クレジットカードの歴史を紐解く!語源や最初の発行会社は?

クレジットカードの歴史を紐解く!語源や最初の発行会社は?

現代は非常にキャッシュレス化が進んでおり、いまや現金を持ち歩かなくてもクレジットカードがあれば困ることはかなり少なくなってきました。

そんな便利なクレジットカードですが、いつから世の中に現れて普及していったのか、知っている人は少ないのではないでしょうか。実はクレジットカードの歴史は意外と深く、1900年頃にはすでに原型が存在していました。

当時は今のプラスチック製のカードではなく、紙製のカードであり、使用できるシーンも限定的でしたが、それから現代にいたるまで急速な発達をし、今や日常生活に欠かせないアイテムとなっています。

本記事では、クレジットカードの歴史について、そのルーツや語源、今の形に至るまでの変遷について解説していきます。

クレジットカードの歴史はいつから?

まずはクレジットカードの起源を探っていきましょう。いったいいつからクレジットカードは世の中に登場したのか。歴史を紐解いていくと、それは意外な場所に存在していました。

エドワード・ベラミーの小説にクレジットカードが登場

実際にクレジットカードのルーツといえる、あと払いの機能を持ったカードは1899年に発行されました。しかし実は、もう少し昔の1887年に、なんと小説の中でクレジットカードという名前のカードが存在していたのです。

その小説はアメリカの作家エドワード・ベラミー氏によって書かれた「Looking Backward(邦題:顧みれば)」という未来小説。2000年の世界を舞台にしたストーリーです。この小説の中にはあと払い制でなんでも購入できるカードとしてクレジットカードが存在しています。

小説内では他にもAmazonのようなEコマースサービスやインターネットに似た概念も登場しており、エドワード・ベラミー氏は非常に洞察に富んだ作家であることがわかります。

現実の世界にクレジットカードの機能を持つカードが誕生したのは、小説の発売から12年後の1899年。その後約50年をかけてさまざまな発展を遂げ、今のような形のクレジットカードとなりました。

あと払い、月賦のシステムは江戸時代から存在していた

クレジットカードは所有者の信用を担保としてあと払いや月賦での支払いを可能にするものですが、あと払いや月賦のシステム自体は少なくとも江戸時代から存在していました。

「弥次さん・喜多さん」で有名な十返舎一九の「東海道中膝栗毛」においても、あと払いを描くシーンが存在します。

あと払いの概念はクレジットカード発祥の地であるアメリカ以外でも昔から存在しており、ある意味とてもなじみ深い考え方だったのです。

月賦のルーツは愛媛県今治市

月賦による支払いもあと払いと同じく、江戸時代からその概念が認められています。歴史上では愛媛県今治市にそのルーツがあるといわれています。

今治市の伝統工芸品である桜井漆器。江戸時代から人気の高い漆器で有名でした。この時、今治の商人が桜井漆器の販路を拡大するため「月賦払い」を導入したことが、月賦のルーツであるといわれています。

なんと、今治市には月賦販売発祥記念の碑まであるというので、気になる方は一度訪れてみてはいかがでしょうか。

【19世紀後半~】起源はアメリカ!クレジットカードの誕生

さて、カードを媒体とするクレジットカードの話に戻りましょう。

冒頭で述べたように、クレジットカードという言葉自体は1887年から存在していましたが、カードを媒体とし、今のクレジットカードと似た機能を持つものは1899年に誕生しました。

当時はクレジットカードという名前ではなく、FRANK(フランク)という名前の紙製カードでした。電報などを扱う通信会社が発行したもので、あと払いによる支払いが可能でした。

1910年代:FRANK発行を皮切りに、他のクレジットカードも発行される

最初のクレジットカードともいえるFRANKが発行されて以来、他の会社も似た機能を持つカードを発行します。

1910年代には、石油会社タクシー会社などから紙製のカードが発行され、実際にクレジットカードと呼ばれることもありました。

20世紀後半になると紙製のカードに加えて金属製やセルロイド製のクレジットカードが流通業界を中心に発行されます。その後1950年代になり、現在のようなプラスチック製カードが本格的に普及しました。

【1950年代】世界初のクレジットカード専門会社が登場

現在のクレジットカードとほぼ同じ、プラスチック製のクレジットカードが登場したといっても、まだ当時はVISAやJCBのような国際ブランドは存在していません。個々の流通系企業が発行しているものがあるだけでした。

しかし1950年、ついに世界初のクレジットカード専業会社であるダイナースクラブが誕生します。ダイナースクラブの存在はその後のクレジットカード会社の設立にも影響を与え、今なお多くの人に愛されています。

1950年:ダイナースクラブ設立の秘話とは…?

ダイナースクラブ設立にはとあるエピソードがあります。

ダイナース創始者となるマクナマラ氏はレストランに行った際に財布を忘れ、恥をかくことになってしまいます。

この時の経験から、「現金を持ち歩かなくても簡単に決済ができるシステムがあれば…」という発想に至り、ダイナースクラブ設立に繋がったのです。

今でこそ代表的な国際ブランドのひとつであるダイナースですが、誕生のきっかけはささいな出来事だったのですね。

ダイナースクラブカードが世界初のクレジットカードという説は誤り?

有名な話で、世界初のクレジットカードはダイナースクラブカードであるといわれることがあります。

しかし実際には前述したFRANKなど、ダイナースクラブ設立以前にもクレジットカードにあたるものは存在していました。世界初のクレジットカード専業会社がダイナースクラブであることが混乱を招き、このような間違った説が出回るようになったのでしょう。

実際の世界初のクレジットカードは、1899年のFRANKであるという説が有力です。また、概念の誕生だけを考えた場合は1887年のエドワード・ベラミーの小説が起源ともいえるでしょう。

1958年:ダイナースに遅れてVISAやアメックスも誕生

現在では世界的に有名なVISAやアメックスといった企業も、1950年代にクレジットカード業務を開始します。

まずダイナース誕生から8年後の1958年。当時世界的な金融業者だったアメリカン・エキスプレスがクレジットカード事業に参入。同年にはバンク・オブ・アメリカード(現在のVISA)もクレジットカード業務を開始しました。

1950年代はダイナース、VISA、アメックスといった名だたるクレジットカード会社が誕生し、クレジットカードの歴史を語るうえでは欠かせない時代になったといえるでしょう。

【1960年代】日本初のクレジットカードが誕生

1960年代はアメリカにとって「繁栄の時代」と呼ばれる好景気が訪れました。ジェット旅客機の登場による海外旅行が大衆化し、世界を駆け巡る人々が富裕層も増え始めたのです。

その流れを受け、日本にもクレジットカードが来日します。日本初のクレジットカードは、1961年の日本ダイナースクラブより発行されたダイナースクラブカードでした。

ダイナースクラブは日本におけるクレジットカードの黎明期においても強い影響を残していたのですね。

1961年:JCB誕生は日本ダイナースクラブと同年

現代のクレジットカードの国際ブランドはその多くがアメリカ発祥。しかし、有名な国際ブランドの中で唯一日本発祥のJCBも1961年に誕生しました。

三和銀行と日本信販(現三菱UFJニコス)が日本クレジットビューロー(現JCB)を設立。ここでJCBカードの発行を開始したのです。

このように、日本発祥の国際ブランドのJCBはかなり早い段階から発行を開始しており、日本のクレジットカードの歴史にも大きく関係しているといえます。

プラスチック製のクレジットカードは日本人によって開発されたという説は誤り?

クレジットカードは紙製のカードから始まり、金属製やセルロイド製などさまざまな素材ものが発行されましたが、最終的には現在のプラスチック製の形式に落ち着き、広く普及しています。

このプラスチック製のクレジットカードを開発したのは日本人であるという説をよく耳にしますが、その説はやや怪しいものがあります。

上述した通り、日本でクレジットカードが発行され始めたのは1961年であり、その頃には既にアメリカでプラスチック製のクレジットカードが開発されていました。

十分にクレジットカードが普及していない日本において、日本人がプラスチック製のクレジットカードを開発するということは考えづらく、やや信憑性に欠ける説かもしれません。

1967年:アメリカでMastercardが誕生

1967年、アメリカのクレジットカードを発行していた銀行による「Interbank Card Association」が組織されました。翌年には独立してマスターチャージへと社名を変更。これが現在の人気国際ブランドMastercardです。

VISAやアメックスからは10年遅れの設立となりましたが、もはや世界中で使えるといっても過言ではないクレジットカード。日本でも1969年から発行を開始しています。

【1970年代~】クレジットカードの国際化が始まる

日本でクレジットカードが普及した1970年代以降は、クレジットカードの国際化が進められていきました。すなわち国内でも海外でも使用できるクレジットカードの普及が進みました。

実は1967年の時点で海外で使用できるクレジットカードは存在していました。ただ、日本国内では使用できず、海外での使用に限定。また、使用できる期間も1か月だけと短く、使用用途はやや限られていました。

1978年:国内外共通で使用可能なクレジットカードが登場

その後1970年代に入ると海外専用のクレジットカードは普及してゆき、1978年にはついに日本ダイナースクラブより国内外共通で使用できるクレジットカードが発行されます。

国内外共通で使用できるクレジットカードは、この日本ダイナースクラブより発行されたものが世界初であり、日本ダイナースクラブはクレジットカードの国際化に大きな貢献をしたといえます。

クレジットカードの国際化が進んでゆき、次第に現在のクレジットカードに近づいてゆきました。1970年代になってクレジットカードは一定の完成形にたどり着いたといえるでしょう。

1980年:アメックスより日本初のゴールドカードが誕生

クレジットカードのさまざまな進化が続くなか、1980年にはアメックスが日本初のゴールドカードを発行します。ゴールドカードの発行は、高度経済成長期やバブル期の日本において急速に普及しました。

このゴールドカードをアメックスが初めて発行したことが理由で、アメックスはステータス性の高いクレジットカードだという認識が今でも広まっています。

1987年:デュアルカードも導入される

1987年には日本初のデュアルカードが日本信販(現三菱UFJニコス)より発行されます。デュアルカードは1枚で2種類の国際ブランドを使い分けられるクレジットカードであり、当時はVISAとMastercardのデュアルカードが発行されました。

このように着実に発展してきたクレジットカードですが、時代が進むにつれてさまざまな変化や問題と直面することになります。

1993年:磁気ストライプからICチップへ

現在のクレジットカードはICチップによる情報の管理が主流ですが、以前は磁気ストライプという技術が主として使用されていました。

磁気ストライプとは、磁性体の帯をカードに入れ、帯にある小さな粒子の磁性を変化させることで情報を管理するものです。1960年~1975年にかけてアメリカのIBM社が開発し、クレジットカードへの利用を提案しました。

しかし、磁気ストライプはICチップと違って情報を暗号化することができず、スキミングによる情報漏洩や不正利用に弱かったのです。

そのため1993年、クレジットカード大手のEuropay・MasterCard・Visaの3社はクレジットカードのICチップの共通仕様開発に合意しました。世界標準のICチップの規格はこの時に決定されたのです。

【2000年代~】ICカードの搭載やセキュリティ面での強化が進む

さまざまな発展を遂げ、現代の形となったクレジットカードですが、情報化を遂げる社会の中でさまざまな問題や変化とも直面しています。

特に、情報流出などの問題はクレジットカード黎明期よりも格段に顕在化しており、さまざまな対策が取られました。

最後に、2000年代以降のクレジットカードにまつわるさまざまな変化について解説していきます。

2002年:中国の銀聯(ユニオンぺイ)の誕生

中国の急速な経済成長に伴い2002年に誕生したクレジットカードとして、銀聯カード(ユニオンペイ)があります。

もともと中国には数多くの銀行があり、それぞれ異なるシステムを運用していたため、別の銀行間での決済が非常に面倒という問題がありました。

それを統一する目的で中国人民銀行によって誕生したのが中国銀聯という金融企業。そこから発行されているのが銀聯カードです。

現在中国における普通口座はその多くが銀聯カードと紐づいており、口座を開設すると銀聯カードも同時に発行されることがほとんどです。

銀聯カードは現在そのほとんどがデビットカードこれまで信用状況によりクレジットカードを持てなかった人も、口座を開設することで銀聯デビットカードを持てるようになったのです。

そのような背景もあって、銀聯カードは急速にその発行数を増やしています。現在は日本でも発行されており、ANA銀聯カードや三井住友銀聯カード、MUFG銀聯カードなどがその代表です。

2005年:世界的なクレジットカード情報の流出

スキミングによる情報漏洩・不正利用もかねてより問題になっていましたが、2005年にはデータ管理会社「カードシステムズ」から約4,000万件のカード情報が流出するという事件が起こりました。

VISA、アメックス、Mastercard、ダイナース、JCBとあらゆるカードが不正利用の危機にさらされ、世界的に問題となりました。

クレジットカードのセキュリティも技術の進歩とともに強化されてはいますが、その裏では情報を盗み取る技術も日々進化しています。

不正利用の対策として、毎月の利用明細書の照合を欠かさないことや、万一不正利用にあった際に迅速にカード会社に申し出ることを意識することが大切です。

2007年:サブプライムローン問題の影響

2007年には、アメリカでサブプライムローン問題が発生し、リーマンショックをはじめとする世界的な金融危機が起こりました。クレジットカード業界もその影響を受け、さまざまな問題が発生します。

クレジットカード業界で起きた問題点のほとんどは、金融危機によって資金繰りの悪くなった企業や個人が返済不可能になり、未払い貸し倒れが発生したことです。

この問題を機にクレジットカード会社が取った対応として、金利の引き上げや貸付限度額の引き下げ、新規クレジットカード申込み審査の厳格化などがありました。

クレジットカードの歴史まとめ

クレジットカードの誕生から現代に至るまで、1900年頃から実に120年間の歴史を振り返りました。

最後に、簡単にクレジットカードの歴史をまとめてみましょう。

クレジットカードの歴史
  • 19世紀後半~20世紀前半
     クレジットカードの機能を持つ紙製カードが普及
  • 1950~1960年代
     クレジットカード専業会社の誕生
     現在のようなクレジットカードも登場
     日本でもクレジットカードが普及
  • 1970~20世紀後半
     クレジットカードの国際化が進む
     高ランクのカードの登場
     ICカードの登場
  • 2000年代以降
     中国銀聯カードの台頭
     金融危機や情報流出による問題の発生


今でこそ一般に広く浸透したクレジットカードですが、さまざまな変化を経て今の形にたどり着いたことがわかったのではないでしょうか。

しかし、今後も電子マネーや仮想通貨といった新しい技術がさまざまな影響を与える可能性もあり、クレジットカードもそれに合わせて変化することも十分考えられます。

クレジットカードをはじめとした金融に関するツールは今後も発展を遂げていくものと思われますので、その変化を楽しみつつうまく使いこなしていきましょう。

Web系コンテンツで小説・ライトノベル・漫画原作を連載している作家兼編集者。双葉社より書籍&電子書籍も発売中。金融関係はもちろんのことエンタメ系から商品紹介まで様々なメディアの編集者&ライターを経験。 ゲーム・アイドル・ガジェット・動物・アート・自転車・旅行などが大好き。過去には自転車で日本一周したこともある。 クレジットカードはエポスゴールドカードと楽天カードを保有。楽天マニアのため楽天ペイ・楽天Edy・楽天銀行を使いこなしており、できれば楽天カードと添い遂げたいと願っている。

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