子どもや孫のために株や投資信託を買うと、その利益に対する税金がゼロになる「少額投資非課税制度」が2016年から始まりました。
この制度の愛称が「ジュニアNISA(ジュニア・ニーサ)」です。
過去には、マル優や財形貯蓄など、高齢者や勤労者向けの税優遇制度はいくつかありましたが、未成年者向けの税優遇という意味では初めての制度になります。
先行したNISAに比べるとまだ新しい制度で、手続的にも複雑な印象があるため、十分に活用できている人は少ないかもしれません。
そんなジュニアNISAについて、基本的な仕組みや活用方法をご紹介します。
ジュニアNISA創設の背景
2014年に時限立法対応が終了し、株や投資信託で得た利益にかかる税率が変わりました。
それまで10%の軽減税率だったのが、約20%の本来の税率に戻ったのです。
そのタイミングで、成人限定で個人の一定投資額まで適用される「少額投資非課税制度」(NISA)が導入されました。
この流れを受けて、未成年にも対象を広げようということで、2016年からジュニアNISAが創設されています。
本質的な意味から言うと、制度創設の背景には、若年層の経済的負担の軽減、高齢者から若年層への金融資産の移転といった目的も含まれています。
デフレ経済が長期化したことで、企業の賃金上昇はなかなか進まず、日本の貯蓄ゼロ世帯は全世帯の約3割を超えました。
子育てには1人当り最低2000万円かかるとも言われており、特に教育費負担の大きい若い世代の家計が厳しい状況にあります。
一方で、日本の金融資産約1700兆円のうち、約3分の2を高齢者が保有しています。
そこで登場したのがジュニアNISAです。
子どもや孫の将来の教育資金を準備でき、結果的に世代間の金融資産移転効果も見込める制度となっています。
世代間の不均衡に対する解決策の一つとして、今もっとも注目されています。
ジュニアNISAの基本的な仕組み
具体的な手続きを見ていきましょう。
まず、証券会社や銀行、郵便局などの金融機関でジュニアNISA専用口座を開きます。
この口座で株や投資信託を購入すれば、値上がり益や配当金、投資信託の分配金に対する税金がゼロになります。
購入可能金額の上限は、年間80万円までで、最長5年間の合計400万円の元本が対象となります。
現在のところ、恒久的な制度とはなっておらず、口座開設可能期間は2016年から2023年までの8年間となっています。
ジュニアNISAの口座保有ができるのは、日本国内に住む20歳未満の未成年者で、1人1口座に限られています。
未成年者名義の口座となるため、原則として親などの親権者が代理で管理者および運用者となります。
実際に資金を提供できるのは、両親、祖父母のような直系親族のほか、親戚や知人などの第三者も含まれます。
子ども本人以外の誰かがお金を出すということは、法律的には「贈与」となりますが、ジュニアNISAの非課税枠は年間80万円ですので、贈与税のかからない年間110万円の暦年贈与の範囲内となっています。
口座の中で株や投資信託を購入する際には、1年間(1月から12月まで)で80万円の範囲で繰り返し購入できますので、1回で全額購入する必要はありません。
また、枠が消化しきれなかった場合、翌年への繰り越しはできません。
口座名義人である子どもが18歳になるまでは、非課税で払い出すことはできません。
仮に何らかの事情で、18歳未満で払い出した場合は、利益に対して通常通り約20%の課税となります。
払い出す資金の使途は自由です。
当初は教育資金への備えとして運用を開始したとしても、払い出して住宅購入に資金を充てることは、何ら問題はありません。
極端なことを言えば、介護資金などのように、結果的に子どものための資金使途でなくても構わないということです。
学資保険との比較
将来かかる子どもの教育資金に備える商品として、以前からある伝統的商品は学資保険です。
子どもの学費を準備する両親などの契約者は、月々決められた金額を保険料として支払います。
子どもが大学に入学する年齢に到達した時に、積み立てたお金が戻ってきて、入学金や学費に充てることのできる仕組みです。
途中で親などの契約者が亡くなったり、一定の障害で働けなくなったりした場合は、それ以降の保険料を払う必要はなく、満期には約束通りのお金がもらえるという保険機能が特徴です。
ジュニアNISAと学資保険を比較すると、今の低金利の環境においては、学資保険の増え方は緩やかと言わざるを得ないでしょう。
しかし、ジュニアNISA口座で株や投資信託で運用した場合は、金額が大きく増える可能性があります。
もちろん、株や投資信託は変動幅が大きいので、損失が発生する可能性もあります。
学資保険は、満期まで待てば元本保証されている商品ですので、確実に教育資金を確保することができます。
ただし、長期間にわたる運用となりますので、インフレが起きた時や学費が大幅に値上げされた場合は、増え方が少ないと結果的に目減りしてしまうというリスクもあります。
学資保険の特徴である、保障機能を重視する人も多いようです。
しかし、その一点だけを優先して判断するのではなく、他の生命保険や共済などの加入状況も考えましょう。
その上で、学資保険とジュニアNISAのどちらを選択するのか、総合的に判断するべきでしょう。
ジュニアNISAでの投資法
ジュニアNISAで購入できるのは、株や投資信託なので、比較的リスクの高い運用となります。
そして、資金使途は自由ですが、子どもの将来に備えた資金として運用をする人が多いはずです。
ですので、家族全体の金融資産のバランスを考えて、全般的なリスクが高くなり過ぎないようにコントロールしていく必要があります。
具体的には、預貯金や学資保険との組み合わせで考えることが、ひとつのバランスのとり方と言えるでしょう。
その上で、ジュニアNISAで運用する資金については、非課税のメリットを最大限生かすように、比較的大きな値上がりが期待できそうな商品を検討すると良いでしょう。
投資信託と株を比較すると、株の方が値動きが激しい特徴がありますので、株の取引きに慣れていない人はまず投資信託から始めるのも一つの考え方です。
投資信託にも、値動きの比較的少ないものから、値上がり益を積極的に狙いに行く商品まで、様々な商品群がありますので、自分のリスク許容度に合わせて選択をします。
また、投資信託であれば積立型の商品もありますので、毎月1万円などコツコツと積み立てていくこともできます。
この投資方法は、結果的に購入するタイミングを分散してリスクを抑えることにもつながります。
注意点
ジュニアNISAには満期という概念はありません。
学資保険のように18歳のタイミングで資金化するというものではありませんので、どこかのタイミングで売却して利益確定する必要があります。
どの程度値上がりしたら売却するのかという基準を、最初の段階で定めておくのが分かりやすくて良いでしょう。
配当金の受取方法の選択を誤ると、課税されてしまうというリスクがあります。
配当金の受取方法は3種類ありますが、非課税を適用するためには、証券口座に入金する「株式数比例配分方式」を指定する必要があります。
郵便局で現金受け取りとする方法や、銀行口座への振込指定では課税されてしまいますので、十分な注意が必要です。
まとめ
ジュニアNISA口座の活用方法をご紹介しました。
家族単位でよく検討して、有効に非課税枠を活用していきましょう。
・若年層の経済的負担の軽減、高齢者から若年層への金融資産移転という効果を
有する。
・購入可能金額の上限は年間80万円まで、最長5年間400万円までの元本が対象。
・学資保険との比較ではメリット・デメリット両面があり、組み合わせるのも一つの方法。
・家族単位で金融資産のバランスをコントロールしつつ、NISA利用商品を選定する。
・売却のタイミングや配当金受取方法など、ポイントを押さえて活用を図る。