転職は住宅ローンに影響を与えるのか?メリットや注意点についても解説

転職は住宅ローンに影響を与えるのか?メリットや注意点についても解説

超低金利が続く日本では住宅ローンを利用してマイホームを取得する人が大勢います。しかし住宅ローンを利用するには、事前に金融機関の「ローン審査」を受けて通過しなくてはなりません。つまり便利な住宅ローンであってもローン審査を通過して、しっかりとした返済をおこなわなくてはマイホームの入手はできません。

「転職直後の人や転職前の人は住宅ローンを借りられるのか? 」と疑問に思っている方は多いのではないでしょうか。

実は住宅ローンの審査は「勤務状況」や「収入」、「他社借入れ残高」を重視しておこなわれます。つまり転職直後や転職前の人は、住宅ローンの審査が厳しくなり、審査に落ちる可能性が高い現実があります。転職直後はいくら収入があっても、金融機関は安定的な収入と見なさないことが多いようです。

この記事では住宅ローンを利用する上で転職がどのような影響を与えるかを「ローン審査」と「返済」に絞って解説します。

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転職直後でも住宅ローンの申込みは可能だが審査に不利になることがある

住宅ローンは借入れ金額が多く、返済期間も長期なことから、さまざまな審査を受けて通過しなくては利用できません。

審査項目は勤務先や勤続年数、収入や年齢、さらに家族構成や健康状態、他社借入れ状況…など多岐に渡りますが、なかでも重要なのが「勤務先」と「勤続年数」、「収入」といわれています。

安定した勤務先や収入がなければ長期のローン返済ができず、将来的に金融破綻を起こす可能性があります。そこで金融機関はまず「この人は長期の住宅ローンを完済できるのか?」を「収入の安定性」で判断します。

そこで金融機関が注目する項目が「勤続年数」です。勤続年数とは勤務先に勤めている継続年数ですが、これが長いほど収入の安定性が高いと評価されて、ローン審査に有利に働きます。

しかし、転職をすると過去の勤続年数はリセットされ、「0年」から再スタートするので審査に悪影響を与える可能性があります。

つまり転職しても住宅ローンの申込みは可能ですが、勤続年数がリセットされることで審査に不利な状況が生まれます。

住宅ローンの審査で不利になる理由

住宅ローン審査では収入の安定性を重点的に確認されることから、転職に対しては厳しいチェックを受けます。

転職直後は正確な年収がわからないことから、収入状況を把握できません。転職により月収が上がったとしてもボーナスなどの「手当て」を含む年収が証明できないからです。また転職先を退職して別の会社に再度転職を繰り返す可能性も不安材料であり、住宅ローンの審査を難しくする要因です。とくに転職により「職種」が変わる場合は今までの経験がなくなることから、再転職のリスクが高いと判断されるかもしれません。

また転職先の会社が新しい会社であった場合は、会社の信頼性も審査の対象です。

転職先のチェックポイント
  • 会社の安定性(倒産リスク)
  • 収入の安定性(収入リスク)

金融機関は勤続年数が長い人の評価が高く、勤続年数が少ない人が低い傾向にあるのは間違いありません。また勤務先は大企業公的機関(役所など)の方が、有利です。

これらのことから転職直後は住宅ローンの審査が厳しくなるので、余裕のある人は2年~3年程度の継続勤務をおこない、実績を積み上げるのも住宅ローンの審査では大切です。

不利を解消するには職務経歴書を提出

一般的に転職は住宅ローンの審査に悪影響を与えますが、「キャリアアップ」が目的の転職であれば審査に影響を及ぼすことはありません。そこで転職が自分にとって有意義であるならば、住宅ローンの申込み時に金融機関に対して十分な説明をおこないます。

金融機関によっては住宅ローン申込み時に、「職務経歴書」の提出を求められることがあります。転職後に作成する職務経歴書の記載ポイントを紹介します。

職務経歴書の記載内容
  • 転職の経緯
  • 転職先の会社の規模、年間売上、業界での位置など
  • 転職後の役職
  • どのような仕事をおこなうのか?
  • 収入の予想額
  • 転職によるキャリアアップポイント

転職することで安定した収入が増加し仕事内容も継続されていれば、転職による弊害はないと判断されます。また中小企業から大手企業への転職であれば、キャリアアップとして審査にプラスに働くこともあります。

転職後に住宅ローンの申込みをおこなう場合は、必ず職務経歴書を作成して金融機関の担当者に丁寧な説明をおこないましょう。ただし転職後の収入などを水増しして記載すると虚偽申告になり、審査に落ちる要因ともなります。金融機関は各業界の平均賃金などの資料をもっていますので、虚偽記載をして発覚した場合は信用を失います。意図せず勘違いで誤った情報を記載しても、虚偽申告になる可能性があります。正確に作成することも忘れないでください。

転職直後でも住宅ローンが利用できるケース

上記したとおり転職直後は住宅ローンの審査は厳しく、不利に働くことが多くなります。しかし「一定の条件下」の転職では審査が不利にならず、転職前と継続した勤務年数で扱われるケースがあります。いわゆるキャリアアップですが、その内容を見てみましょう。

キャリアアップ
  • 過去の経歴が継続する転職(同じ職種)
  • 収入がアップ
  • 大手企業への転職
  • スカウトやヘッドハンティングによる転職

このように転職であっても前職と同じ職種で収入がアップするケースでは、転職ではなくキャリアアップと判断され住宅ローンの審査に悪影響を与えません。また中小企業から上場企業などへの転職も同様に考えられるでしょう。そして金融機関が「キャリアップの転職」と判断した場合は、ローン審査が有利に働く可能性が高くなります。

しかし反対に大企業から個人企業へ転職した場合は、同職種で収入がアップしてもキャリアダウンと判断され、ローン審査が不利になるかもしれません。

転職前に住宅ローンを申込む場合のメリット

転職後は住宅ローンの審査が厳しいことから、「それなら転職前に申込みを…」と考える人も少なくありません。ここでは転職を決めている状態で、事前に住宅ローンを申込む場合のメリットを考えてみます。

メリット
  • 転職前の勤続年数が適用
  • 転職前の収入が適用
  • 転職前の役職が適用

このなかでとくにメリットが高いのが勤続年数です。金融機関は勤続年数が長い人ほど「収入の安定性が高い」と判断する傾向があります。つまり勤続年数20年と3年では信頼性に大きな違いがあり、転職前に審査を受けるだけで大きなメリットが生まれます。

このことから転職にキャリアアップ要素である「大幅な収入アップ」、「転職先が大手企業」など特別な優位性がない場合は、転職前に住宅ローンを申込んだ方が審査は楽になります。

転職前に住宅ローンを申込む際の注意点

長期間働いている会社であれば将来的な勤務形態や収入などを予想することは難しくありません。しかし転職は職場の環境が変わることから、突然のアクシデントに備えなくてはローン返済に影響を与えます。

とくに転職前に住宅ローンの申込みをおこなう場合は、ローン審査にばかり気を取られずに注意点があることも覚えておきましょう。

注意点
  • 融資実行までに転職をおこなうと融資が取り消しになる
  • 収入が減っても返済計画は変わらない
  • 転職先とのトラブルにより離職
  • 退職~入社前は審査が通らない
  • トラブルが起きた際に返済が難しくなる

融資実行までに転職をおこなうと融資が取り消しになる

住宅ローンの審査は一定の審査期間が必要で、その間は申込み時の属性を変化させてはなりません。審査はあくまで申込み時点の属性でおこなうため、原則として融資実行後の転職は制限されません。しかしローン審査は「申込み」から「審査結果」そして「融資実行」まで続きますので、すべてが完了する前に転職をおこなうと審査結果が取り消しになり、再審査が必要になる可能性があります。

つまり実際に購入住宅の代金決済を完了させ、融資の最終実行が完了するまでは転職は難しいと考えた方が無難です。一般的な住宅取得は新築で半年~1年、マンションでも数ヵ月は必要です。急な転職のケースではここまでの時間的余裕がないことも珍しくありません。

とくに転職が決まってから住宅ローンを申込む場合は、時間的な余裕をもっておこなってください。

収入が減っても返済計画は変わらない

転職後に収入が上がれば問題はありませんが、下がってしまうと毎月の返済計画に無理が出る可能性があります。返済計画はあくまで住宅ローンの申込み時点の収入で計算されており、収入が下がってもそのまま返済しなくてはなりません。

また融資から数年程度で返済額の見直しを求めるのも難しく、金融機関に相談しても難色を示すでしょう。転職前に住宅ローンを申込む場合は、転職後の収入を把握した上で無理のない計画を立ててください。

退職~入社前は審査が通らない

退職後~入社前の期間に住宅ローンを申込んだ場合は、審査が厳しくなると考えてください。たとえ既に入社日が決まっているケースでも、実際に入社していないと転職が完了したと判断できません。いくら転職することでメリットが生まれるとしても、実際に入社しないと転職したとは確認できないからです。あくまで無職の扱いなので何らかの理由がない限りローン審査は通らないでしょう。

転職直前に住宅ローンを申込んだ場合は転職後に再度審査を受ける必要があるので、金融機関への届け出を忘れないようにしてください。

トラブルが起きた際に返済が難しくなる

事前に検討しても転職後にはさまざまなトラブルが発生するかもしれません。しかし住宅ローンの返済が始まると滞納することで、「督促」「延滞金」さらに「契約解除」「差し押さえ」などさまざまな問題が発生します。

トラブルは突然やってきます。トラブルが起きても返済に問題が出ないような計画も重要です。そこで転職に関連してとくに注意したいトラブルを2つ紹介します。

転職先とのトラブルにより離職した場合

「話が違う! 」…転職してみたら聞いていた話と職務内容が違うことはよくある話です。また配属先の人間関係が上手に構築できずに退職に追い込まれることもあります。このように転職直後はさまざまなトラブルが発生し、数ヵ月で離職してローン返済に重大な影響を与えてしまうことは珍しくありません。

住宅ローンの返済は長期間ですから、転職前に転職先の職場環境を調べることも大切です。

転職直後に病気(ケガ)が発症した場合

転職後に病気(ケガ)を発症した場合もローン返済に重大な影響を与えます。たとえば長年勤務している会社であれば、「有給」「傷病手当給付(休職)」などにより長期の療養が可能です。会社を休職していても一定の給付金が支給されるので、住宅ローンの返済に与える影響も軽減します。

しかし転職直後に病気が発症した場合は有休も少なく、長期の休職が認められずに退職に追い込まれる場合もあります。住宅ローン審査には健康診断も含まれていますが、それで病気を防ぐことにはなりません。また事故によるケガはいつ発生するかわからないのです。

転職直後の病気やケガは住宅ローンの返済に支障をきたします。転職前に「収入保険」に加入するなどの対策を検討してはいかがでしょうか?

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住宅ローン返済中に転職したら手続きをするべき

先ほども解説したとおり、住宅ローンの審査はあくまで申込み時点の審査なので、融資後の転職を禁止することはありません。しかし転職は住宅ローンの返済に大きな影響を与える事項なので、金融機関と転職先に一定の告知(手続き)が必要です。

告知内容
金融機関
転職先の告知
・会社情報
・業種
・職種
・役職
・収入など
転職先
住宅ローン控除関係書類の提出
・前職の源泉徴収票
・給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
・住宅ローンの残高証明書など

住宅ローンを借入れしている金融機関には転職先の「業種」や実際に担当する「職種」、予想される「収入」などを説明して手続きをおこないます。もし転職後に収入が減る場合は、ここで返済計画の見直しを提案されることがあります。これは金融機関ごとに規定がありますので、返済計画の見直しを希望する場合は、自分から担当者に相談するのもよいでしょう。

また住宅ローン控除を利用している人は、転職先で年末調整をおこなうことから住宅ローン控除関係書類の提出と手続きが必要です。これを忘れると住宅ローン控除が利用できなくなるので覚えておいてください。

転職により返済が厳しくなった場合の対処法

転職により収入がアップする場合には返済が楽になるだけでなく、「繰り上げ返済」も検討できます。しかし収入がダウンすると毎月の返済に支障が出る可能性があります。とくに前の会社が倒産したり、リストラにあったりした場合に、前職よりも条件のよい会社へ転職するのは難しいことです。そこで転職により収入が減った場合に考えたい対処法をいくつか紹介します。

対処法
  • 返済期間を延ばす
  • 金利の引き下げ
  • 繰り上げ返済

返済期間を延ばす

ローンは返済期間が長いほど毎月の返済が少なくなります。一般的な住宅ローンは35年まで利用できることから金融機関に対して、返済期間の延長を求めることで毎月の負担を減らせます。

返済期間延長比較(ボーナス払いはなし)
内容
ローン残高
金利
返済方式
返済年数残
毎月返済額
金利総額
本来のローン計画
2,000万円 1.2% 元利均等 20年 93,774円 約250万円
10年延長 2,000万円 1.2% 元利均等 30年
66,181円 約450万円

これはあくまで一例ですが、ローン残高が2,000万円のケースでは、残りの返済20年返済と30年返済では毎月27,000円程度の違いがあります。返済期間が長くなると金利負担の合計も増加しますが、毎月の生活を圧迫させないためには有効な手段です。

借入れから数年しか経過していない場合は返済期間の延長を認めない金融機関もありますので、まずはローン担当者に相談してみましょう。

金利の引き下げ

住宅ローンの金利を引き下げることで毎月の返済額を減らすことが可能です。ただし現在の日本は超低金利政策をおこなっていることから、比較的新しい住宅ローンは既に低金利なことから効果が出ない可能性もあります。

金利引き下げ比較
内容
ローン残高 金利
返済方式
返済年数残 毎月返済額
金利総額
本来のローン計画 2,000万円 1.2% 元利均等 20年
93,774円 約250万円
金利低下
2,000万円 0.5% 元利均等 20年 87,586円 約102万円

このケースでは1.2%の金利を0.5%に引き下げています。毎月の返済額は6,000円程度しか減りませんが、金利負担の合計は150万円程度も少なくなります。つまり毎月の返済額から元本に占める割合が増えていることがわかります。

金利の引き下げと同様に「ローンの借り換え」も同じ効果が期待できますが、転職から数年は借り換えが難しくなります。金利を下げたい場合は、現在住宅ローンを利用している金融機関に相談してください。

繰り上げ返済

転職により収入が減る場合は先に一定金額を繰り上げ返済することで、毎月の負担を減らす効果があります。繰り上げ返済には返済期間を短くする「期間短縮型」と、毎月の返済額を少なくする「返済額軽減型」があります。転職により収入が減り返済額を軽減したい場合は返済額軽減型を選択すると生活が楽になります。

効果比較
返済方式
期間短縮型
返済額軽減型
毎月の返済
同じ
安くなる
完済までの期間
短くなる
同じ
効果
完済までが早い
金利負担が少ない
毎月の返済額が少なくなる
繰り上げ返済比較
内容
ローン残高
金利
返済方式
返済年数残 毎月返済額 金利合計
本来のローン計画 2,000万円 1.2% 元利均等 20年
93,774円 約250万円
5年後に300万円繰り上げ返済 1,700万円 1.2%

元利均等 15年
76,512円 約220万円

たとえば2,000万円の住宅ローンを金利1.2%、20年の元利均等返済で借入れした場合の返済額は毎月93,774円です。この状態で5年後に300万円を返済額軽減型で繰り上げ返済した場合、残りの返済期間は15年で毎月の返済額は76,512円です。

つまり毎月の返済が76,512円と17,000円程度安くなり、総額の金利負担も約30万円削減できます。転職直後は収入が不安なことで金融資産を手放したくありませんが、毎月の負担を減らす効果が高いので余裕のある人はぜひ検討してください。

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まとめ

転職は住宅ローンにさまざまな影響を与えることを理解されたと思います。審査が厳しくなるだけでなく、返済においても注意したい問題があります。しかし有意義な転職をおこなった場合は、返済が楽になり生活に余裕をもたらすことでしょう。

また転職をきっかけに住宅ローンの金利の見直しや、返済計画を再構築することも重要なポイントです。一度決められた計画を淡々に履行することも大切ですが、返済計画を見直すことで大きなメリットを得られることも覚えておきましょう。

上場企業のサラリーマンから会社経営を経てファイナンシャルプランナー(FP)に。FPとして個人資産の相談業務をおこなう傍ら、金融系ライターとして銀行コラムや各種金融商品などの記事を多数制作。その他にも年に数回、お金の講演会や各種学校にて高校生、PTAに対して公的奨学金についての講演もおこなっている。また投資家としての面もあり過去にはFXで大損した経験も…その記憶を忘れないように現在では固い投資を心がけている。

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