どう変わる?被用者年金一元化がもたらす影響とは?

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厚生年金保険などの「被用者年金制度」が一元化されて1年が経過しました。しかしながら、いまだにこの「被用者年金の一元化」の内容で理解されていない部分も多いと思います。

今回は、この「被用者年金一元化」がどういうものなのかについて、この制度が与える影響についてお話していきます。

被用者年金制度一元化とは?

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被用者年金制度一元化とは、「厚生年金保険」「国家公務員共済制度」「地方公務員共済制度」「私立学校教職員共済制度」を「厚生年金保険」の制度にまとめることを言います。
簡単に言うと、公務員や私立学校の教職員の方が、民間企業のサラリーマンと同じ保険制度の適用を受けるようになることを言います。

今までは、公務員等については、独自の共済制度があり、その共済制度により社会保障をされていましたが、平成27年10月1日より厚生年金保険制度に内容を統一されました。被用者年金制度の一元化により、公務員等の社会保障制度が変わるからと言って、公務員ではない人に全く影響がないとは言い切れないところがあります。

今回は「被用者年金制度の一本化」について、なぜ行われたのか?そして、それに伴う影響について詳しくお話します。

被用者年金制度一元化はなぜ行われたのか?

被用者年金制度一元化の主な目的は「年金財源の確保」と「民間と公務員との間の制度的な格差を是正することで、公的年金制度の公平性を保つこと」が目的です。分かりにくいと思うので、もう少し具体的に見ていこうと思います。

【1】年金財源の確保は急務の問題の一つ

現在の年金制度では2分の1を国が負担して、残りの2分の1を保険料で賄う形で年金の財源が賄われています。しかし、高齢化社会が加速している現在においては、年金をもらう人が増えるのに、保険料を支払う人が減少するというアンバランスな状態が起きているため、現状の制度を持続することが難しくなっています。

そこで、公務員等が加入している共済制度に着目しました。もともと、共済制度は厚生年金保険制度に比べると「保険料が安い」という特徴もあったため、民間の制度との間の制度の格差(費用負担の割合の格差)を是正するように長年言われていました。

そういった経緯から、共済制度を厚生年金保険制度に統一させることで、同じ水準の保険料を負担させ、少しでも保険料の収入を増やそうという動きが出始めたのです。

【2】官民格差の是正は昔から言われていた問題

官民格差(公務員等と民間の社会保障制度における格差)の問題は以前から言われていた問題です。
これは、昔から言われ続けていた問題の一つで、同じように働いているにもかかわらず、定年退職後にもらうことができるお金(退職金や年金など)が民間企業と公務員等の間で、大きな差があったことです。

具体的には、人事院調査によると、民間の退職金(退職一時金と企業年金の合計)の平均額が約2,547万円であるのに対し、公務員の場合(退職手当と職域加算の合計)の平均額は約2,950万円と約350万円も差が出ていました。

このため、民間と公務員との格差を是正するために、2013年1月1日から退職する公務員については退職手当が段階的に引き下げられることになりました。

3.被用者年金制度一元化の具体的な内容

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被用者年金制度一元化は、民間と公務員等の共済制度を厚生年金保険の制度を軸に統一させることです。当然ですが、異なる制度を一つに統一するわけですから、制度間の調整を行うことで円滑に統一させる必要があります。

では、具体的にはどのような部分について調整を行っているのでしょうか?

【1】保険料率は段階的に統一されます

保険料率は厚生年金保険と各種共済制度とでは差があります。具体的には厚生年金保険は17.828%、国家公務員共済制度と地方公務員共済制度は17.278%、私立学校教職員共済制度は14.354%となっています。(いずれも平成27年9月から平成28年8月まで)

この保険料率の格差については、段階的に厚生年金保険の保険料率(平成30年9月以降は18.3%で固定されます。)に合わせる形で引き上げることになります。

具体的には国家公務員と地方公務員については「平成30年9月から」、私立学校教職員共済については「平成39年4月から」厚生年金保険と同じ保険料率になります。

【2】年金支給開始年齢も段階的に引き上げが始まっています

厚生年金保険については、すでに支給開始年齢の引き上げが始まっています。具体的に言うと、現在は65歳から支給開始とするために、段階的に支給開始年齢を引き上げています。なお、女性は男性よりも5年遅れで支給開始年齢の引き上げが行われています。

これに対して、各種共済制度は男女とも同じタイミングで支給開始年齢の引き上げが行われます。ですが今回の被用者年金制度一本化によって、支給開始年齢についても65歳からで一律統一された形になります。

一元化における大きな問題「制度間の差異の解消」をどう行うのか?

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一元化を行うということは、それぞれの制度における違いを調整することで差異を解消することでもあります。共済制度で認められていることであっても同様です。厚生年金保険では規定がないものや認められないことも当然にあるわけです。これらの差を解消するための調整にはどのようなものがあるのでしょうか?

【1】被保険者の年齢制限の統一

厚生年金保険の制度では、被保険者になることができるのは、原則として「70歳」までとされています。それに対して共済制度は「制限なし」となっていました。この差はもらえる年金額にも大きく影響する部分でもあるため、共済制度についても「70歳」までとされるようになりました。

【2】在職老齢年金の支給停止開始額の統一

在職老齢年金とは、年金を受給する権利を有している人が労働によって賃金等の収入を得ている場合に、その収入に合わせて年金支給額を一部減額した状態でもらう老齢年金のことを言います。この制度は厚生年金保険の制度にはありますが、国民年金の制度にはありません。

具体的には、「賃金+年金=(1月あたり)28万円超」になると、年金支給額が減額され始めます。「賃金+年金=(1月あたり)47万円超」になると、年金が支給停止されます。

【3】障害年金の受給要件の統一

障害年金を受給するためには、厚生年金保険制度は「障害等級が3級以上」であることなどの要件があるのに対して、共済年金では「要件無し」とされていました。今回の一元化によって共済制度の被保険者についても、厚生年金保険同様の要件に統一することになりました。

【4】未支給年金の受給範囲について

年金の受給権者が死亡した場合にまだ支給されていなかった年金額について受給できる遺族の範囲が共済制度と厚生年金保険制度では、異なるところがありました。具体的には、共済年金制度は遺族の中に「兄弟姉妹や甥姪」が入っていない、厚生年金保険では、兄弟姉妹や甥姪は遺族に入ります。今回の被用者年金の一元化によって、兄弟姉妹や甥姪についても未支給年金を受給できるようになりました。

まとめ

・被用者年金制度の一元化の主な目的は「年金財源の確保」と「官民格差の是正のため」があります。
・被用者年金制度一元化の具体的な内容として「保険料の段階的引き上げ」や「年金支給開始年齢の段階的引き上げ(現状65歳から支給開始)」などがあげられます。
・被用者年金制度の制度間の差を解消するために行われていることとして、「被保険者の年齢制限の設定(現状70歳まで)」「在職老齢年金制度の統一(共済制度の適用者にも在職老齢年金を適用する)」「未支給年金の受給権者の範囲の統一(兄弟姉妹や甥姪なども受給できるようになる。)」などがあります。