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「チーズケーキ」を追い掛けて50年のマニアが考える、自分にとっての“日本一おいしい味”

「チーズケーキ」を追い掛けて50年のマニアが考える、自分にとっての“日本一おいしい味”

チーズケーキフーディと申します。1970年ごろからチーズケーキの追っかけをして、もう50年近くたちました。最近だと1年に200~250個はチーズケーキを食べていると思います。

出掛けるときは、いつも保冷袋を持ち歩いている私。知らないケーキ屋さんの前を通れば、その店にあるほぼ全種類のチーズケーキを購入してしまいます。1日に3軒も出会ってしまったときには、保冷袋がチーズケーキでいっぱいになってしまうことも……。2時間でカフェを3軒はしごして、チーズケーキセットを店ごとに1つずつ、合計3つ食べたこともあります。

もちろん、コンビニで販売される新製品は毎週ネットでチェックしています。その中にチーズケーキがあればほぼ全て購入しますし、買ったものは写真撮影するだけでなく、重さや大きさの測定、原材料もチェック。1日で食べきるのではなく、数日にわけてどんな味かを検証します。

ある意味、執念のようにも、研究のようにも見えるかと思います。もうすでに、普通の人が食べる一生分のチーズケーキを食べ尽くしたと言っていいでしょう。

そんな私が、チーズケーキにハマった経緯や、日本で独自に進化している“和の味”について紹介しつつ、日々チーズケーキとどのように向き合っているかを、私の価値観に基づいてつづっていきたいと思います。

きっかけは“悔しさ” チーズケーキを通して、世界を見たくなった

今からさかのぼること50年前の、1970年代。当時は携帯電話もインターネットもなかったので、主にテレビやラジオ、新聞、本で情報を得ていました。この頃は冷凍・冷蔵の宅配もなければ、コンビニも身近にはありません。ケーキを食べようとすると、大きな駅の近くにあるチェーン店まで行かなくてはいけませんでした。田舎に住んでいた私にとって、ケーキは「買うもの」ではなく「家で作るもの」だったのです。

『秘密のケーキづくり』
使い込んでいるので、ボロボロです


学生だった私は、お菓子作りを得意とする母が購入した1冊の本『秘密のケーキづくり』(主婦と生活社)と出会いました。そこには、レアチーズケーキやスフレチーズケーキといった、チーズケーキのレシピも掲載されていました。日本ではまだナチュラルチーズが入手しづらい時代だったのですが、その本で紹介されていたレシピは、当時でも手に入れることができたクリームチーズやカッテージチーズで作れるものだったのです。

最初は母がその本を参考にいろいろなお菓子を作ってくれていたのですが、母は仕事に出るようになってお菓子作りの時間が取れなくなったので、次第に自分で作るようになりました。なので、私のチーズケーキ遍歴はこの『秘密のケーキづくり』から始まっています。

それ以来、私は本を参考にしながら、当時入手できる限られた材料でチーズケーキを作っていきました。学校の試験がうまくいったときに作るケーキは、レアチーズケーキ。このこともあって、私にとってチーズケーキは「ハレの日に食べるもの」というイメージがつきました。

『The Book of Cheesecakes』の日本語版


その後、1988年に発売された海外の書籍『The Book of Cheesecakes』の日本語版にも出会います。この本には、約100種類のチーズケーキとレシピが収録されていました。どれもおいしそうだったのですが、中には入手しづらかったナチュラルチーズで作るケーキも含まれていたのです。
海外には、チーズを使ったこんなにもおいしそうなスイーツがある。それなのに、私は作ることも食べることもできない。それが悔しくてたまりませんでした。そして、明治時代の日本人が西洋を知ろうとしたように、いつしかチーズケーキを通して世界を見てみたいと思うようになったのです。

日本と世界におけるチーズケーキの違い

チーズケーキがごく普通に手に入る時代になり、冒頭にも書いた通りとても多くのチーズケーキを食べるようになった私。よく「そんなにたくさんチーズケーキを食べて飽きないの?」と言われるようにもなりました。でも、半世紀食べ続けているからこそ分かったことがあります。奥深いんです、チーズケーキ。

『世界チーズ大図鑑』


チーズケーキをもっと知るために、まず材料に使われているチーズそのものを学ばなければならないと考えた私は、『世界チーズ大図鑑』(柴田書店)を購入しました。25の国と地域にある750種類以上のチーズをピックアップしたカラー図鑑です。

ですが、お店で購入したチーズの情報を調べようとしても、半分以上が本に載っていませんでした。図鑑で網羅できないほど、この世の中にはたくさんのチーズがあるということです。

チーズケーキは文字通りチーズで作るものなので、チーズの種類だけチーズケーキがあって良いと思っています。チーズの配合や生クリームの種類などを変えれば、それだけで数えきれないほどのバリエーションが生まれるでしょう。ジャムやフルーツといったトッピングも変えると……と考えるだけでも、組み合わせの数は膨大です。

最近は、日本でもブリーチーズ(白カビチーズの一種)やブルーチーズ(青カビで熟成させるチーズ)など、くせのあるチーズを使ったチーズケーキが少しずつ登場しています。大阪・大丸梅田店で2018年9月にオープンした「ウメダチーズラボ」のチーズケーキは、ゴルゴンゾーラ、カマンベール、パルメザン、ゴーダ、チェダー、マスカルポーネの6種類が用意されています。目新しさもあって、長蛇の列ができるほど人気のようです。

もともと日本のチーズケーキは、海外に留学したパティシエさんが現地で味わったチーズケーキを再現しようと、材料が十分ではない中、チーズに慣れていない日本人の口にも合うようにアレンジして作られたものです。

スフレチーズケーキ
ベイクドチーズケーキの材料がベース。生クリームを牛乳に変え、湯せん焼きにする


私が本で学んだスフレチーズケーキも、菓子職人・安井寿一氏が1970年開催の大阪万博を前に考案した“日本生まれ”のもの。今では海外でも見掛けますね。

スイーツに「チーズケーキ」という名称がこれだけ多く使われている国は、おそらく日本だけではないかと思っています。イタリアにはリコッタチーズやマスカルポーネチーズを使ったティラミス、ズコット(ドーム型のケーキ)、カンノーロ(シチリアの伝統菓子)などがありますが、おそらくイタリア人はこれらを「チーズケーキ」とは認識していないでしょう。

フランスには、お菓子のようなチーズがたくさんあります。中には真っ黒なチーズケーキ「トゥルトゥーフロマージュ」というものがありますが、現地ではデザートではなく、軽食として食べられているようです。

小豆や酒粕も材料に! 独自の進化を続ける日本のチーズケーキ

このように半世紀もチーズケーキを追い掛けていると、日本のチーズケーキは独自の進化を遂げていると感じます。最近注目しているのは、日本ならではの食材を使った“和のチーズケーキ”。定番の抹茶だけではなく、小豆や酒粕などが使われているのです。日本生まれの少し珍しいチーズケーキの中から、私が実際に食べておいしいと感じたものをご紹介します。

チーズの王様と小豆を組み合わせた「デリチュース ジャポネ」

まずは、小豆を使用したもの。大阪のスイーツ店・デリチュースが販売する「デリチュース ジャポネ」は、北海道・十勝の小豆を使った粒あんがクッキー生地に重ねられています。チーズの王様といわれるフランスの白カビチーズ「ブリー・ド・モー」を使用しており、杏ジャムの酸味と甘さでケーキらしさを味わうことができます。

小豆を使わない本来の“チーズケーキ”である「デリチュース」もおいしかったのですが、「デリチュース ジャポネ」では小豆が加わったことで新しい味のハーモニーを堪能できたので、別のケーキに生まれ変わったと感じました。

海外の観光客にも人気の「豆乳レアチーズケーキ」

京都の京とうふ藤野には、豆乳を使ったレアチーズケーキがあります。国産大豆100%の豆乳を使っていて、底は黒ごま入りのグラハムクラッカーになっています。京都の人気スポット・錦市場にも店舗があり、海外の観光客も並んで購入しているようです。

京都の老舗豆腐店が製造する豆乳がたっぷり使われています。クリームチーズに負けないくらい豆腐の味わいが濃厚です。最近はスイーツもヘルシー志向なので豆腐とクリームチーズの組み合わせはよく見掛けるようになりましたが、こちらのお店はブームの初期から販売していますね。味はプレーンと抹茶が用意されています。底が黒ごま入りのクッキー生地になっているのもポイントです。

桜もちの味わいを堪能できるチーズケーキ「桜」

北海道の桜慈工房は、チーズケーキのフレーバーを10種類用意しています。中でも私のお気に入りは、桜もちの優しい味を表現したという「桜」です。塩味のチーズ生地に、白あん、桜、桜葉が入っています。

口に入れると、桜の風味が広がります。こちらのお店が出しているクリームチーズとよくマッチしています。桜とチーズの組み合わせが難しいのか、他のお店で類似品をほとんど見掛けません。桜慈工房さんならではの一品だと思います。

酒粕を使った「湖のくに生チーズケーキ」

滋賀にお店を構える工房しゅしゅでは、県内6カ所の酒蔵が製造する酒粕を使った「湖のくに生チーズケーキ」を用意しています。

お中元のカタログで見つけて手に入れたこちら、まさに絶品です。個人的には日本酒&レアチーズケーキの味わいが好きでした。大人のためのチーズケーキです。

日本酒を使ったチーズケーキは、日本らしいチーズケーキとして私も特に注目していきたい分野です。日本酒そのものも産地によって異なった個性があるため、それに合うチーズを探すのはとても難しそうですが、探しがいはすごくありそうですね。組み合わせ次第では、お酒は強くないけれどスイーツは大丈夫、という人にも販路を広げられるように思いました。

コスパが良いのは「コンビニ」

このように、日本ではあらゆる種類のチーズケーキが販売されていますが、価格帯もさまざまです。私がこれまでに買ったチーズケーキの中には、ホールで1万を超えるものもありました。ハウス オブ フレーバーズが販売している「チーズケーキ」は、大きいサイズだと15,000円(税込)。さらに、大阪のトルクーヘンには1万4,900円(税込)の「プレミアム・ケーゼ・トルテ」があります。

高価なケーキだけあって、もちろん良い材料が使われていますし、味は保証されているといっても過言ではありません。行列に並んだ時間がさらにチーズケーキをおいしくさせる、ということもあると思うので、どこに価値を見出すかは人それぞれです。

私がチーズケーキに対して大切にしている価値観は、食べたときに率直に「おいしい!」と感じられるものです。評判よりも、自分の好みを大切にします。特に、しっかりとした酸味と、チーズの濃くてくせのある味を楽しめるものが好きです。

いろいろなチーズケーキを見たいと思っているので、あえて定番を外してくる、いわゆる「変わりダネ」も大好物です。チーズケーキに求めるものは、人それぞれということですね。

とはいえチーズケーキは日本にたくさんありますし、何を選べば高い満足度が得られるのかと迷う人も多いと思います。そこで私がおすすめしたいのは、コンビニです。おいしさと価格を考えると、一番コスパが良いのはコンビニスイーツだと思います。

ですが、コンビニスイーツは入れ替わりが早いので、一度無くなってしまえば二度と復活しないチーズケーキもざらにあります。常時店頭に並んでいるチーズケーキというのもほとんどありません。

「いつでも買える」中で私が知っているのは、ローソンストア100の「プチスイーツティラミス」でしょうか。とてもおいしくて108円(税込)なのだから驚きです。口に入れるとマスカルポーネチーズらしい味わいが広がり、高級感に満たされます。コーヒーの染み込んだスポンジ生地も本格的。この値段でこれだけのスイーツを作るなんて、もう感動ものです。

また、コンビニスイーツには、販売終了後に時間をおいて同じような製品が出るケースもあります。私は、実はそういったスイーツこそ「ハズレじゃないチーズケーキ」ではないかと思っています。再び登場するということは、それだけ評価が高く、人気だと言えるからです。

例えば、山崎製パンの「世界のチーズ好きのためのチーズケーキ」シリーズ。スフレチーズケーキの中にチーズクリームとベイクドチーズが入っていて、3つのチーズを楽しめます。まずスフレチーズの生地がおいしい! パン屋さんが製造しているだけあって、生地の作り込みがとっても上手です。生クリームはほんのりとしたチーズ味で、シリーズごとに味わいが少し変わります。

森永製菓の「濃厚チーズスティック」は、まさにチーズケーキをアイスクリームにしたようなスイーツ。底は全粒粉を使ったグラハムクラッカーのようなクッキー生地になっています。お菓子の一線を越えずに甘さを残した、絶妙なチーズアイスです。エダムチーズのちょっとくせのある味わいも楽しめます。

振り返ってみれば、私が思う「おいしいチーズケーキ」は、実はコンビニで購入できることが圧倒的に多いのです。

すぐ傍にある幸せ チーズケーキの世界へようこそ

ベイクドチーズケーキ

私は、全ての人が満足できる「日本一おいしいチーズケーキ」は存在しないと考えています。ですが、自分だけが思う「日本一おいしいチーズケーキ」は、誰にでも存在するのではないでしょうか。

コスパやブランド、味、流行、著名人のお墨付き……何を重視するかによって「おいしい」は変わります。これだけ多くのチーズケーキが存在すれば、自分にとって「これが一番おいしい!」と思えるものを探すのはとても難しいのです。

とはいえ、世界でこれほどケーキ屋さんやコンビニスイーツが充実している国は、日本以外になかなか存在しないと思います。だから、あなたにとっての「日本一おいしいチーズケーキ」もきっと見つかります。見つけるまでの、探す過程がまた楽しいのです。私もそれを楽しんでいるからこそ、こんなに長い間チーズケーキを追い掛けているのかもしれません。

チーズケーキは、一般的に生活必需品ではありません。ですが、私はそんなチーズケーキを自分で選んで買っているだけでなく、ますます進化していく様子をこの目で見られるということに、とても幸せを感じているのです。

この幸せは、製造者や企業、販売者、運送者の苦労のたまものだと思います。消費者の手に届くまでにたくさんの努力を重ねて生み出されたチーズケーキは本当においしくて、そんな現代の日本にいられることがとてもありがたいです。

「一番おいしい!」と思えるチーズケーキは、私にとって、とても身近に存在していました。小さな幸せは、案外すぐ傍にあるものなんだと感じています。

執筆者のプロフィール
チーズケーキフーディ
チーズケーキフーディ

チーズケーキフーディ チーズを使ったお菓子は和菓子だろうとドリンクだろうとほぼチーズケーキだと考えて追っ掛けています。また、テレビで紹介されたお店、行列するお店がおいしいとは限らない、と考える天邪鬼です。かといって、自分の感覚が絶対ともいえない。同じものを数年経って食べると評価が変わることも。だから、カロリーやら原材料やら客観的なことまでつけているという記録のようなブログをかいています。街の(昆虫採集のような)食物採集です。