると見ている投資家は確実に増えている。
・今後、個人投資家が投資しやすい投資信託の設定本数も増えていく見込み。

ESG投資はまだ日本の個人投資家には広く浸透していない投資手法ですが、世界的には既に標準的な投資手法に位置付けられています。
日本でも、今後機関投資家も含めて全般的に市場の規模が拡大し、個人投資家が投資できる投資信託も増加していく方向にあります。
この大きな流れに乗って、個人投資家としてのリターン改善と、社会貢献的な企業支援の両立を図ってみてはいかがでしょうか。